第十三話 再会
「仙人に会うために山登りするなら、準備をしなくちゃですね」
そういうユリシーの一言で準備をすることになった。
買い出しに行く一行。サンクルールの街で思わぬ人物と再会することになる。
「――あっ、あんたは黒髪の春菊さんなのだっ!」
「失礼ね。あたしにはチカゲっていう名前があるのよ? ところで、あなた達はどうしてここに?」
「それには深い訳があるのだ、言ってやれなのだジーク」
「しょうがねえな。――あぁ、実はな、果ての山脈までちょっくらアローマの仙人まで会いに行かなきゃなんねえんだ」
「あら、それは大変そうね。うちに登山道具が余ってるけど、使うかしら?」
「ありがたい。ぜひ使わせてもらいたい」
サンガはそう言った。
「お嬢、買って参りましたぜ。――あっ、武闘大会のやつら!」
「うん? 君は誰かな?」
「誰だおめえ」
サンガもジークも冷たかった。
「俺だよ俺ー! 覚えてない? 三位のヒルラー・ブラッフだよ」
「あー。そんな人も居たような……」
サンガもジークも口を揃えて言うのだった。
「ところで、山脈に登るなら、女の子は止めといた方が良いわよ。男子だけで行きなさい」
チカゲはアドバイスとも警告ともとれる言葉を発した。
「それもそうだな。――俺は慣れてるからいいが、サンガ、おめえ、山登りの経験はあるか?」
「ああ、一応な。大丈夫だと思う」
「そうか。お前さんがそう言うなら、そうなんだろう」
アローマが居たところは雲の上だった。相当、高く登らなければならないだろう。サンガは覚悟を決めるのだった。
「じゃあ、残った女子組はうちの屋敷へ来る?」
チカゲはそう提案してくれた。
「はい、お世話になりますね」
ユリシーとアイが言った。
「武闘大会の借りを返すのだ! 私とまた戦うのだ!」
「ふふっ。いいわよ、何回でも相手してあげる」
少し艶っぽく笑うチカゲであった。
そして翌日。サンガとジークは果ての山脈を登った。
「はあ、はあ。――ジーク、今どれくらいだ?」
「ふう。今は五キロくらいか。半分くらいだな。もう少し行ったところに山小屋がある。今日はそこで休もうや」
「わかった」
二人は無事に山小屋へ着いた。汗をかいた肌着を着替えてから、すぐに眠りにつくサンガであった。 また翌日、二人は再び山登りを始めた。
そして、九号目あたりまで登ったところで、雲を突き抜けた。
「あっ、ここらへんだ! 見たことあるぞ」
「そうか。さすがに俺もここまで登ったことはなかったぜ。アローマのじいちゃんはどこに居るんだろうな?」
「そうだなあ、どこだろう? ちょっと聞いてみる」
(もしもし神様? アローマ仙人の居場所は分かりませんか?)
(うーんとな。もうすぐじゃ。仙人の方から近づいているようじゃぞ)
(ふむ)
「ジーク、アローマの方から近づいているらしい。ちょっとここで待ってみよう」
「了解だ」
五分後、白髭をたくわえた仙人がやってきた。
「ほほほ、よく来たの。こっちじゃ」
アローマに連られて着いたのは洞窟であった。
洞窟の中は仄かに光っていた。
「ほほほ、わしの名はアローマ。改めまして、こんにちはなのじゃ。さて、お主に伝えるべきことなのじゃが――」
アローマは重々しく話し始めるのであった。