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第七話 山菜亭のアイ

 一行はサンマリアに着いた。四人はとりあえず宿屋に行って、それぞれ個人部屋を取った。ティローラは「また寝るのだ」と言って部屋に篭った。ジークは「ちょっくら散歩してくるわ」と言って出て行った。ユリシーは「魔法の研究をしたいので」と言って部屋に入った。サンガも「散策にでも行くか」と言って宿を出た。装備を外して、普通の人らしい服装で。

 武闘大会は一週間後にあるようだ。


 サンガの散策は一丁目の宿屋から三丁目まで足が伸びていた。二丁目は夜の街のようで店はほとんど閉じていて、通行人くらいしかいなかった。

 広場に出た。サンガは露店を見た。そこにはいろいろな魔法道具が売ってあった。中でも暇つぶしになりそうなものをいくつか購入した。

 サンガは広場の中央に戻って魔法道具を使い始めた。

 ――魔法のコマ。一度回したら十分は回るもの。

 ――魔法の絵本。色々な映像が飛び出してきた。飛び出る本かいな。

 ――魔法の手帳とペン。ペンで書いたものが、ペンの上に付いている白い小さなクリスタルでなぞると文字が消えた。ホワイトボードみたいだった。

 ――魔法のチョーク。どこにでも文字が書けるようだ。試しに地面に書いてみる。文字は緑っぽい蛍光色だった。五分ほど経過した文字は消えて行った。これも遊び用か。


 しばらくサンガは魔法のチョークで落書きを楽しんでいた。

 「――あっ、おにいちゃーん! どこに行ってたの? おばあちゃんが文句言ってたよ」

  ムニュ。

 サンガはしゃがんだ背中に柔らかいものを感じた。どうやら女の子が馬乗りになっていたようだ。

 「あのう、人違いじゃありませんか?」

 サンガは振り返る。そこにはツーサイドアップにした16歳くらいの黒髪の女の子が。

 「あっ。――本当だ。……すみません。後姿が似ていたもので。ついついお兄ちゃんに接するときみたいにしちゃいました。今すぐ降りますね」

 「ああ、お気にせずに」

 女の子はサンガの背中から降りた。

 「あたし、アイっていいます。あなたは?」

 「俺はサンガ。普段は赤い鎧を着てるから目立つんですけどね。今はこんな恰好ですから。誰かと間違われるのも無理はないですよ」

 「あはは。お兄さん、優しいんですね。――あ、そうだ。お腹が空いてたら、うちの店はどうですか? 三丁目の東の路地を入ったところにあるんですよ。見たところ、お兄さん、魔法の道具で遊んでましたね?」

 「うん。ちょっと暇でね。そうだね、君のお店に行ってみようかね。丁度お昼ごろだ」

 「ありがとうございます。案内しますね。こっちです」

 そういってアイは先頭を歩き出した。サンガが魔法の道具をしまうのを待ってから。


 そこは日陰になっている地味な飯屋だった。山菜亭と書かれている。少し寂れている。

 「――おばあちゃん。お客さん連れてきたよー!」

 「はいよ。いらっしゃい。どこでも好きに座っていいよ」

 店の中にはサンガの他に二組いるだけだった。席はまだまだ空いている。

 (ひょっとして、この店あまり売れていない? 立地のせいかな)

 「はい、どうぞ」

 アイがメニューを渡す。

 「どうも」

 (うん、なになに? なんだかメニューが少ないな。――ふむ、山菜料理専門店といったところか)

 「じゃあ、おばあちゃん、あたしは買い出しに戻るね」

 「はいよ、いつもありがとうね」

 (アイのお兄さんとやらはどこなんだろう?)

 十分後、サンガの頼んだ料理が届いた。ヘルシーな見た目でおいしそうだった。

 「もぐもぐ」

 (うん、味もなかなか)

 店内はおばあちゃん一人で回しているようだ。他の客が出て行ったところで、サンガが尋ねた。

 「おばあさん。アイのお兄さんは今どこに?」

 「――あー、あいつねえ。知らん。いつの間にか、どっか行っちまったんさ。すぐに帰ってくるだろうけどね」

 「そうですか。すぐに帰ってくるといいですね」

 そんな話をしていると、足元に、青い目をした黒猫がやってきた。

 「にゃおーん」

 撫でてやる。

 「この子は?」

 「あぁ、その子はウィズ。アイが拾ってきた子でね。実は少し火が吐けるんだよ」

 「へえ。そいつはすげえや」

 「――ゴロゴロ」

 そんなこんなで時間は過ぎて行った。アイが山菜を手に戻ってきた。


 「お兄さん、旅の人ですか。どこから来たんですか?」

 「サンメスからだよ。その前はトロメールに居た」

 「へー、サンメスですか。トロメールって六時の魔女の森が近くにあるっていう?」

 「ああ、そうだよ」

 「魔女さんかあ。あたしも一度会ってみたいな」

 「今度、九時の魔女に会いに行くんですよ。なんなら一緒にどうですか?」

 「あは。ありがとうございます。でもお店のことがあるからなあ。お兄ちゃんが戻ってきたら、あたしも行けるのにな」

 「お兄さんの名前はなんと言うんですか?」

 「スケです。スケ・ナカハラ」

 「覚えました。見つけたら伝言しておきますね。おばあちゃんと妹さんが早く戻ってこいって言っていたって」

 「ありがとうございます。お願いしますね」


 サンガは山菜亭を出る。

 「じゃあ、また来るよ」

 「はい。また会いましょう」

 アイはそう言って笑った。


 サンガは三丁目の広場まで戻ってきた。露店の人達に聞いて回った。

 「すみません、スケ・ナカハラという人を知りませんか?」

 「ああ、スケさんか。二丁目の方へ行くのを見たよ」

 「ありがとうございます」

 (早速収穫ありだ。帰り道だし、二丁目も探してみるか)


 サンガは二丁目にやってきた。一軒空いているお店があった。

 (中に入って聞いてみようか)

 そう思って入ろうとしたとき、中から茶髪のロングヘアーの男性が出てきた。

 (あ、ひょっとして……)

 「――すみません。あなた、スケ・ナカハラさんですか」

 「――え? そうだけど何か?」

 「こんなところで何してたんですか。おばあさんと妹さんが探していましたよ」

 「あはは。ありがとう。――いやあ、実はツケで会計を済まそうとしたら、ツケはもうダメだよなんて言われてさ、皿洗いとか雑用を働かされてね。出るのに一晩かかっちまった」

 「あはは……。夜の街がお好きなんですか?」

 「ああ。スケコマシになりたくてね。その修行さ!」

 (救えん)

 「あんまり家族に心配かけないように。俺が説教するのもあれですけど」

 「うん。わかってるさ」

 (スケくんは本当にわかっているのかねえ)

 そう訝しんだ。

 「――じゃ、おいらはもう帰るよ。じゃあね」

 「おう。じゃあな、スケさん」


 もう夕方だ。サンガは宿屋に戻った。

 今度は四人揃って、一丁目の飯屋に行った。

 「――というわけで、アイという子が魔女に会いたがってるから、シュペンヘリアルダイトの石片を貰いに行くときに一緒に連れて行っていいかい?」

 「いいんじゃないでしょうか」

 ユリシーが答えた。他の者も反対意見はないようだ。

 「じゃあ、連れて行くということで。この話は終わり。――さ、食べよう」

 四人は仲睦まじく食事を済ませた。

 武闘大会の参加申し込みは三日前からだそうだ。ジークがそう言っていた。あと六日はある。魔女の森まで石片を回収する時間は十分にある。魔女の森に行くのは次の日になった。


 次の日の朝一番に、サンガは山菜亭までアイを呼びに行った。

 「――ということで、君も来れることになった。一緒に魔女の森に行こう」

 「やった! ちょっと待ってくださいね。準備しますから」

 そう言ったアイは、肩にウィズを乗せて出てきた。

 「その黒猫も連れて行くのかい?」

 「ええ。あたしのボディーガードです」

 「ボディーガードなら俺の仲間に強いのが居るんだけどねえ。まあいいか。猫だし」


 一丁目の宿屋の前に一行は集まった。

 サンガ、ユリシー、ジーク、ティローラ、アイ。五人は魔女の森を目指して出発した。


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