第一章 第五話 「異変」
そして七日目の日曜日の朝が来た
今日は羽ツバメの子たちの作品がひっそり隅っこで展示される日だ。
今日は珍しく部室に66小隊全員とユウさんがそろっていた。
ま、全員羽ツバメの関係者なんだから当然といえばそうだね、うん。
「じゃあ全員揃ったことですし行きましょうか」
かなりの大所帯なので鳳凰君たちがバスをレンタルしといてくれていた、ちょっとずるい気がするけど。
「めちゃくちゃ混んでるわね」
さすが大芸術展だ休五寮だけじゃなく他の孤児院・老人ホーム・教会・保育園など公的機関や浮島学園の全学年の吹奏楽の発表とか華道部・美術部・写真部も参加している。
地元で有名な画家やアート建造物・彫刻・書道・陶芸・生け花、プロ・アマチュア関係なくがところせましと展示・開催されていた。
「紫姫…パンフレットが一メートルあるぞ」
「大丈夫ですよ」
「何日かに分けて開催してますから」
広すぎて迷子の放送がひっきりなしなくらいに広い。
「メールだと、こことは逆の北側のコーナーに展示してあるとこに羽ツバメの子たちが先に待ってるって」
というわけで急いでるわけでわないので見物がてら行くことにした。
「あははははは!見てみてオトミン変なネコウー」
「……これはぐるみ好みの良い民族衣装だ……参考になるな…ネットに上げよう」
途中に「エメラルドの瞳」「限界回廊」と題名された絵や「世界終了の手紙です」「やきう民」なんて絵もあったりした。
「おお、見ろ紫姫!…これは合体カメ吉の等身大の胸像だ……!」
「は?何が?」
「これは伝説の最終回だけの出演でいまだ立体化してないものなんだぞ!やっぱり女の人には分からないか~」
「ロボットは男の浪漫ですよね!ベルさん」
「ああ!」
「やだなあ、紫姫さん今のロボアニメはイケメンがいっぱいいるんですよ~私も見てます安心してくだい」
太郎とベルの二人はがっちり握手してた。
そして何を安心しろというのか。
そんな他愛のない会話をして、楽しんでいた。
羽ツバメの56番展示スペース
「みんな、コールさん達や66隊のみんなもうすぐで来るそうよ」
「本当!?」
レフリーさんの知らせを受けて一気に子供たちは騒がしくなった。
「こらこら静かに」
(あ、大空さんたちがくるんだ…そっか)
そしてそれは、たまたま通りすがった新垣にも聞こえてた。
しかし、彼女の表情は変わらず窓の外を見てるだけだった。
「おい、外の様子がおかしくないか?」
窓を見ると、そこには全長10メートルの大型テラーがいた、しかも………5体だった。
大美術展資材搬入口
鈴木則子巡査が見回りの巡回をしてた。
「すまないね、則子君、早く羽ツバメの子たちのとこに行きたいのに」
隣にいるのは小谷賢治巡査長、御年60歳を超え引退したが警察は慢性的な人手不足なのと温和で正義感の強い人柄と経験を買われ再徴用された尊敬できる人だ。
「いえ、お仕事ですから」
「助かるよ…それにしてもこんなナイスボデーを腐らせてるなんてもったいない彼氏の一つでも作りたまえよ!」
そういうとお尻にてを伸ばして撫でた、もちろん冗談だとわかってているけど。
「きゃ、もうセクハラですよ」
「はっは、いいじゃないか」
世間話を終へ、全体を見渡して気になったことを運営スタッフに聞くことにした。
「ところで、このコンテナは?まだ空けてないのがあるな」
「はい館長からそのままにしておけと」
「中には何があるか知ってるのかね?」
「確か、二日目以降のイベント機材だとか書いてありました」
特におかしいことはなかった、なんだただの思い過ごしか?。
改めて振り返ると、コンテナの傍に一人の大きい帽子を被った男が立っていた。
「誰だ君は?…ここは関係者以外立ち入り禁止の看板があったはずだが」
「起動しろ」
バッァアアアアアアアアアアアアアアアァン!!!
突如、轟音と熱風と衝撃波が則子達やスタッフを襲った。
「何の爆発だ!?」
これは間違いない爆発魔法か火薬の爆発だ、つまり誰かが仕掛けないと起こせない。
爆風が晴れると、そこには数体…いや倉庫を埋め尽くすほどのテラーがいた。
「テラーかっ!?」
「でも、私たちを無視してどこに行こうとしてるの?」
確かに則子君の言った通りテラーは私達を無視して窓や裏から会場にむかう出入り口にむかっている。
となると一般の人間を最優先に向かっていてるのは確かか。
「聞こえますか!現在テラーが複数現れて………レシーバーが通じない?」
目的はなんであれ妨害電波まで用意してるということはかなり計画的な行動なはずだな。
「あっ!小谷巡査長、奴が!」
「うをっ!?」
「……ふっ」
すんでのとこで突然の傘による刺突の襲撃を警棒で受け止めた。
目の前の帽子の男は武器を抜いて襲いかっかてきた完全にこちらを足止めするつもりだろう、この事件の犯人の関係者とみて間違いない。
それに経験不足な新人達を守りながら戦うのは難しい。
「則子君は、このことを他のみんなに伝えてくれ…放送室に向かうんだ!無線が駄目でもあそこなら」
「他のみんなはここにるスタッフの人や一般の人の避難誘導を頼む」
すごい…こんな状況でも最善で的確な指示を飛ばして、冷静に分析してる。
自分なんてただ足を引っ張ってるってるだけだというのに。
「分かりました!小谷さんも無理しないでください、すぐに応援を呼びます」
「心配するな、魔法なんてなかったころはこの警棒と射撃で通ってきたのでね」
「ご武運を」
則子達新米の警官たちはそれぞれ目的の扉へ走る。
帽子の男は阻止しようと動くが小谷が前を遮った。
「君の相手はおじさんがしよう」
「……僕達は」
愛用のニューナンブM60を両手で構え対峙する。
戦いのさなか帽子の男が喋った彼らの目的は…。
「何が起きてるんだ……?」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ!
あちこちで警報が鳴り響いている。
「これは確かどこかで火災が起きたときに鳴る警報のはずだけど…」
「それにしてはけっこう長い」
普通だったらもう消化し終えて解除してもいいころだ。
だがそんなこと考える余裕なく、突如職員通路の扉がふっ飛ばされた。
「「!?」」
嘘だろあれは…テラー?しかもいつもの一匹2匹じゃなく沢山いた。
まさかこれだけの数が一昨日から始まった今日まで続いてる洋上での国連軍との戦闘中に抜けてきたのか?。
いやありえない、大なり小なり島を覆うセンサーに引っかかるはずだ。
ここ数日間なにもセンサーに反応したとニュースになってないのに。
「えーなんでなんでー?そもそもどっから来たのー?」
「言ってる場合じゃないわよ!この分だと羽ツバメのみんなも危ないわ!」
事実、出現したテラーたちはテラーたちは手当たりしだいに物を壊したり人を襲ったりしてた
考えるだけ無駄だ。
とりあえずみんな汎用多次元空間収納「かまくら」から武器を取り出して戦闘態勢になった。
警報が鳴りやむと同時にスピーカーから聞き覚えのある声が聞こえた。
「みなさん落ち着いてください、この斑鳩会館は現在多数のテラーの攻撃を受けてます我々警察が事態の収拾にあたってます落ち着て警察とスタッフ従って落ち着て避難をしてください」
「現在警備にあたってる全員に告げます小谷巡査長から個々の判断で臨機応変に対応して市民の避難に当たってほしいと指示を伝えます」
「それと…勝手かもしれません…・ですが今いる浮島学園の生徒にお願いがあります!どうか市民の避難が完了するまでの時間稼ぎをお願いします!……でも無理はしないで危なくなったら大人たちに任せて逃げなさい」
「…私もすぐいくわ」
「この声は…則子さん!?」
本来だったら小谷巡査長が直接行うべき指示…状況が悪い方向にいってるのだけは分かった。
「…………・仕方ないか、多分今日警備してる警察官は多く見積もっても5人くらいだし!」
「!…本当に人手不足なのね」
やはりというか見ると周りの一般人はほとんど女の人かご老人、小学生以下の人ばかりだった。
そもそも若い大人があまりいない。
どう考えても滅茶苦茶だがやらなければやられるのはこっちだし、羽ツバメの子達も危ない。
「どうせ軍隊が出張って終わるだろうけどそれまで頑張ろうか」
方針が決まったとこで一体のテラーがふっ飛ばされてきた、遠くにいるふっ飛ばした人に見覚えがあった。
近いテラーだけを「衝撃」の魔法で吹き飛ばしお互いの死角をカバーし戦いながら手短に話をする。
「道上先輩じゃないですか」
彼女は華道部の部長で三年生の道上蓮華先輩だ、京言葉と木櫛を付けた黒髪が特徴の美人で有名な人だ。
本来なら、後ろにいる後輩たち五人と作品を見に来たんだろう。
「あんたたちは…66小隊の狛犬君と大空はんやね、放送で聞いた通り協力してこ事にあたりましょ」
「はい、あっ」
「学生たちの全体の指揮をお願いします、相手ははぐれ上級なのでバラバラに戦っても消耗するだけなので」
「魔力通信妨害や電波ジャミングがかかってるようですけど、信号弾か魔法ペンならいならけると思います」
「責任重大やわあ、こういうときは人任せやね~」
この人は小隊ランキングでも個人の実力でも上位者だ、運動部がほとんどいないこの状況だと一番の実力者であるこの人を中心動いたほうがいい。
「ははは、すみません」
「私達はフロアマップのJゾーンにいきます、あそこはかなり奥の方ですから多分戦える人がいないと思います」
「気おつけなはれや」
それに休五寮の子達もいるはずだ。
66隊一同は上条先輩と分かれ、道中のテラーを倒しながらJゾーンまで走った。
「邪魔ぁ!」
スパッ ドガガガガガ
三体一でも苦戦するテラーをベルさんと紫姫さんのおかげで難なく進めた、やっぱ強いな。
「始まったか」
「あのお方はなんて?」
「…様子見だってさ」
十字音也と神柄真白は会場から少し離れた民家の屋上にいた。
各フロアでは放送を聞いた警官と生徒たちが戦いを繰り広げてた。
「なんでみんな建物の方に逃げてるんだ?」
「ああ、外には大型のテラーがいて出入り口塞いで出られないんだ」
窓を見た、確かに大型のテラーはいたが妙なことにそこを動かなった。
それがなにかの意味があるのかは分からないが。
ここから出さないことが優先されるこうだということは明白だった。
放送室
「よし、本部への緊急通報のボタンは押したしあとはJゾーンに向かわなきゃ」
ガチャ
ドアを開け一人の大男が入って来た、男は軍隊の制服を着ていた。
もしかしたらたまたま会場にいて協力してくれるんじゃないかと思った。
「……」
「あなたは…軍隊の人…ならちょうどよかった…そちらの通信機械で連絡をお願いしまっ……え…うっ」
だがしかし大男は則子を腹パンで気絶させると、通報装置の電源を切ってしまった。
本来味方である人間に攻撃され、まったく何が起きてるか分からなかった。
「国家権力の犬といえど、末端の優秀な者もいるということか…」
男の瞳はこちらを見ていなかった、マイクにむかって何かを喋ってるのだけは分かった。
「ど…・う…して」
薄くなる意識の中…どうかみんなが無事でいますようにとそれだけを思っていた。