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 混乱は登校時まででどうにか心の外へ押しやって、アリが登校するなり人気のない場所まで引っ張った。屋上へ上がる階段の踊り場に張ってある安いプラスチックのチェーンを越えた、誰の視界にも入らない場所。

「何なにクロエちゃんどうしたの? ねえねえ、ねえってば」

 どう言えばいいのかわからなくて、ちょっと来てしか言わなかったボクに、それでもアリはついて来てくれる。

「アリ」

「はぁい」

「……アリは、好きな人がいる?」

「クロ!」

 そういう意味じゃない癖に‼︎

「やー、お目々が怖いよぉクロエちゃん。

 今はいないって知ってるでしょ?」

「できてない?」

「いつもソッコー言うじゃん」

「……若林くんは?」

「うーん? あれは、お菓子の先輩……あ、まさか、えっ、もう告白されたの⁉︎ えっいつ⁉︎」

「もう⁉︎ 『もう』って何‼︎」

「だってわかりやすかったじゃん、クロは絶対気付いてないと思ったけど」

「ボクはアリのことが好きなんだと思ってた!」

「やー、あれは搦手からめてで親友ごとっていうか、違うよ、私言われたもん、『城島さんてやっぱりかわいいね』って」

「何それ⁉︎」

 叫んだ声が、ぅわんと響いて慌てて口を両手で覆う。重なったから、左手で右手をぎゅっと握って、ゆっくりと深呼吸した。

「知ってたの」

「知ってた、というか、匂わせ?」

「何それ」

「私には態度でわかりやすく示されたよ。

 でも、決定的な言葉は聞いてないし、……あー、いや、それっぽいこと言われたけどそれ本当に極々最近で、まさかそんな急に言うなんて」

「何で教えてくれなかったの」

「だってクロ、信じないでしょ?」

 言葉に詰まる。だって、そんなの。

「告白された今だって、信じられないんでしょ?」

 だって。

 ボクは。

「いいからまず、順序立てて説明してご覧?

 ありさちゃんが全部聞いてあげるからさ」

 よしよしって、頭を撫でられて涙腺が決壊する。

「あーあーあー。取り敢えず一回 ソレ出して、そんで教室戻ろ? スマホでも紙でも、何でもいいから順番通りに書いてってみよ。ね?」

「……っ、うん」

「いいこー!」

 ぎゅうと抱き締めてくれる柔らかさが大好きだ。

 そうだよ、こんなに好きだ。

 ボクは、アリが好きなのに。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「魔法のチョコレイトがどれかは、教えられないんです。ご入用ですか?」

 にっこり。笑みを深める店員さんに、ボクは頷きもせず訊いた。

「だって、効果は〝私を見て〟なんでしょう?」

「ええ、そうです。だからこそ、本当に必要な方は、どうしたって魔法のチョコレイトを手にされますよ。呼ばれますから」

 チョコが〝私を見て〟って、人を呼ぶなんて。

 そんなことある訳ないのに、ボクは、ずっとあの板チョコが気になってしょうがない。

「あれを渡したら、好きな人が振り向いてくれるってことですか」

「……『振り向く』。そうですね、日本語は難しい」

 急に言われて瞠目した。外国の人、……なの、だろうか。言われてみれば、そう見えるかも知れない。

「この場合の〝私〟は、ダブルミーニングなんです」

「ダブルミーニング」

「ええ。食べる方に〝渡した私を見て〟、そうして、その時食べている〝私自身を見て〟」

「私、自身……」

「よく勘違いされるんですがね、これは決して恋を叶える魔法なんかじゃないんですよ。

 場合によっては、すぐさま恋を終わらせる特効薬にもなるんです」

 ヒュ、と喉が鳴った。

「心変わりさせる魔法で、恋を叶えたいですか?」

「いいえ!」

 反射で答えて、ブランが真似して元気に鳴いた。

 店員さんはにっこり笑う。

 喜んでいるのだと思う。何故か確信したけれど、それと同時に「底知れぬ笑み」という言葉が脳裏に浮かんだ。

「……そもそも、恋かどうかも、わからないのに」

「ううん、それは難しい問いですね」

 笑みを崩さず、ポットを振った。ボクが戸惑っているうちに、ジャババッとカップにお茶が満ちた。

 ふわんと湯気が顔に当たって、視界が白く染まる。

「恋か友情か、判断が付きませんか」

「……はい」

「お相手は?」

「友達だと思ってくれてます。だからこそ、判断を先延ばしにもしてます」

「ははぁ、それはもうほとんど心の中で決まっているのでは?」

「いえ、……本当に、わからないんです。

 だって、恋なんてしたことない。

 ただ、初めて、こんなに特別で大切な友達ができたから」

「ふむ……本当に、日本語は難しいですね」

「えっ」

「例えば英語なら、それはラヴの一言で済むのです。恋も愛も違いがなくて、ただ大好きの気持ちがあればいい。

 古代ギリシャに当て嵌めれば、愛の向かう先で決まってしまう。男女間ならエロス、友人に向かう愛ならフィリア。

 けれど日本には、大好きを表す愛の形がたくさんありますね。

 恋愛、友愛、情愛、慈愛、博愛、……キリがないので割愛しましょう」

 店員さんが茶目っ気たっぷりに笑ったので、ボクも少し笑う。

「やはり僕は、お買い上げ頂いた方がいいと思いますよ」

「魔法のチョコレイト、ですか?」

「ええ」

「でも、渡しても、効果はないでしょう?

 あの子はボクを、友達としてしか見ていない。

 そんなの、魔法で確かめるまでもない」

「貴女の気持ちに気付いてくださるかも」

「そんなの!」

 わん! さっきより声が小さくなったので、ブランを脚の間に挟んだ。両の踵にパタパタと尻尾が当たる。

 笑ったままの店員さんは、首を傾げた。

「おや。ご入用なのでは?」

「だって。その魔法は、特別ボクを素敵に演出してくれる訳ではないんでしょう」

 にんまり。店員さんの笑みが、満足そうに変わる。

「ええ、ええ、そうです。

 けれども僕は、だからこそ、貴女に必要な魔法だと考えますよ」

「は……」

「何よりも、貴女自身に、必要なのでは?」

「……」

 ボク自身。

 ボク自身が、自分をかえりみて、そうしたら、この答えは見つかるだろうか。

「この気持ちが、恋愛感情なのか。

 魔法で、確かめろってことですか」

 店員さんは、底知れない笑みを浮かべたままだ。

 ホワイトの板チョコは、昨日と変わらない枚数がカゴに入っているけれど、手前と奥の順番が変わっていた。

 気になるチョコレイトは、昨日は一番奥にあったのに。

「……板チョコ、おいくらですか」

 財布を開いて、板チョコのカゴに手を伸ばした。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「それで、整理できたかなー?」

 昼休み。いつもの場所でお弁当を広げながらアリは言った。

 授業の合間だって会話はしたけれど、この一件に関してはお互い触れなかった。

「整理も何も、ないんだよ。

 今朝、言われてビックリしたってだけで」

「今朝⁉︎ ええ、いや、そっか、確かに昨日、朝は必ず散歩してるって話したけど、待ち伏せか何かしてたの?」

「ううん。妹さんと一緒だった」

 朝の流れを話すと、アリは「はー……」と呆けた様子で頷いた。

「うっかり言っちゃった感じだったのね」

「あっそこまでバラしてるの」

「「うわぁあっ⁉︎」」

「おお、揃うね」

 唐突に、窓の上から噂の人物が現れた。

「何、何でいるの⁉︎ えっち!」

「いや、そんなの白井さんに言われても。

 ここ図書室だよ? 今週いっぱい図書委員だから昼休みもいるって」

 若林くんは苦笑しながら、ステンレスタンブラーを一つアリとボクの間に置いた。……背が高いと腕も長いな。

「まあ、ここ先生が荷物置きにしてる場所だし、基本的に人いないから内緒話しててもいいけど。僕もカウンター戻るし。

 城島さんに、これ届けに来ただけだから。

 よかったら飲んで」

「えー、クロだけー?」

 アリが言ってもそちらを見ずに、「もちろん」

にっこり微笑まれて、鼻白む。

「城島さんが、白井さんと一緒に飲みたいならそうしてもいいし」

「うわー。ちょっと若林くん、キャラ変わりすぎじゃない?」

「そんなことないでしょ。僕は変わってないよ。

 眺めてるだけじゃいられないって気付いて、動くって決めただけ」

 今度はちゃんとアリに向き直って、眼鏡を上げつつ何故か挑戦的に口角を上げる。

「今まで静観してくれてたこと感謝してるけど、僕の最大のライバルは白井さんだからね」

 断言してから、こちらにもう一度振り返る。

「今朝のは、事故みたいなものだから。

 でも、忘れないで」

「ひっ」

「はは、何それかわいい」

 彼は笑って窓を閉め、カーテンも閉めた。足音が遠ざかる。

「「…………はぁー」」

 ふたりしてしばらく息を詰めて、それからゆっくり吐き出した。

「いや、すごいのに好かれたねクロエちゃん」

「やめてよ……」

 ぐったり壁に背をもたれて言うと、「よしよーし」と腕が伸びてきた。肩が揺れて、ボクの手首がコツンとタンブラーに当たる。

「それどうするの?」

 そっと蓋を開けると、華やかな柑橘系の香りが鼻をくすぐる。

「……。アリ」

「っふふ、ヘイカップ!

 渋い顔してるねクロぉー」

 アリが差し出したコップに、トポトポと紅茶を注ぐ。白い湯気がアリを隠した。

「……美味しい」

「ふふふ、うん、美味しいねぇ」

 アリに言われて、口をつぐむ。

 渋みが少ないけど、物足りなくない。さっぱりしていて、甘くない香り。

「クロの好きな味だぁ」

「……教えたの?」

「あー……あのね、こう訊かれたの。

 『白井さんが城島さんに作ってあげたいお菓子ってどんなの?』って」

「何それ」

「うん。……ふふ、いやー、私も『何それズルい』って言ったよぉ。教えたけど」

 アリの瞳が、柔らかく細まる。

 キュゥ、と、ボクの胸が締まる。

「いい男じゃんね、若林くん」

 苦しい。

「一番大事なのはクロの気持ちだけどさ」

 嫌だ。

「邪険にするには、理由が足りないんだよね」

 ボクだけ見ててよ。

 ボクは、アリだけ見ていたいのに。

 ボクと他の人を一緒に見るのは嫌だよ、アリ!


 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「おや、ホワイトの板チョコをお二つですか?」

「はい。ひとつはラッピングで」

「腕によりを掛けて可愛くしましょう。

 それで、どちらを?」

 ボクが指差したのは、

 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 部活終わり、ステンレスタンブラーにほんの少し残っていたお茶はどこか濁って見えた。

 ぐいっと煽れば、苦い苦い液体が、食道を冷たく辿りながら胃の中へと落ちていく。

 顔を洗った水道でタンブラーをすすぎ、汗拭きタオルとも手拭き用ハンカチとも違うタオルハンカチを出して、それを拭く。

 ーーあの日から毎日、タンブラーを渡されるようになった。

 アリがお菓子を作る日は、デザートに合うように飲み物を用意しているらしい。

 仲良くなっているのが、とても、納得いかない。気に食わない、と言った方が正確かも知れない。

 アリはボクの親友なのに。

 ボクのことが好きだと言うなら、アリに連絡を取らなくたっていいだろうに。

 そう思ってるのがわかったのだろう、アリはボクを見て、柔らかく瞳を細めた。(これはアリが可愛いものを見る時の目だと知っている。けれど、これはボクだけに向けられているのではない。ボクと、同時に彼へも向かっているのだ。)

「クロに、美味しいって思って欲しいから相談してるんだよ。私も、若林くんも、おんなじ気持ちだよ」

 それが一層嫌だとは、悟られるわけにいかなかった。

 ーー思い出して眉間に皺が寄ったのを自覚して、汗拭きタオルで乱暴にゴシゴシと顔を拭った。

 シートで身体を拭きながら着替え、リュックを背負いコートを丸める。タンブラーはコートの中に隠して、挨拶しながら図書室へ向かう。

 図書室の中は、いつもより少しだけ人が多かった。それも、女子が。

「えー、アヤシイよぉ」

「いやいや、違うんだなーっこれが」

「でもあんなに仲良さそうにずっと話してたし」

「そりゃお互い好きなことの話だから、あ。クローっ」

 二人の女子に囲まれたアリが、片手をあげてぶんぶか振った。そこに向かってまっすぐ進む。

「今日はキャレルじゃないんだね?」

「うん、若林くんとちょっと話してたから」

 その言葉に、女子達が浮つく。何。面倒臭いな。

「お菓子作りの話?」

「うん、スポンジには種類があるんだけど、それぞれの違いとか、アレンジどうしてるかとか。

 今年のバレンタインも期待しててね、クロ」

「うん、もちろん。ホワイトデー期待してて」

「わーい! あ、ちゃんと若林くんと被らないようにしたからね!」

「えっ」

 毎年、絶対ボクにも、他の友達にも、何を作るか教えないアリが。

「若林くんに、何作るか教えたの……?」

 ボクが訊くと、アリは笑ってパタパタ手を振った。

「いやーだって同じの作れないでしょ比べられたら負けちゃうじゃん」

「なになに、お互いバレンタインに作って交換?」

 あ、まだいた。

 うちのクラスの子と、よそのクラスの同学年の子だ。どちらも名札がコートで隠れてるから名前はわからない。

 お互いって、誰のこと?

「ボクはお菓子作らないけど」

 言ったら、よそのクラスの子が吹き出した。……あ、アリ怒ったな。

「何かねー、私と若林くんができてるんじゃないかとか言うのよ失礼しちゃうよねー」

「いやだってあんなに仲良く話してたじゃんっ」

「だーから友達だってば。男女の友情否定派かー?」

 アリ笑ってるけど、だいぶキてるなぁ。

「ごめんねありさちゃん」

「アリはお菓子作りが得意だから、若林くんとお菓子の話してただけでしょ?」

 クラスの子は悪いことしてなさそうなのに謝ってくれたから、ボクもフォローしてみる。

 けど、「ちょっとお菓子が得意だからって」と聞えてアリが顎を上げた。あーあ。

「若林くんバレンタインは手作りお菓子あげる側だよ、しかも本命に。腕前はプロだから」

「は? 何で知って」

 う。その話題はちょっと。

「そう言えばアリ、その若林くんは?」

「ん、お姉さんからヘルプ要請来たんだって。あれクロに連絡いってない?」

 言われてスマホを見れば、確かにメッセージが届いていた。待てなくてごめんという謝罪と。

「下駄箱どこ……」

「あ、タンブラー? おうちに返しに行っちゃえばー?」

 何でいつも以上にニヤニヤしてるの。

「図書室閉めまーーーす!」

 今週の図書委員がカウンターから叫んで、他クラスの子が慌てて貸出し手続きに走る。持っている本は、大きな字で「初心者さんも安心!」の文字が踊るチョコ菓子のレシピ本だった。

「ごめんね二人とも。本当はあの子、ありさちゃんにお菓子作りのこと訊きたかったんだ。私がありさちゃんお菓子作り得意で、いつも図書室にいるよって教えちゃったから」

「……教えを請う態度じゃなかったと思うけど」

「しょうがないよクロ、多分あの子若林くんのこと好きなんでしょ。好きな相手と仲良くしてる女子がいたら敵愾心も湧くよねー気分は悪いけど」

「えっ何それ」

 若林くんのせいでアリが絡まれたってこと?

「わかっちゃうよねぇ。ごめんね」

「ヨーちゃん謝んなくていいよぉ。

 あ、貸出し終わったみたいよ。また来週ね」

「うんっ、あの、私も日曜日お菓子作るつもりなんだけど、わかんないとこあったら訊いてもいい?」

「しょーがないなぁ。聞いたげよう」

 ヨーちゃんは出口で待ってる子を振り返りながら

言ったから、あの子と一緒に作る気なのかも知れない。やっぱりボクの親友は優しくていい子だなぁ。

 アリはいつもよりゆっくりコートを着て、ゆっくりリュックを背負う。図書室から出る頃には、さっきの二人の姿はなかった。

「アリはえらいね」

「クロぉ〜〜〜」

 抱きついてきたので受け止めて、頭を撫でる。

 今日もツインテールなので撫でやすい。

「で、クロエちゃんどうするの?」

「何が?」

「何って、……バレンタイン、告白されるでしょ」

「え」

「あーーーだよねぇ気付いてないよねぇ知ってたぁ。でも告白はされるだろうから心構えはしとこうねぇ」

 今度はボクが頭を撫でられる。

「あのね、何ヶ月か見てたけどさ。若林くん、結構いいと思うよ」

 サクッと胸に氷柱つららが刺さったようだ。

「あー、困らせたい訳じゃないのよ。でもね」

 アリはボクの手を引いて、玄関の方へ向かう。

「クロはさ、私が好きな人いる時は応援してくれるじゃん。可愛いから大丈夫だよって、言ってくれるでしょ。カレシできても、変わらず仲良しでいてくれるじゃん」

 その度、ボクは寂しくて辛いけど。

 アリに嫌われたくないし、アリに笑っていて欲しいから、強がってるだけのこと。

「私もさぁ。クロが大好きで、可愛くてしょうがなくて、だから中途半端なヤツならさっさと蹴散らしてたんだけど」

 振り返って、首を傾げる。その微笑みがどうしようもなく綺麗で、ボクは息を飲んだ。

「ちゃんと、大事にしてくれると思うよ。

 だからお試しとかでも良いと思うんだ。

 私、クロには幸せになって欲しいからさぁ」

 息がつけない。

 どうしようもなく苦しい。

 そんなに綺麗なかおで、ボクの〝幸せ〟を、願ってくれるの。

 嬉しい。嬉しいけど、しんどいよぉ。

「それとね。若林くんとも仲良くなっちゃったからさあ。もちろんクロの気持ちの方がもっと大事だけど、若林くんを応援したい気持ちも出てきちゃってるんだよね」

 ああーー。

 ボクの親友はとてもいい子だ。

 かわいくて、オシャレで、特技を磨くことに余念がなくて、とても優しい、本当によくできた子だと思う。

 それを残酷だと思うボクには、もったいないくらいに。


 帰りしな、若林くんにタンブラーを持って帰ってしまったことと、届けた方がいいか伺うメッセージを送る。……返信は来ない。お店が忙しいのだろうか。だったら、行くのはお邪魔だろう。ちょっとホッとした。

 少ししてから、スマホが着信を知らせる。

 若林くんからだった。

『週明けに回収するつもりだったから大丈夫。あと、今来てもらっちゃうと姉が面倒臭い』

 もう一度、スマホが震える。

『もし日曜の夜に散歩するなら、僕も公園に行く』

 買い出しだろうか。了承と時刻の目安を送った。

 夜にはいつも通りアリとメッセージのやりとりをする。放課後のことをまだちょっと引きずっているけれど。ボクは、アリの親友だから。

 アリと関わっている時間が、ボクの一番の幸せだから。

 だから、タンブラーのことを訊かれても、返しに行かなくても大丈夫だったよと話をすぐに終わらせた。

 この土日はアリが忙しくてあんまりメッセージのやり取りができなさそうで、それが残念だった。

 そうして、日曜夜。

 ご飯を終えて、食休みをして、ブランに声をかける。いつもの散歩セットの他にボディバッグを引っ掛けて家を出た。

 公園に着くと、例のお店に何人もの人が集まっていた。明日がバレンタインなんだと、改めて思う。

 ……ボクは、アリからだけもらえればいいんだけどな。

 もちろんクラスの女子が配る義理チョコをもらうこともあるし、それが煩わしい訳ではない。

 でも、告白とかは、ちょっと。

 若林くんはまだ来ていないようなので、『走ってるね』とだけ送って散歩セットとボディバッグを木の影に隠す。街灯がすぐ横にあって影が濃いのだ。

「行くよ、ブラン」

 橋の横から、まずは慣らし。公園の角まで来れば、ブランも慣れたもので走り過ぎずにスピードを緩める。もう一回、さっきよりも少しだけ早くして橋まで戻って。

 ブランが疲れきる前に、若林くんはこの前の場所にいた。

「お疲れ」

「若林くんこそお疲れ様。お店手伝ってたんでしょ」

「うん。遅れてごめんね。ブラン預かろうか」

「大丈夫。まだ走れるから。ね」

 ブランの頭を撫でると、元気に返事をしてくれる。

「じゃあ、終わるまで待ってるよ」

「うん」

 ただ、人懐っこいブランのことなので、途中で気が変わることもある。

 兄と散歩する時のようにリードは離して走った。

 合計で六セット走る頃には、ブランは若林くんの足元でお腹を出して撫でてもらっていた。

「七秒一。やっぱり早いな」

「陸上部だからね」

 隠していた散歩セットから、新品の折りたたみシリコンボウルを取り出して持ってきた水を入れる。

 ブランに飲ませてから、ボディバッグを開けた。

「わざわざ取りに来てくれてありがとう」

 渡すと、少し驚いた顔をしてから楽しそうに笑った。いい笑顔だなと思う。アリの言葉を思い出して、ちょっとだけ気が重くなるけど。

「どういたしまして。僕が会いたくて来てるし、むしろ会ってくれてありがとう。

 ……ちょっと期待してたんだけど、やっぱりバレンタインは義理でも貰えないのかな」

 今度はこちらが驚いて目を瞬いた。

 そうか、相手がアリだったら、タンブラーにお菓子を入れて返したかもしれない。というか、いつももらってばかりなのだからお礼はした方がよかっただろう。

 でも。

「バレンタインは明日だし、自分で美味しいの作るでしょ? それでも欲しいもの?」

「それとこれとは別だよ。

 ……あー、いやまあ、無理して用意するものでもないけど。毎年バレンタイン配らない人だっけ?」

「ボクはホワイトデー担当」

「なるほど」

 じゃあそれに期待しようかなと、どうして笑って言えるんだろう。

「明日はきっと都合が悪いだろうから、今渡させて」

 帆布のトートバッグから取り出された、掌サイズのラッピング。小さな白い箱にリボンがかかっている。

「合わせた茶葉もティーバッグにして入れてあるから、熱湯とマグカップがあるところでどうぞ」

「……でも」

 差し出されて、戸惑う。

「受け取ってよ。

 城島さんが、白井さんのこと好きなのは知ってるからさ」

「え」

 呆然と見上げると、手の中に小箱が押し込められた。慌てて落とさないように持つ。

「前に言ったでしょ、ライバルだって。

 わかってるよ。ずっと見てたから、知ってるんだ。

 城島さんが、白井さんにだけ笑顔を向けるって」

 ……そうだろうか。そうかもしれない。

「で。まあ、城島さんは彼女のことが一番大事なんだなって思ってたけど、ちょっとでも近づけないかなって思って白井さんと話したりした。多分、直接城島さんに向かうより早いと思って」

「……うん」

 確かに、図書委員の男子としてしか認識していなかった。ボクに何か言われたとしても、アリ目当てだと思ってバッサリ切り捨てていたと思う。

「でも白井さんもガード固かったから、攻めあぐねてはいたんだよね。そんな時に、うちでさ」

 眼鏡を覆うように、手を添えた。

「……いつも、窓際のキャレルに座った白井さんに顔が向いてたから、城島さんの笑顔って横顔とかしか見れなくて。でも、あの日、店のカウンターから城島さんの笑顔、ほぼ真正面から見れてさ。

 もう、ダメだった。

 包装資材運び込んでるところだったんだけど、落として姉にやたら笑われるし。でももうそんなことどうでもいいくらい、城島さんの笑顔がかわいくて」

 手がずれて、目が見えた。にへっと、初めてみる表情で、彼は笑っていた。

「どうしても、あの笑顔が欲しいと思った。

 どうにかして、もっと近くで見たいって思って、もうなりふり構えなくなってさ」

 ……。その、顔も。今の彼の顔も、多分、いい笑顔と呼ばれるものだと思うけど。

「それで席まで行ったら、僕のこと可愛いとか言いながら笑うじゃん。もう落ちたって思ってたのに、更に突き落とされたよね」

 笑顔は僕に向かってなかったけどさぁ。

 ひとりごちて、浮かべている苦笑は、どこか楽しそうだった。

「だからさ。僕やっぱり、城島さんのことが好きだよ。邪魔にならないようにするから、今みたいに、ちょっと話せる関係でいて」

 へ。ちゃんとした声にもならず、息が漏れた。

 きっとボクは間抜けな顔で見上げていると思う。

「はは、かーわいい」

「っ⁉︎」

 ナニコレ。いや。待って。何これ。

 いつかの朝の混乱の比じゃない。

「もちろん、好きになってくれるのも大歓迎だけど」

「何言ってるの⁉︎」

 半ば叫ぶように言って、持って来ていたスポーツドリンクをガブ飲みする。

 特別冷やす工夫はしていなかったけれど、冬の夜気にキンと冷えた水分が喉を通っていく。

 それを心地よく感じて、走り終わってもう経つのに、顔が熱い可能性に気がついた。

 嘘だ。ボクが一番大切なのはアリで、それは絶対変わらないはず。

 ちょっと恥ずかしいだけだ。

 だって、生まれて初めての告白を真正面から受けて、それで平常心の方がおかしいはずだ。

 そうだよって、自分でちゃんと納得したくて、ボディバッグを弄る。

「……何? 板チョコ?

 ああ、あそこの?」

「そう。魔法のチョコレイト」

 ボクが頷くと、彼はちょっと驚いた顔をした。でも、笑うことはない。アリみたいに可愛いとも、他の誰かみたいにおかしいとも、言わない。

 アルミの外側に巻かれた紙にはホワイトチョコレートのレタリング。板チョコとミルクやバニラビーンズのイラストが描かれているけれど、これはどうやら色鉛筆での手描きらしい。破くのは忍びなくてそっと剥がし、アルミ越しにパキリと割った。

 横一列に、更にもう一列。残りの半分はバッグにしまって。

 端の一列をアルミごと差し出すと、彼は戸惑いながらも受け取ってくれた。

「これが、魔法のチョコだって?」

「そう。効果の〝私を見て〟は、贈った〝私〟のことと、食べてる〝私〟のことだって」

「え?」

「だからね」

 パキッ。小気味よい音を立てて、ほんの一欠片が口内に転がる。

「ボクは、ボクを省みるために食べるんだ」

 寒い中で食べているのに、口溶けが良かった。

 ゆるりと溶けて、まろやかな甘味が広がる。

 鼻にふんわり抜ける香りは、バニラだけではない。

 甘やかだけれど、優しい香りだった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「ご自身で召し上がるんですね」

「はい」

 店員さんの微笑みは、どこか満足そうだ。

「食べて頂いても、解決しないかもしれません」

 もとより、ボクとアリの二人の関係性が問題の主軸なのだから、これで一件落着になるとは思っていない。

「けれど、今抱えていらっしゃる問題の、根っこは見えるかもしれません」

「なるほど」

 店員さんは、ラッピングする手を止めずに続けている。

「どなたか、相談できる方がいるといいですね。

 ご家族でも、先生でも、赤の他人でも」

「まさか。話せませんよ。大人にこんな話をしたって、微笑ましそうに見られるだけです」

 母親の「仲がいいわね」という視線を思い出しながら言った。こどもね、と可愛がられている目だった。

 店員さんはわかってて言っているのだろう。微笑んで、最後にリボンをキュッと結んだ。

「こちらでよろしいですか?」

「はい」

「ご利用誠にありがとうございます。

 どうか、お客様のお力になれますように」

 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 いただきます、と小さな声が聞えた。

 しばらく手の中のチョコを眺めていたけれど、ようやく食べる気になったらしい。

「ああ。……やっぱ美味しいな。悔しい」

 彼は笑う。それは本音なのだと思う。

 好ましい人柄だと、アリに言われたからでなくても思える人だ。

 パキ。またほんの少し口に入れた。

 いやに甘ったるいこともなく、食べやすい味だと思う。

「ボクは」

「うん」

 聞いてもらえているのが、妙にくすぐったく感じた。

「アリが、好きだ」

「ふはっ、知ってる」

 ちょっと笑って、肯定してくれた。

「一番かわいい女の子。大好きな親友。特別な存在」

「……うん」

 頷きながら、彼は魔法のチョコレイトを口に入れた。

「ボクは、あの子だけいればいい。

 アリだけいれば、他はいらなくて、だから、友達も作らなかった」

 四月。出席番号順に座った教室で、誰とも喋らずにいたボクに微笑んでくれた。天使みたいにかわいかった。

「ボクは。アリ以外の友達がいない。

 だから、この気持ちが、友愛なのか、恋愛なのか、判断が付かない」

「……そう」

「アリに言うんだ。『キミが好きだよ』って。喜んでくれる。『クロが好きだよ』って言ってくれる。

 でも、アリは男子を好きになるし、他にも友達がたくさんいる。一番はボクだけど」

 若林くんは笑って頷いた。

 彼が最後の欠片を口に入れるのと同時に、ボクも齧っていた。

「ボクは、アリ以外をこんなに好きだって思ったことがない。

 友達がいない。

 この気持ちを、比較する対象がない」

「そっか」

「でも」

 今度は、溝の通りにパキッと割って、口に入れた。甘いのに、スッキリした後味で、美味しいなと思う。

「でも?」

「誰よりもボクのことを見てくれているアリが、ボクの気持ちを友情だと信じて疑わない。

 ボクはボクの気持ちがわからない。

 たくさんの気持ちを知っている、アリが、そうだと思っているなら、」そうなのかも。とは、自分では言えなかった。

 鼻がツンとした。

 冷えているからだろうに、目の周りがとんでもなく熱く感じる。

「アリに好きな人ができると、どうしようもなく苦しい。彼氏とデートだからって遊べないのは寂しい。嫌われたくなくて『いいよ』って言ってあげるのが、嘘をついてるようで、……」しんどい。

 口の周りがこわばって、喉に息が引っかかって、うまく声にならなかった。

 視界がぐにゃぐにゃ揺れて、瞬きをしたら、ぼろっと大きな水滴が頬に流れた。

 彼は足元の砂を鳴らして、でも歩き出すこともなく、さっきまでと同じ距離のままハンカチを差し出してくれた。腕が長い。きっと見えてないのにと思ったけれど、足の間に影じゃない黒い点がいくつもできて、そりゃバレるよねと妙に冷静な自分が溜息を吐く。

「ありがと」

「こちらこそ」

 瞬きをして見上げたら、またホロホロと涙が落ちた。若林くんは苦笑して、一歩だけ距離を縮めて、頬にハンカチを押し当ててくる。一歩が、ボクの比ではないけれど。

「チョコも、話も。

 魔法はよくわかんないな。

 城島さんがかわいくて仕方なくて、やっぱ好きだなとは思うけど」

 どう反応したらいいんだろうか。

「城島さんさ。僕のこと嫌いじゃないでしょ?」

 嫌いだったらこんな話してない。

「嫌いになれたら楽だった。

 ……でも、好ましい人だって思った」

「やった」

 ハンカチは反対側の頬にうつる。妙に手慣れているのは、妹さんの涙を拭いていたからだろうか。

 こういうところが、いい人そうで、ずるいんだよなぁ。

「じゃあさ。友達になろ」

「……はぇ?」

「ぶっ」

 彼が急な動きで、自分の左肘に口元を埋めた。震えている。笑っているのがバレバレだ。

 面白くなくて、唇を引き結ぶ。

「ごめ、いや、ごめん。本当ごめん。

 ちょっとあまりにもかわいすぎて無理だった。

 まあ、なかなかないシチュエーションだとは思うんだけど、涙目で上目遣いは凶器だから、他の男にはやらないでねマジでね」

「……何?」

「いい。僕が守る。多分白井さんも守ってくれるだろ」

「何なの」

「そのままの君でいて」

「何なの?」

 何だか癪で、ハンカチを奪って顔面をゴシゴシ拭いた。

「あーーー、赤くなるよ」

「知らない」

 帰ってすぐお風呂に入るしどうだっていい。

「あのね、城島さん。や、うーん、……クロエちゃん」

 びっくりして、ハンカチを落とした。

 彼は笑ってそれを拾う。

 ぐっと頭の距離が近くなって、ふわりと甘い香りがした。小麦粉とバターと砂糖の匂い。

 まだ笑っている。なんでだろう。

「友達になってよ。

 そんで、比べたらいい。

 僕への気持ちと、白井さんへの気持ち」

 どうしてそんなに、晴れ晴れとした笑顔でいられるの。

「白井さんのことが大好きで苦しい時は、僕が話聞くよ」

「どうして?」

「どうして? それをクロエちゃんが訊くの?」

 意味がわからなくて目を瞬く。

 涙はもう枯れていた。というか、また呼んだ。

「一番近くで、いろんな話聞けるのが、友達の特権なんでしょ?」

「ああ……」

 ボクが、アリの近くにいたいように。

 彼も、ボクの近くにいたいって、思うのか。

「それは、」

「ダメ?」

「や、……何か、利用しているようで、ダメな気が」

 やんわり断ろうとしているのに、彼は笑う。楽しそう。何で。

「じゃあさ、一個だけお願いきいて。

 そしたらそれで、悪くないってことで」

「……お願いって?」

「下の名前で呼んで。

 他人行儀な、他のみんなと同じ苗字呼びじゃなくて、下の名前で」

「下の……。えっと、ごめん」

「すばる」

 嫌な顔ひとつせず、そう言った。

「若林昴。だから、昴って呼んで」

「……すばる、くん」

「っし、交渉成立ね」

「えっ? あっ、ええっ⁉︎」

「さて、送ってこうか」

「いらないっ」

 慌てて荷物をまとめて、ブランのリードを軽く引く。

「っはは。気を付けて」

 また明日とおざなりに言って走り出す。公園を突っ切る時にバレンタインズ・ショップの店員さんが恭しくお辞儀をしてくれたのが見えて会釈した。公園を出て曲がる時に若林くんがまだこちらを見ているのに気がついて、速度を上げる。

 帰宅後、浴室にスマホを持って飛び込んだ。

 アリに報告しようとして、何をどう打ち込んだらいいかわからなくなって空白のメッセージ欄を睨みつける。睨んで、睨んで、茹だりそうになって、湯当たり寸前で自室に引き上げた。

 椅子に放ったままだったバッグの中からもらったチョコを取り出す。

 食べかけの板チョコと、もらった小箱。

 リボンはボクの好きな紺色。

 シュルッとほどいて、そっと蓋を開ける。

 二種類のクッキーが綺麗に収まっていた。ココアとプレーンだろうか。

 一口サイズの、正方形が少し膨らんだ形。蓋にくっついていたお手製ティーバッグをお湯の入ったマグカップに落とし、ココア色のクッキーをつまむ。

「う、……?」

 ココアはココアだけれど、ベリー系の甘酸っぱさがありつつも驚く程ビターだ。アリが絶対に作らない味。……でも、美味しい。

 もう一色は甘くなかった。チーズが香る、しょっぱいクッキー。どちらもほろほろと口溶けがよく、甘味と塩気で交互にパクパク食べてしまう。

 お茶は砂糖を入れてもいないのに、ほのかに甘く感じた。茶葉本来の甘味というやつだろう。

 好みを把握されている。胃袋を掴まれつつあるのかと、汗をかく思いだ。

 アリへのメッセージ画面は未だ空欄のまま。

 スマホの上で指を彷徨わせていたら、画面の上から新着メッセージのポップアップが出た。

『誰よりも早く渡したかったんだ。口に合えばいいんだけど。良かったら感想聞かせて。Happy Valentine!』

 ……そういえば毎年、一番最初にくれるのはアリだったのに。

 何だかちょっと悔しくて、アリの画面に戻してキーボード画面をタップする。

「今日クッキーもらった。告白されたけど、友達になることになった。何故か下の名前で呼ばれたし、ぼくも下の名前で呼ぶことになるらしい」

 打っている途中で、またポップアップが出た。

『ココアクッキーにホワイトチョコ合わせても美味しいと思うから試してみて。おやすみ』

 魔法のチョコレイトをクッキーと同じくらいに割って、一緒に食べる。苦味が和らいで、これも美味しい。アリが好きそうな味になった。

 ボクはやっぱりアリが好きだ。

 お菓子を食べたら真っ先にアリが浮かぶし、アリの好みだと思ったら教えてあげたいし、アリが美味しい物を食べた時の顔を想像しただけで嬉しくなる。

 ボクの一番大切な、かわいいひと。

 一番の親友はアリだけど、新しい友達が嫌な訳ではない。というか、真っ直ぐ向けられる好意は、くすぐったくて、嬉しい。

 だから。

「美味しいクッキーをありがとう。ボクの好みの味だった。良かったら、来月までにキミの好みを教えて。友達として、よろしくね。おやすみ、昴くん」

 譲歩というのも変な話かも知れないけれど、仲良くなってみようと思う。

 恋愛と友愛の違いが、それでわかればいい。

 わからなくても、苦しい時間が減ればいい。


 そうやって一歩を踏み出した、これは、ボクの友情にまつわるオハナシ。


お読み頂きありがとうございます。

こちらは以前upしたボンボン・オ・ショコラと同じ世界観のお話です。

(あちらは平成中期、こちらは平成後期~令和くらい)

少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです。

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