第一章 第八話 「狛犬太郎、という人間」
「あら新垣ちゃん…私たちに外に出たいんだけど手伝ってくれないかね」
「新垣の嬢ちゃん…君はもしかして新垣元気の娘なのか?」
一階の通路では避難してるレフリーさんと護衛の小谷巡査長と則子たちと新垣瑞樹が対峙してた
どうやら偶然鉢合わせてしまったらしい。
私の目的は一刻も早くメロンちゃんを回収して「漆黒の牙」にいくこと。
今敵意のないこの人に構ってる暇はない。
回り道しようとするが…。
「…今忙しいので後に…」
「…野戦病院が襲われたのは警察の急な警備を少なくしたせいでテラーの対応に遅れた、だからこの元凶の政府に復讐そうだろ?」
唐 突に言われて足を止めて面くらったが、そうだ。
あの夜狂暴ななサンドワームがでたとか異世界の勇者を確保するとかで、野戦病院の警備を少なくしたのだ。
新垣の中に深い重い悲しさが胸にずっしりとかかった。
そして小谷巡査長は深々と頭を下げた。
「すまない!あの時の当直はワシだ、ワシがもっとしっかりしてれば君のお父さんは助かったかもしれない」
「…なんですかそれ…そんなので私の怒りが治まると思ってるんですか!」
「あなたのお母さんも友達ももちろん私達羽ツバメの子や狛犬君たちも、誰かを殺す罪を背負わしたくないと思ってる」
「あなたの願いは…こんな犠牲が出る方法じゃない、もっとみんなが幸せになれる方法があるわ」
「そしてその方法や責任を持って見つけてあなたの代わりになんとかするわ、私達大人を信じてお願い」
レフリーさんも則子さんも小谷巡査長もまっすぐと新垣の目をみて話した
「う、うるさい言うだけなら簡単よ…大人なんてその場しのぎのくせに!ウィンドッ・スピードッ・ドットラージ!!!」
新垣瑞樹から放たたれた。
鋭利な風の刃がレフリーたちを襲う。
ここじゃないどこか別の場所であの子の暴走を止められなかった、幸い姫乃たちのおかげであの子は無事ですんであの子の心の問題も解決された、でもそれはたまたまいてくれたからだ。
結局あの子に何にもしてやれなかった、姫乃たちがいなかったら悲劇の結末だった。
私は心に傷をもった子たちの気持ちを汲んで優しく諭すだけじゃ駄目だと、子供たちを守れる力を付けないといけないと思った。
それが「この」世界のレフリーが夢で見た、遠いこことは違うのどこか別の世界の自分の願いだった。
「リフレクト」
レフリーさんの発動した盾の魔法は風の刃はそのすべてを優しく包み込み消滅した。
かつてこことは違う異世界マクギスで使用されていた魔法だった。
「うそ…?」
「私はあなたの悲しみを痛みも怒りも全部受け止めるわ」
レフリーさんは手を伸ばし新垣瑞希の手がその手を掴むを待った。
新垣瑞希は一瞬後ずさりした。
もしかしたらか差し伸べられたその手を掴みたかったのもしれない、しかし復讐しなければ前に進めない人間もいる。
偽善だやめたらこの気持ちを一生抱えていく生き返らしてくれるのなんの解決案もない。
いやそう心の中に言葉がいっぱい溢れてていた。
「…。私は…前に進みたいんです………それと今は別に小谷さんには敵意はないです」
周りにテラーがいる状況だ、追いかけたいけど今は子供たちの安全を確保するのが最優先だ。
あとは狛犬君たちがなんとかしてくれる、レフリーさんの言葉が届いてると信じて。
大美術館コンサートホール・ロビー
太郎たちは電波を届けたあと「自身の安全を確保したのち作戦に参加せよ」と指令が届いたが、無視して屋上に来た時のようにコソコソメロンちゃんを探していた。
それも新垣さんも気になる、彼女は優しい性格だ、たとえ復讐が本気だとしてもそのために犠牲や誘拐をするような人じゃないと思う。
あって数日の人間が分かるけないけど、柊君や姫ちゃん達ほどお人好しじゃないけどせめて自分の周りは笑顔でいてほしいから。
そして今僕たちは数体のテラーに襲われていた。
「…すっごい追われてるねー、ひょっとして私達人気者だー?」
「そりゃあ人質のいない上の階だし…ここは展示してない美術品を使おう」
ここでも一応、他の生徒達とテラーが戦っているけどね。
太郎たちはメロンちゃんの救出を優先させるため無駄な戦闘は極力避けていた、逃げに徹してる。
追ってきたテラーに対し美術品のある棚を倒したり、スプリンクラーが作動していたら電気魔法で感電させたり、ヌルヌルした液体で足元を滑らせたりした。
ドサドサドサッ!
「ビリビリビりッ!」
スッテ―ン!
「うわあ、(敵さんが)かわいそう」
音海の同情をよそに、近くに見知った人を発見する。
柊修と結締姫乃のチームだ、多分正義感の強い柊君たちのことだ自分たちで犯人を取り押さえる気なのだろう。
ベルさんたちに紹介した時にはいなかった獅子上選と沢ヶ原緑花と沢ヶ原華花というンバーもいた。
「先輩たち、こんなとこで会うなんて奇遇ですね」
「おっ柊君だけなんて珍し…くわないね…まあ君たちの小隊は隊長が生徒会長だから分隊で行動するしかないよね…調度良かった、情報交換しよう」
「新垣って子か、メロンちゃんって子見なかったかな?三つ編みでおさげの子緑と白の髪の子なんだけど」
「うーん、自分たちの道中でそれらしき人はいなかったです」
まあ、どう考えてもでも下から上がって来たんだし見てるわけがないか。
「いやありがとう、それでこれからだけど…うーん」
せっかく会ったのも何かの縁だと思いこれからどうするか考える。
だが階段から現れた人物に一同は驚き、身構えた。
「あなたは佐藤勝さん!……それに新垣さん」
たぶんオープンチャンネル通信で聞いた通り佐藤さんが大ホールから吹き抜けの五階にジャンプした後階段を使ってこのコンサートホールのある階まで来たのだろう。
「見ろ、メロンちゃんもいる」
風魔君が指さした方向には青色の浮遊してる結界に閉じ込めてられてる女の子、特徴的な緑と白の髪色間違いない、今は意識を失ってるのか?。
佐藤たちはゆっくり歩いて僕達と距離を詰める、5メートルの距離で足を止めた。
「どけ…痛いじゃすまないぞ?」
「どきませんよ…どうで行くんだったらそこのおいしそうなプリプリメロンを置いてってからにしてください」
「っははっはははは面白い奴らだ…だがやれんな果物は熟れた方が美味しいだろ?」
狛犬のその突拍子もない発言に佐藤は大笑いだった。
「なんてこというんですか!熟れたら少女じゃなくなっちゃうでしょー!!」
「そういう問題じゃないから!ロリコン!」
慣れてるとはいえついいつもの癖で突っ込みを入れてしまう音海さんだった、ついでに新垣さんもどん引きしてた。
「このさい理由はどうだっていいです、今更黙って人の友達を誘拐したり闇落ちしてる人の話は聞きませんよ」
「追ってが来るぞ…なるべく早く倒す」
お互い、武器を構え対峙する。
「連携の確認をしとこう柊君は柊君のやり方で、僕たちは僕たちなりのやり方でいこうか」
「はい!わかってます…おさげの女の人を狙います」
それは連携の確認になってないような気がするが姫乃は気にしないことにした。
「いくぞみんな!最初から攻撃を「一点」にフルパワーで打ち込むんだ」
柊たち7人は新垣さんの方へ。
太郎と音海が先頭で銃を乱射し走って一気に距離を詰めていく。
魔力を溜めている証拠である魔力光が手に集まっていた。
佐藤は糸と魔力防御で銃弾を弾き、一度に全員攻撃できるように魔力を練る。
まあ一点に打ち込む必要があるため、正面から向かっていくしかない。
そして恐らく力の差は歴然だ、だから短期決戦で少しでも勝てる方法を選んだのか。
しかも防御魔法や脚力強化の魔法をかけずに突っ込んできていた、こっちの攻撃を貫通させ気でいるということか。
接近まであと一メートル。
「フェンリル」
佐藤が極太の拳を前に突き出して5メートルの極太の炎の猟犬を放つ、その大きさはフロントの4分の一を埋め尽くすほどだった。
「全員ストップ!防御!」
何?この距離で間に合うはずが…まさか。
一応魔法の展開は間に合ってはいるが。
佐藤が気づいた時にはすでに魔法は放たれていた、本来だったらとっさに低レベル防御魔法を発動しても大怪我は免れない攻撃だが。
しかし相手は全員五体満足で立っていた。
いや、今は理由はどうでもいい。
確実に次が来る。
「さすが…きっつ」
「でも、今だよ姫ちゃん!」
「いくよお兄ぃ!」
柊たちが佐藤に接近する、気付いた新垣が魔法弾を連射して妨害するが柊修だけは通してしまった。
「睡蓮花!」
修君が黒色の刀剣を鞘から抜いて居合の一撃を浴びせようとするが。
佐藤はその攻撃を指の平で挟んで受け止める。
そして糸を束ねて鞭のようにしならせてフロント中にばら撒く。
「テンペスト・ウィップ!」
「きゃ!」
「ぐはっ!」
その場にいた僕達全員が糸の鞭に当たった衝撃で膝をついてた。
その場の全員が動けないことみた佐藤はその場をあとにしようとした。
僕はなんとか起き上がり、バインドという相手を一定時間拘束する魔法を地面からだした。
佐藤の腕に白色の鎖の形をした拘束魔法が取り付いた、他の仲間も次々に起き上がって同じ魔法をかける。
「行かせないって…言ってるでしょ…!」
「おいおい、俺相手にバインドの魔法だと?」
当然言われた通り、こんなものすぐのされてしまう。
「…まともに戦う気がないのか?」
佐藤は少しばかりなにか考えるような仕草をしたあと、何かに気づいたような顔をした。
「ちっそういうことか…ブラフまでかけやがって「こういうタイプ」が一番戦いたくないタイプだ」
新垣瑞樹も気づいたようだ。
「そうか!あの時、最初から攻撃する気がなくて魔力を全て防御に回してたんだ、白色の魔力光を隠すために手に赤色のLEDを仕込んで、さらに後ろの下級生を守るため全体攻撃されないように直線に引き付けるため「一点」のブラフまでかけて」
戦いで一番厄介なのはどんな状況でも生き残る奴だ。
そうだ僕、いや僕たちはこういう人間だ。
人生の大半がどちからかといえば負けや不幸が多い一般人だ。
世の中には「努力せずとも落ちこぼれでもないけど必死に努力した結果が普通がやっと」そういう人間だっている。
そこら辺にいるモブみたいな人間だ。
世の中には「普通の人間や落ちこぼれだって主人公になれる」って言葉がある。
それはつまり本当に真ん中の普通か自称最初からわざとその位置にいる普通や本当に努力してる人や学園最下位の落ちこぼれにしか起こらないという世界のルールみたいなものがあると。
「人の10倍20倍努力をしないから」とみんな言う実際にそうだと思う。
こんなの主人公コンプレックスの努力できないことの言い訳だ。
でも弱い奴はそんなことできない、もっと趣味に打ち込んだりや友達と遊びたいし、そのために失いたくないし、「普通」を押し付ける傲慢な人を喜ばせるのは嫌だ。
必死に努力した結果が普通だと褒められることはない「普通にできるのは当たり前」普通を維持するだけでも大変だけど「普通は努力なんてしなくてもみんなできるもの」と「普通」の価値観を突きつけられ諦めてるから。
だから今の改善する気も成長しようとする向上心もない。
弱くもないし普通の奴らよりも強くもない。
だからなるべく負けないような選択をする 勝てなくても。
だからなるべく逃げて生き延びる選択をする 泥を啜ってでも。
だから友達と楽しく生きていく時間を大切に生きていく 肝心なとこは人任せで。
でも…だからこそ今満足してるこの今を守りたいと。
「そういうことです、もちょっとだけ時間稼ぎに付き合ってくださいよ」
「むしろ感謝してるくらいです、只の悪人じゃないと思ったからこそとれた作戦ですから…」
「そうだな…だが次は本気、死ぬかもしれんぞ」
当然とはいえ佐藤はあっさり拘束を自分の周りに張っていたであろう糸と素の腕力で切断してしまった。
「だってさ次は当然…考えてない…ね太郎君?」
「はは……逃げるとか?命が惜しいし、警察がなんとかしてくれるうん」
「さんせいーやるだけやって逃げようー」
あと少しだ、あともう少し時間を稼げれば…。
僕達だって僕達の大切な友人であるメロンちゃんを他人任せにしたくなかった。
僕含めてみんな余裕ぶっこいてるよう見えるがその肌には脂汗が掻いていた。
再び両者は武器を構え対峙する、もうハッタリは通じない、実力は天と地だ。
「グラビティインパクト!」
「きゃあ!」
「ぐっ!」
ドーン!ズガガガッガ!
「よし…来た!」
だが突如現れた警察官と紫姫の衝撃系魔力攻撃によって佐藤と新垣はフロントから扉を突き破ってコンサートホール内に飛ばされた。
「おいおいちと早すぎやしないかい?確かテラーに足止めさせるよう帽子屋が支持をだしたはずだが」
「僕たちが近道の最適なルートを紫姫さんに教えたんです、通信は復活してますし」
「さあ、観念して人質を渡しなさい!」
勝負あったかと思われたが、突如紫姫たちと佐藤たちの間に星柄の仮面を被った男が現れた。
「いつまでこんなとこでモタモタしてるのですか?さっきの生意気な餓鬼も殺せるには至らなくても致命傷は与えることはできたでしょう?」
「……あの人!」
帽子の男を結締姫乃と選と沢ヶ原姉妹は驚きの表情を見せていた。
もしかして知ってる人なのだろうか?。
じゃなくてなんだこの怪しげ満点なおっさん!?。
でも、ものすごい威圧感だ一歩でも動いたら八つ裂きにされそうな感じだ。
佐藤さん一人でも十分強いっていうのにまだ強そうなのが残ってたのか。
「新垣瑞樹…君はこの子を連れてここを脱出しろ」
だが佐藤は数と質の面それに新垣瑞樹と人質の少女を守りながら戦うのは不可能と判断した。
「え…あなたは」
「いいから、いくんだ帽子の男曰く必要な子らしい」
「はい…」
あの事件のあと佐藤さんは毎日私のとこに来てくれて私を励ましてくれた。
強くて優しい男の人だった、情けないけどあなたのおかげで父が生き返ったかのような気持ちになれました。
あの人にどう思われても構わない。
だがら、私はあの人の信頼応えるためいや自分の過去を振り切るため走る。
紫姫と警察官三人は追いかけようとするが、佐藤によって遮られる。
「今度は俺が行かせない番だ、…あの子供達は向きが反対だから無理だがな」
「そっちは頼みます、紫姫さん!」
見ると太郎たちは新垣をそのまま追いかけていた。
一方全体の引き続き気前線で指揮を執っている佐野と愛乃は、戦況は各地で避難が完了し有利を確信してた。
「人質の避難も順調だ、あとは主犯佐藤の逮捕とテラーの掃討と…報告にあったメロンという少女を救出すれば」
「完了ですわね、しかしなぜ特定の個人を狙ったのでしょう?」
たしかに何故ただの子供をわざわざ別の場所に軟禁する必要があったのだろうか?。
考えても思いつかなかった、がその合間に携帯電話が鳴ってるのに気が付いた…この番号俺がく知ってる人だった。
「えぇ!生徒会長?!どこ行ってたんですかっこの大変な時に!」
「は?今からメロンちゃんのいどこの目星がついて、…さらにこの事件の真の黒幕に挨拶してくるって!…訳がわ」
プツッ ツーツーおかけになった電話は現在電波の届かないとこにあるか…。
「あーもー!会長はいつも勝手ばっかりー!」
叫ぶ佐野を横に、無情にも電話そこで途切れた。