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第六話 神様との邂逅

 夜が明けて次の日。サンガは目を覚ました。

 (なんだか重いなあと思ったら、ジークの足が俺の腹の上に来てる。寝相悪いなおい)

 心の中でボヤキつつ、足をどけて起きる。

 (とりあえず情報を整理してみるか。――サンマリアにジークとティローラは向かう。そしてサンマリアの近くの魔女の森にシュペンヘリアルダイトの石片がある。また、サンマリアでは武闘大会もある、と。治療が必要な魔女アメラについては、神様と連絡が取れるということは切羽詰まった状態ではないということだろう。つまり、俺たちはジーク達と共に武闘大会に行ってもいいということだよなあ? ちょっとユリシーさんと相談してみよう)


 ティローラの部屋へ行く男二人。

 コンコン。

 「起きてますか? サンガとジークです」

 「はい! どうぞ」

 ユリシーが返答する。

 ギィ。

 二人は部屋の中へ入った。どうやらティローラはまだ寝ているようだ。変な寝相でベッドに寝ている。

 (帽子を被っていないユリシーさんを見るのは初めてだな。十八歳然としていてかわいい)

 サンガはそう思った。

 ジークがティローラの頬を叩く。

 ぺちぺち。

 「おーい、起きろ」

 ぺちぺち。

 なかなか目覚めない。

 「そういや、こいつは前に『眠り姫』を自称していたな。それほど寝るのが得意なんだろう。生憎と俺は『王子様』ではないんでな。少々手荒でも、起こして見せるぜ」

 パンパン。

 パシンパシン。

 ジークがどんどん叩く力を強めていく。

 「うーん。……まだまだ食べられるのにゃあ。むにゃむにゃ」

 「イラッと来たぜ。こいつ、良い夢見てやがる。にゃろう、こうしてくれるわ」

 ガシッ。

 ブンブン。

 ジークはティローラの両足を持って宙吊りにして左右に振り回した。

 「はにゃー。なんだかグルグルするのだー。むにゃむにゃ」

 「起きろ、起きろー」

 ブンブン。

 ティローラはなかなか起きない。

 「そろそろ飽きてきたぜ、俺」

 ジークが手を放す。

 ゴチン。

 ティローラの頭が床に当たった。

 「はうっ! は。ここは? うーん、世界がぐるぐるする夢を見たのだ。――あ、みんな、おはようなのだ」

 「やっと起きたか、寝坊助」

 「おはようございます」

 「おはよう、ティローラ」

 ティローラが顔を洗ったあと、四人は朝食を済ませ、白龍亭の外に出てきた。


 「で、これからどうするよ。あんた達二人は魔女の治療に行くんだって?」

 ジークが尋ねた。

 「それなんだがな。昨日の夜、神様から連絡があってだな。治療に行くのは後でもいいことになった。また、神の石碑のかけら、シュペンヘリアルダイトの石片がサンマリア北部の魔女の森にあるらしい。だから、俺たちもサンマリアへ一緒に行けるよ。――そういえばユリシーさんにはまだ言ってなかったっけか? 神から人への箴言が書かれた石碑のかけらを集めてそれを完成させるのも、また俺に課された使命なんだ」

 「そうなんですね。何か証拠があれば私も手伝えるんですが。あ、あと、そろそろ『さん』付けもやめてもらって大丈夫ですよ」

 「そうか。――なにか証拠を提示できないかどうか、ちょっと神様に聞いてみるよ」

 そう言ってサンガは神様にテレパシーを送った。

 (神様―? 何か俺が神様と繋がってるっていう証拠を示せないものですかね?)

 (うーん、魔女のような特殊な存在にはシルシとして見えるんじゃが、一般の人にも見える形かあ。悩むなあ。――あっ、試しにテレパシーしながら空いたもう一方の手で誰かに触れてみてはいかがかな?)

 (早速やってみますね)

 「ジーク、ちょっと左手借りるぞ」

 そういってサンガは右手でジークの左手を握った。

 (もしもーし)

 「うわっ、なんか聞こえる!」

 (よかったわい。繋がったようで。ジークさんや、君も空いた方の手で誰かに触れてみてくれないかい)

 「わかったぜ」

 そうしてジークがティローラの左手を握り、ティローラはまたユリシーの左手を握った。そうして一つながりになった四人。

 (聞こえるかな、わしの声が?)

 「わー、なんか聞こえるのだー」

 「本当ですね」

 (どうも、いつも源蔵ちゃんがお世話になってます)

 「源蔵? 誰だそいつは」

 ジークが尋ねる。

 すかさずサンガが神様に言う。

 (神様、俺、こっちの世界ではサンガと名乗ってるんです。そこんとこ、よろしくお願いします)

 (あーなるほど。わかったわい。――なんでもない。源蔵もといサンガじゃ)

 「なんだサンガのことか」

 「サンガさんって源蔵さんとも言うんですか?」

 ユリシーが尋ねる。

 「あー、えっと。そうだね、実は前世の名前なんだ」

 「へえ。なんだか和の国の人の名前みたいですね」

 「和の国ともたぶん関わりが有るんだと思う。俺の前世で住んでいたところは日本というんだけれど、その日本からこちらへ来る人も多いらしいからね」

 「日本ですか。いい名前ですね」

 「へへっ。そうでしょ」

 (あー。話の途中、すまなんだが。君たちにもシュペンヘリアルダイトの石片を集めてもらいたいんじゃが、オッケーかのう?)

 神様が尋ねる。

 「武闘大会のあとでならいいぜ」

 「同じくなのだー」

 「私ももちろんです。もう、旅は道連れですからね」

 みんながそう答える。

 「ううっ。みんな、ありがとう」

 (わしも嬉しいわい。――何かアドバイスが必要だったら、ちょくちょく、こうして連絡してくりゃれ)

 「はい」

 「おう」

 「わかったのだ!」


 「――これで俺が神様と繋がっている証拠になったかな?」

 「初めて聞いたぜ、神様の声ってやつをよ」

 「わたしもなのだ」

 「神様は神話の中だけの存在ではないんですね。ちょっと感動です」

 テレパシーひとつで四人の絆は深まった。神様と連絡が取れるというだけで、奇跡現象なのだ。


 それから一行はサンマリアに向けて出発の準備をした。聞けばサンメスからサンマリアまでは帝国製の寝台魔導列車が走っているという。サンガは昔の日本で東京から佐賀まで寝台列車で旅したことを思い出した。

 「帝国の魔導列車は時計回りで回っていてな、帝国からサンブレモール、サンブレモールからサンクルール、サンクルールからここサンメス、サンメスからブレーメン、ブレーメンからサンマリア、サンマリアから帝国へと繋がっているんだ」

 そうジークが言った。その目は爛々と輝いている。

 「魔導列車はかっこいいんだぜ。こう、黒光りしていてだなあ……」

 「その手の話はいいのだ。男子のロマンはわからんのだ。列車は列車じゃろう」

 「ちっ、ロマンのわからねえやつだなあ。女ってやつはこれだから」

 「男ってやつはこれだから、なのだ」

 ジークとティローラがまた喧嘩を始めそうだった。

 「――ところで、なんで時計回りだけなんだ? 不便じゃないか?」

 「おう、それなんだがな。今、絶賛、反時計回りの魔導列車も製作中なんだよ。半月後には完成するって話だぜ。帝国はすげえよな。この大陸の約半分を列車で繋げちまうんだから」

 「そいつはすごいな」

 (大陸の半分ってどれくらいの大きさなんだろう?)

 サンガはいずれその大きさを理解することになるのだった。


 「アイスクリームはいかが?」

 魔導列車の駅舎で、アイスクリーム売りのお兄さんが居た。四人はアイスクリームを買って食べた。バニラ味のシンプルな美味しさだった。その後、乗車券を買った。

 (サンメスからサンマリアまで、銀貨20枚か。これは安いな)

 ちなみに金貨1枚=銀貨100枚=銅貨100,000枚である。銅貨は一円玉で、銀貨は千円札で、金貨は十万円と言った感覚である。

 「なあ、乗車券安くないか? サンマリアまで何日くらいなんだ?」

 サンガがジークに尋ねる。

 「えーっと。サンクルールからサンメスまでが大体一日半だったから、サンメスからサンマリアまではその倍で、約三日といったところか? 俺も初めてだからな。正確なことはわからねえ。――値段については帝国製の魔導列車ならこんなもんだ。利用する客が多いから安価でも回していけるんじゃないのか?」

 「なるほどな」


 それから四人は列車に乗り込んだ。

 「そうえいば、ティローラ、サンメス出身って言っていたよね? 両親との挨拶とかはよかったのかい?」

 「わたしの両親はサンメスには居ないのだ。わたしが十五歳で成人してから、二人で旅行に行ったのだ。今ごろはどこにいるんだろうと思うのだ」

 「そうか。サンメスには居ないのか。またどこかで会えるといいな」

 「うむ」

 ポーッ。

 列車はサンメスを出発した。サンマリアを目指して。


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