第一章 第六話 「欺かれた、真実」
狛犬太郎たち66小隊はなんとかJゾーンまでたどり着いた。
すでにテラーがかなり暴れた跡がある。
「あっ、電話の兄ちゃんちとしっきーだ!こっちこっち!」
声の方向には…羽ツバメのみんながいた。
展示室の一角の隅にイスやテーブルでバリケードを作っていた。
周りにた三体のテラーをぶっ飛ばし急いで駆け寄った。
どうやら目立った外傷はないようだった、僕達はホッと胸をなでおろした。
「はあはあっ…・みんな無事で良かった」
「そっちこそ無事で良かったよ」
「あのねっお姉ちゃんが守ってくれたの」
そうして指さした方向に他のは…新垣さんだ、偶然にも来てたのか。
感謝しててもしきれなかった。
「新垣さん…ありがとう」
「そんなことない、当然のことをしただけだよ」
「私とレフリーさんじゃや三体のテラー相手にバリアを張ることしかできなかったし…はは」
「十分だよ、後は俺たちに任せてくれ」
「しきお姉ちゃん後ろ!」
「私たちの子供たちを虐めてくれたお礼をしなくちゃねぇ」
ぶっ飛ばされて気絶から回復したテラーがこっちに向かってくる。
「コケッー!無視してんじゃねえぞお!」
「頭がクラクラするぜ、BABY」
「ブヒブヒ、逝くぜぇ」
ダッ!
カン!カン!キイィン グサッ ドガアァァン
「ゴゲェ!」
「ブヒ!」
ドサッドサッ
戦闘は一瞬だったベルト紫姫がどこぞのソードマスターばりに二体を串刺し瞬殺して、一体だけになってしまった。
様子がおかしい首を掻きむしったり虚空に目をきょろきょろさせてたりしてた…多分本格的に陰の気の魔力切れか薬の効力がきれた、大元のコントロールを離れたのだろう。
「ああ、足りない薬をもらわないと…頭ン中が欲望ででいっぱいだゼ、ぶぶぶぶっ壊したい、コロしたい、凌辱したい、とにかく滅茶苦茶にしてやりたい!」
こうなたっらもう誰の命令も聞かない、ただただ破壊の限りを尽くすだけだ。
「オらぁあア゛ああAら!」
「一斉攻撃!」
当然と言えば当然だが
策もなしに突っ込んできた最後のテラーは一分隊の拳銃の一斉射撃と二分隊の魔力攻撃を受けて消滅した
これであとはみんな安全なとこへまず避難させる、ベルはそう思った。
「これでとりあえずは大丈夫、さあみんな今のうちにひなっ…………・ガハっ!」
グサッ
一瞬何が起こったかか分からなかった、口からは血が出て、背中に刃物で刺したような鈍い痛みが伝わった。
まさか、振り返ったその視線の先には。
新垣さんが俺をナイフで刺してる!?。
「……え?………新垣さん…?」
「ベル!!」
ドサッ
不意のナイフによる刺突を受けたベルはその場に倒れこみ苦しむ、しかも多分ナイフには毒が塗られていた。
あ、やばいしかもかなり強い奴だ…。
毎回同じような手に掛かるな!って紫姫に怒らちゃうな…。
「やっぱり、あなたは私と佐藤さんの二人がかりでも敵うかどうかわかないので早めに処理させてもらいました」
この場の誰もが状況を読み込めずにいた。
どうして新垣さんがベルさんを刺してるんだ?裏切ったのか?なぜ?そもそも操られてるとか?。
「う、嘘だよね…新垣さん、なんかのの間違いなんでしょ……ねえ」
音海さんが震えながら聞く。
「嘘じゃないよ…大空さん…………・これが本当の私」
「さあ、分かったら武装解除してこちらの指示に従ってください」
そう新垣さんは、冷たく言い放った…そうまるで氷のような黒色のような瞳で。
まるで別人を見てるようだった。
「冗談じゃないわよ…」
「理由はどうでもいいわ…どう見たってあんたはこっちと戦う気満々なのは確かなんだから!」
ベルを刺され激昂した紫姫さんは新垣さんに向かって紫色の魔力剣で突撃する。
「なっ!?」
だが展開していたバリアによって高純度の魔力で錬成された魔力剣はいともたやすく砕かれてしまった。
「紫姫さん、ちょっと美人で強いからって調子に乗らないでよ?」
バックステップで距離を一端とる。
この子…強くなってる?少なくと私と同じくらいかそれ以上?。
前会った時はそれほど強くなかったのに、いやむしろ66小隊にすら遠く及ばなかったのに。
その場の誰もが動けなかった。
だがその沈黙を再び行われた館内放送で終わった。
「全員そこを動くな、今すぐ武装解除しろ…さもなくば会場に仕掛けられた爆弾が爆発する」
この声はこの前公園の砂場で会った軍人で大男の佐藤勝さん?。
武装解除?それに爆弾ってなんなんだ?。
とてもこんなことをする人みえなかったのにまさか……この事件の犯人なのか…。
「これは衛星放送の電波をジャックしてTVやインターネットに流されている」
「これ以上の犠牲を出さないためにもこれを聞いている人は…どうか最後まで聞いてほしい」
「世界全体で若者の徴兵が行われてると習ったはずだか…あれは嘘だ!実際はまだ大都市には余裕があるにも関わらずここや地方から若者をを徴兵している、我々は傲慢な政治家の盾にされてるのだ」
「怪我や戦えなくなったものは後方に回されるのは遺族補償が怖い腰抜けの政府だからだ!」
「ここまで情報が伝わらなかったのは…インターネットに幻覚の魔石が使用されていたんだ、ネットというものだからこそ魔法の幻覚と相性がいいからだ、文字や外部との会話の認識を変えるくらいで洗脳はできなかったようだがな」
「要求はただ一つ、現政権の退陣そして我々の「白と黒の両翼の翼」の政党がになう、この放送を聞いてる人たちに大切な人は何故死ななければならなかったのだ、戦力があれば沖縄奪還も攻勢にも出れるはずだ」
「……………………最後に私達戦える大人が代わりに戦うべきだ、この放送は繰り返す」
正直言ってることは理解できた、そして心のどこかで共感を得ていてしっまていた。
言ってることが本当なのが前提だが、子供が警察の肩代わりしてること自体がおかしい。
でもそのためにテロだなんて、すでに怪我した人や犠牲になった人がいるかもしれない…。
そしてその誰もがどこかで正論だと思われる演説に気を取られていたのが致命的だった。
「さて、話も終わったことだし君には「最後の手段」になってもらおうかな?」
「「!?」」
「え…いやぁ!」
突如現れた帽子の男にメロンちゃんは手首を掴まれ腕で二の腕でがっちり拘束されてしまった。
「メロンちゃん!…お前は……ぐっ」
くそっ、毒が体を蝕んで思うように動けない。
「いや…放して!……怖いよ」
「ちょっと痛くするだけです、私はこれで失礼しますので」」
その言葉にこの場の誰もがこいつは危険だと感じた。
「させないよ!」
「お前!メロンちゃんを放せっ!」
「…ぐるみはお前を殺す!」
逃がしまいと陽子さんとぐるみさんと鳳君が襲いかかる。
だが帽子の獣人とメロンちゃんは一瞬でその場から消えた、瞬間移動系の能力か!?。
「ま…て…うっ!」
「ベル…無理しないで」
あまりにも一瞬の出来事に俺たちはなすすべもなく、相手の目的も分からないままメロンちゃんを連れ去られてしまった。
大切な人が目の前から消えていていく、やっぱり俺には誰も救えないのか…。
人質は広間に大ホールに一緒くたに連行されるため、両手を上げられ歩いていた。
「一ついいかい?あれはあんたの本当の気持ちかい?」
レフリーさんは聞く、まるで自分の子供のを心配するように優しく。
「…黙れ、なにも守れやしない…人は引っ込んでて」
「おとなしくしてれば、子供たちには手を出さないのかい」
「ええ、言う通りにしてくれれば」
「そうかい、それは良かった」
こんな状況でもレフリーさんは新垣さんも例外なくみんなのことを心配できるすごい人だと太郎は思った。
それにしてもさっきのメロンちゃん拉致、人質は間に合ってるしなにか別の目的があるのは確かだな。
両翼の党テロ事件発生から一時間後
ここはテロ発生の通報を受け、会場の前に作られた警察・浮島学園の関係者たちが臨時の指令所となるテントだ。
全面にあるモニターには先ほどの佐藤勝の犯行声明が流されていた。
そしてここには警察の斑鳩署のトップ、アリシア・マーガレット署長、優しくて一件頼りなさそうに見えるけどここぞというときに芯が強い女性だ。
あとは浮島学園の教師達と。
各小隊の小隊長クラスの生徒が出席してた。
そして生徒達をまとめ、指揮する生徒会書記チームの俺、書記の佐野理久と会計の愛乃・リーゼロッテだ
ちなみに会長と副会長は俺たちに「任せるよ」と言ってどっかいってしまった…まったく毎度のことながら胃が痛い。
「紫姫大丈夫かな…」
小木玲と三島朝子も小隊長とサブとして出席していた。
「人質にされたのは全員で約300人です」
「先生、テロ犯の正確な人数は?」
「詳しくは分からないが搬入されたコンテナ、そしてモニュメントの世界欠落の規模からみて100はいると思われる」
モニュメントの世界欠落…確かここまでテラーが多いのは本来世界欠落は陰の魔力をたくさんないと出現しないのに突如現れたっていう奴か、形は通常に比べてすごく小さくモニュメントの形どってるていう。
要はモニュメントの世界欠落は世界欠落を小型にして持ち運べるようにしたもので、さらにそこに誰かが大量に陰の魔力も同時に運だのだろうだって専門家の分析らしい。
「それに対して俺達の戦力は、警察官が15人先生たちが10人残りは全部俺達生徒ですね」
「非番の人にも声をかけたんだけどこれで島の全職員よ……ごめんなさい役にたたない大人で」
「いえ、俺達とマーガレットさんは俺達と何度も一緒に戦ってきてくれたんです、今更ですよ」
実際一年前にも助けられた。
数は全校生徒合わせれば余裕があるし、今まで何度も警察の協力してきたから練度と連携も問題ない。
問題は爆弾のせいで強行突入すれば万が一衝撃で誤爆でもしたら人質に確実に多数の犠牲がでるということだ。
「今すぐ突入しましょう!」
「車田先生、あなたは馬鹿か?」
「む…しかし飛鳥先生!ではこのまま生徒たちや子供たちが危険な目にあってるのに見過ごせというのですか!」
「そうはいってない…ただ状況を冷静に分析して策を練るべきだと言ってるんだ」
はあ、またこの二人の先生は喧嘩してるな、ていうか喧嘩してるとこしか見てない。
「まあまあ、そういえば署長あの放送についてもっと上の方…市長からは何かありました?」
「……いえ…特に何もないわ……警察とガーディアン・アリスは速やかにテロを鎮圧せよ……と」
「………そして軍隊は出せないそうよ」
「本国の防衛に派遣されることになって、それが最優先…だそうよ」
「「………!」」
ザワザワザワザワ
その言葉に生徒達はおろか警察や教師たちにも一瞬で喧噪と動揺が広がった。
みんな驚愕の表情を隠せないでいる。
「そんな…・馬鹿なことが…」
くそっ、なんだよそりゃ無茶苦茶じゃねーか。
だが気持ちを切り替え冷静にその場を落ち着かせる。
「今実際にその馬鹿なことが起きてるんだ、大事なのはこれからどうするかだ」
「たとえ言ってることが正しくても、こんな方法で……」
「せめて、爆弾の位置が分かればいいんですけどねぇ…」
愛乃・リーゼロッテの言ったその言葉にかねがね同意だった。
位置が分かれば今すぐ突入しても解体なり被害でないよう無力化できるのに。
「生徒会の人ら今いいすっか!」
頭の中で思案しているうち数秒に指令所に大慌てで人が入って来た、外で警戒に当たってる生徒だろうか。
「外の見張りの舞台が情報を電波を拾って来たんすよ……66小隊が流したやつです!」
「でかした!…66小隊、生徒会長が言ってた「面白い奴ら」……か」
佐野理久は不敵な笑みを浮かべる、彼は事前の予習復習があれば怖いものなしだからだ。
俺は急いでマーガレットさんと相談して突入作戦を練り、他の役員に準備するよう指示を出した。
テロ実行犯の主要なメンバーは人質のいる大ホールの裏手の事務室に集められていた。
そこには新垣と佐藤勝と中年の男女が数名と年配の老人が数名いた。
「すまないご苦労だった…君は本当にこれでいいのか?まるで別人だ」
「これは私の意思ですから、それに私の目的はあなた方みたいに綺麗じゃありませんから」
もはや止められぬか…。
安っぽい正義感では解決しないのだ、最近の漫画みたいに。
「ご老人方も、あまり無理はなさらないでください」
「心配せんでも大丈夫じゃぞ、この通り元気!あだっ…腰が」
「ワシたち第三次世界大戦が終わってすぐ退役した身としてはもう一回孫のために体を張りたくての、ぬしと気持ちは一緒じゃ」
「感謝します」
いずれの老人も魔法と武器どちらか一つしかつかえないが、だからこそ魔法や銃や格闘術の強者ばかりだ。
不甲斐ない日本政府に活を入れると意気込んで政党に参加している人達であった。
そして、今度は同じメンバーである帽子の獣人に目を向ける。
だがその表情は厳しく、威圧するような目で見ていた。
「帽子屋、アレはなんだ」
「見ての通り世界欠落です」
新垣が帽子の獣人に食って掛かる。
「!…あんなものまであるなんて聞いてません!犠牲だって…」
「犠牲…がなんですって~よっく聞こえませんねえぇ!まさかテラーの力を借りといて今更犠牲がどうとか?」
その言葉にはっとして数歩さがり脂汗を掻いていた。
「よせ…今からでも降りろ…俺たちのやってることはそういうことだ」
「こいつに協力を得ようとした俺の責任だ」
「私は……辞めません、力を手にいれたんです元凶となったものに復讐しなくちゃならないんです」
「それでは私はこれで、僕に会いたい人がいるみたいなので」
帽子の獣人は立ち去っていく。
そして見えないように嘲笑とも見える笑みを浮かべた。
馬鹿な子ですね~、両親を殺したのも力を与えたのも焚きつけたのもたった一人の人間にいいようにされているいうのに…。
大ホール
連行されてきてそうそうになんとか知り合いを見つけることに成功した。
「こっちもあさっり捕まってしもたわあ、全部ドカーンじゃどうにもならんわ」
「道上先輩もですか…それに……」
「則子さん、小谷巡査長無事…とは言えないですね」
「おお、66小隊のみんな久しぶりだな、この通りだ…してやられたよ年はとりたくないなあまったく」
則子さんは手の平が撃ちぬかれてて小谷巡査長にいたっては足が骨折してイスに腰かけていた。
正直驚きだった、小谷巡査長は今まで何度も凶悪犯を現行犯逮捕してきた人だ、それがここまでやれられるなんて。
警官の人はみんな同じ感じに包帯を巻いて応急処置をしいている様だった。
道上先輩はさすがというべきか、指揮が上手かったのだろう一般人や下級生の被害は最小限だった。
ベルさんも毒のせいで今は横になってる、幸い症状は苦しむだけで健康な人なら2~3日は耐えられるらしい。
それでも学生には武器を奪うだけで特に何もしてないのは脅威と見てないか佐藤勝さんの最後の良心って…やつか。
「みんな…ごめんなさい私たちが早く気づいていれば…」
「そんなことないよ僕も鳳様もみんな則子さんの言葉でまとまとまったんだから」
「俺だって…毒さえ受けてなかったら…俺の実力なら…あの佐藤さんを止めれたかもしれない…のに」
「みんなこれからの事どうするかデス」
「とにかく、外部との連絡が取れないか試してみよう」
僕達は相談しあってばれないように手持ちの通信機を作動させ反応がないか試してみる。
かなり周到に用意されたジャミングだ結果は分かっていたが。
「…ダメか」
たとえ爆弾がブラフで全員で思い切って反抗しても、多分リーダー核の佐藤さんの前では学生の浅知恵なんておままごとにすぎない例えば道上先輩や紫姫さんでも倒せるかどうかもわからない。
「せめてベルベルが毒から回復すればまだ希望はあるのになー」
その言葉を聞いて紫姫は考え込む。
「こういう時ヒーローがいてくれば…ね、太郎君」
「ははっ、そうだね本当にいないんだもん」
そういう僕達が漫画ばりにかっこよくテロ組織を無双して鎮圧するていう妄想は置いといて。
「いい考えがある、爆弾の探索と送信を同時にやるしかないと思ってる、それとジャミング装置も壊そう」
確実に…ね。
「でも…危険よ」
則子さんの言うことももっともだ、そもそもこんなこと他の人でもできる、誰でもできるけどこの中で一番の適任は僕達だ。
さらにいうと今回は相手が「人質を殺すのは最後の手段」っていう常識を持ち合わせた組織だからきっともっとオラついた組織ならすぐお陀仏だったろうな。
こういうとこは運が良かったと思っておこう。
「僕達強くないからこれくらいのことしかできないですけどね」
「ついでにいうなら!テロのリーダーを倒すなんて責任重大な役は避けたいなーみたいな」
ベルと紫姫だけはなんのことかわからずキョトンとしてた。
ああ…初めて会った時もこんな雰囲気だったと思った。
でも今はこのわけわからない感じが頼もしく見えた。
「ふふ、66小隊の1分隊をこっそり抜けださせるのは我々メイド隊におまかせください」
「ベルのことはまかせて……毒の解毒方法を知ってるから」
私も…私のできることをやろう副作用で動けなくなるかもしれない。
でも今あの佐藤勝に勝てる実力を持った人はベルしかいない。
「がんばって!おねーちゃんたち」
こうして羽ツバメの子達に勇気を貰う励ましを受けながら。
命名コソコソやるぞ!作戦が始まった。