番外編 列車内の会話
「なあ、ジーク。『国破れて山河在り』って知ってるか?」
「なんだそりゃあ。サンガってそりゃ、お前のことか?」
「ちげえよ。……まあいいや。なんでもない」
「へっ、そうかい。俺もなんでもいいや」
ゴトン。ゴトン。
「なあ、ジーク。……いつになったら着くんだろうな?」
「知らねえ。もうすぐじゃねえのか?」
「ずいぶんと適当だな。まあ、旅なんてそんなもんか」
二人はごちた。
※ ※ ※
ゴトン。ゴトン。
「なあ、ユリシー。君は、その茶髪の長髪は地毛かい?」
「ええ、地毛ですよ。気になりますか?」
「いやねえ、ちょっと気になっただけ」
「そうですか」
ゴトン。ゴトン。
「いつ着くんでしょうね? 私、お尻が痛くなってきちゃいました」
「さあね。辛抱強く行こうぜ?」
「はい。サンガさんのやる気にはいつも救われる気がします」
「ははは、ありがたいね」
※ ※ ※
ゴトン、ゴトン。
「暇だなあ。なにか歌でも歌うか。――そうだなあ。麦津玄師の電撃でも歌うか。――ふーんふ、ふーんふ、ふーん。――刹那に散るそのきらめきを何度も焼き付けよう死ぬ間際に。そして興奮を、おいらに電撃を。また行こう、誰も知らないところ、たった二人でー」
「うー! うるさいのだ。静かにするのだー! むにゃむにゃ」
「ああ、ごめんよ、ティローラ。起こしちゃったかな。――でもまた眠ってる。さすが眠り姫を自称するだけはあるな……」
ゴトン、ゴトン。
一行はサンマリアへ向けて進むのだった。
※ ※ ※
「――清掃屋でーす。清掃魔法はいかがですかー? お一人様銀貨1枚ですよー」
「はい、私、頼みます」
「わたしもお願いするのだ」
「俺も頼もうかな」
「俺はいいや。お前さん方、勝手にどうぞ」
ジークは断った。
「じゃあ三人分ですねー。――アク・アル・アク。ウォーター・クリーニング。ドライ・アップ」
清掃屋が清掃魔法を使った。
寝台列車のベッドは綺麗になった。
「はーい、まいど。三人分、銀貨三枚でーす」
「俺が持つよ」
そう言ってサンガが払った。
※ ※ ※
列車はブレーメンに着いた。
「――出発は一時間後となります」
そうアナウンスがあった。
四人は列車から降りて揃って伸びをした。
「うーん……。ところで向こうの大きな湖に浮かぶものはなんだ?」
サンガが尋ねる。
「あー、ありゃ水上祝祭都市、アリネル・オブ・アクアタウン。通称アリネルって都市だ。あそこは入場に人数制限があるらしいぞ。何でも乗りすぎると都市が湖に沈むからとか」
ジークが答えた。
「ふーん。あそこにシュペンヘリアルダイトの石片があったら、回収が大変そうだな。無いといいな」
「まあ、どうにかなるだろう。人生」
※ ※ ※
そして列車はブレーメンを出発した。
ガタガタガタ。
売り子がやってきた。
「お弁当はいかがですか? ウノなんかもありますよ」
「ウノだって? いただこうか」
サンガが反応した。
パラパラパラ。
(ウノか、懐かしいな。孫たちとよくやったもんだ)
「なあ、ウノやらないか?」
サンガがみんなに尋ねる。
「そうだなあ。暇でやることないし、付き合ってやるぜ」
「やるのだー」
「いいですよ。やりましょう。――実は私、ウノ初めてなんですよね」
ユリシーは都会の方とはいえ、田舎は田舎。帝国製のウノはやったことないようだ。
「大丈夫、説明書が入ってるから」
それから四人はしばらくウノを楽しんだ。