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第八話 アドメアの森

 一行は九時の魔女の森を目指してサンマリア北から出た。歩いて三十分のところらしい。

 サンガは黙々と歩いているとき、今朝見た夢のことを思い出していた。


 気づくと雲の上にいた。

 雲から茶色い山が突き出ていた。その山に一人のおじいちゃんが座っていて、こちらをジッと見つめていた。

 気づくとサンガの意識はその老人もとい仙人のところに吸い込まれていた。

 「わしの名前はアローマ。君を待っている」

 サンガとアローマの間には温かな情が流れていた。

 「俺はこの人に会いに行けばいいのか?」

 「――わしは君を待っている」

 「もうちょっと情報ないですかねえ」

 「――今日のところはここまでじゃ」

 サンガの意識はアローマから離れ、雲の上を流れに流れ、サンマリアの宿屋まで戻ってきていた。

 夢はそこで終わりだった。やけに鮮明な夢だった。

 (もしかしたら、本当にアローマという人が山の上に居るのかもしれないな)

 そう思うのであった。


 五人はアドメアの森の結界まで辿り着いた。

 ユリシーが唱える。

 「ザウ・アート・ピュア・ザイセルフ」

 結界が緑色に光る。

 ちょっとしてから、折り紙の鳥のような青白い光が飛んできた。

 その鳥はユリシーの杖の先端に止まった。

 「――あなた達は何の用で来たのですか?」

 鳥が喋った。

 ユリシーが喋る。

 「九時の魔女、アドメアさんの持っているシュペンヘリアルダイトの石片を貰いに来ました」

 「ほう。石片のことは誰にも話していないんだけどね。もしかして、そこの赤い鎧の男がサンガかい?」

 サンガが答える。

 「はい。俺がサンガです」

 「――なるほど。わかった、いいよ。おいで」

 アドメアがそう言うと、結界は青白く光って開いた。

 一行は森の奥へ進んだ。


 コンコン。

 「どうぞ」

 ギィ。

 五人はアドメアのログハウスに入った。

 アドメアはピンクの短髪で黒いローブに身を包んでいた。30歳くらいの見た目で巨乳だった。左目の下に泣きぼくろがあった。

 「魔女に会うのは初めてだぜ、俺」

 「わたしもなのだ」

 「は、初めまして。あたし、アイといいます」

 アイの挨拶にアドメアが答える。

 「はいどうも、私はアドメアだよ。――おや、あなたの肩に乗ってるその猫、シルシ付きだね。珍しい。触らせてくれ」

 アドメアがウィズを触ろうとする。

 ウィズは反対側の肩に逃げた。

 「あら、警戒されてるね。大丈夫。取って食ったりしやしないさ」

 アドメアは猫語を話した。

 「にゃおー」

 「うにゃーん」

 どうやら通じ合ってるようだ。

 「ゴロゴロ」

 アドメアがウィズを撫でている。


 それぞれの自己紹介が終わったところで本題に入った。

 「それでシュペンヘリアルダイトの石片なのですが――」

 「――ああ、それなら、そこに」

 指差されたのは灰色の石だ。

 ジークが手に取る。

 「なんだあ? 神の箴言なんて書かれてないぜ?」

 ポイッ。

 ジークはサンガに手渡した。

 すると――

 ピカッ!

 石片は黄色がかったダイヤモンドの原石のように透けた。

 アドメアが説明する。

 「そのシュペンヘリアルダイトの石片は、神聖魔法の適正のあるやつが触ると光る仕組みになってるんだよ。どうやらジークくんには神聖魔法の適正はないようだね。ところがサンガくんにはそれがあるようだ。やはり神に選ばれてるだけあるのかな」

 (いや、最強ステータスの影響かな)

 どちらにしても同じ意味だった。

 サンガは石片に浮き出た文字を読んだ。

 「なになに?」


 『――愛のある人間になりなさい。隣人を愛しなさい。隣人と助け合いなさい。汝にはそれができる。汝は愛の咎人なり。愛という罪の重みを背負って生きよ――』


 とかなんとか。いろいろ書いてある。

 (ふーん。これを九つ集めればいいのね)

 アドメアさんが言う。

 「もう、その石片に書かれている言葉は書き写したからね。あなた達に預けるわ。持ってってちょうだい。無事に集まるといいわね。あとは十二時の魔女イクラーヴィと三時の魔女アメラが持っているわよ。魔導列車でサンクルールまで行って北上すれば十二時の魔女の森よ。――そういえば、さっきアメラとの通信が復活したんだ。聞いたところ、ちょっと大きな怪我して血を流しすぎたらしい。それで魔力が足りなくなって、世界の均衡を保つ神聖魔法が一時的に使えなくなったみたい。若い男の精気が取れればすぐに復活できるのにねえって嘆いてたよ。アメラは排他的で恐れられてたからね。誰も近づかないのさ。自業自得かな。まあ、アメラのところに行ったときには精気を分けてやってあげて」

 「わかりました」

 アドメアから石片を貰ってサンガの用事は済んだ。

 「あの、魔女さん。せっかくなのでハグしてもいいですか?」

 アイが尋ねた。

 「あぁ、もちろん、いいよ。あなたみたいな女の子には特別に優しくしたくなるわ」

 そういって、二人は抱きあった。


 「――あのう、アドメア様にお聞きしたいことがあって。アマアレイブの鱗粉の用途についてなんですが……」

 「ほう。アマアレイブかい。アマアレイブなら――」

 サンガは興味がないので、近くにあった本棚の本に手を伸ばした。

 そこには魔法について書かれてあった。

 「ほうほう。フレメンタリア。火の第五級魔法か。初心者は唱える前に『オー・ヴィ』と唱えよ、とな。何かに応用できないかな?」

 プルルル。

 (神様。フレメンタリアという呪文、何かに応用できませんか?)

 (魔法か。基本的にお主の持っておるエターナルブレードに付与できるぞ。エターナルブレードは魔力伝導率もいいからのう。なにせわしの特注品じゃ)

 (フレメンタリア・ブレードとかできそうですかね?)

 (うむ、できると思うぞ)

 (ありがとうございます。では、また)

 (うむ)

 サンガはエターナルブレードについて新たな情報を、今更得たのであった。


 そんなこんなでアドメアのもとを去る時が来た。

 「じゃあ、またいつか。今日はありがとうございました」

 「うん。じゃあね。バイバーイ」

 ウィンクしてそういうのであった。


 「あたし、ほかの魔女さん達にも会ってみたいです。あたしも一緒に旅していいですか?」

 「うん。歓迎するよ。――おばあさんのお店の方はいいのかい?」

 「お兄ちゃんがいるので、もう大丈夫だと思います」

 「そっか」

 アイが新たな仲間になった。


 一行は無事にサンマリアへと帰りついた。武闘大会まであと五日。アイは山菜亭に戻った。残りの四人も一丁目の宿屋へ戻った。

 その晩、サンガはまたあの仙人の夢を見た。


 「――わしの名はアローマ。お主を待っている。お主に伝えるべきことと渡すべきものがある。わしのところまで来ておくれ。わしは果ての山脈におる」

 サンガは確かに聞いた。果ての山脈と。そこはサンクルールから近いと覚えている。十二時の魔女に会うついでに会えるな。そうサンガは思うのであった。


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