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第六十二話:仲間

 シエルを保護してから、二日後の朝。

 悠達は一同に会して顔を合わせていた。

 目的は、現状の発表会とでも言うべきだろうか。

 集まって顔を合わせるくらいは珍しいことでもなんでもないと思うかもしれないが、立ち上がることも出来ない重症のシエルがいた事を考えれば、それは快挙と言える。


「すごい……まさか本当に、あの傷を治す魔術が存在しているなんて思わなかったわ……」


 ドロウサイダーに腹部を刺され、致命傷になり得る傷を負った冒険者の少女、シエル=フランセル。

 クララの必死の治療を受けた今、彼女は歩くくらいならば出来るようになっていた。


「まだ軽く塞いだだけだから無理しちゃダメだよ。たとえは悪いけど、乾いてない糊で貼り付けているような状態だから、ちょっと動いたらすぐに傷口が開いちゃうんだから」

「わ、わかってる。素直に言うことを聞くわ」


 弾む声を押さえつけるのは、ここしばらくつきっきりで治療にあたっていたクララだ。

 釘を差さなければ動き回りそうなシエルをたしなめると、流石にクララには頭が上がらないのか、シエルは焦り混じりに弁明をする。


「けど大したもんだなあ。まさか二日で歩けるまでになるとは思わなかったぞ」

「前々から凄い力だとは思っていたが、これほどとはな」


 悠達はそんなやり取りを見つつ、クララの力を評価する。

 距離が近く、聞こえないというわけもなく、突然の称賛を受けたクララは目を瞑って面映さを表している。


「アリシアも治ったみたいだし、そろそろこれからどうするかを決めないとなあ」

「そのせつはどうも。わたしのほうはかんぜんふっかつです」


 しかしこうして集まったのも雑談だけが目的ではなく。

 アリシアも完治をうたい、シエルもひとまず歩くだけは出来るようになった。

 となると、それは時の流れのように。いつまでも同じ場所にとどまっているわけにはいかない。


「んで、まあ……ぶっちゃけ、これはシエル次第になるな」

「わ、私?」


 それを決定するのが、シエルだ。悠は、そう考えていた。

 カティアやクララも異論はないらしく、戸惑うシエルに頷きを返している。


「だってそうだろ。行くにしたって戻るにしたって一人じゃ無理だし、ここらで調達できない物資はどうしようもないから、ずっと留まってもいられない。だから、そろそろ決めておきたいんだ。行くか、戻るかを」


 しかし悠が語調を正すと、皆一様に静まって、話を聞く。

 提示された単純な二択は、この場で最も重要な選択と言えた。


 一つは、帰る道。これは、最も単純で安全な方法だ。

 極圏の攻略を諦め、五人で大陸へと戻る。物資にも比較的余裕を持って、事故に気をつければ高確率で遂行することが出来るだろう。

 もう一つが──行く道だ。このまま先へと進み、極圏の攻略を続行する選択。

 当然この辺りより魔物は強くなり、より困難な道が予測される。行ってから帰る分、物資にも余裕はなくなる。このままここにとどまれば、この選択肢自体が消えるだろう。

 しかし悠達の目的は、最高記録ではなく頂きの調査だ。できれば完遂したいところではあるが──一人の命を預かっている以上、悠達でこれを決めることは出来ない。


「それを決めるのは、私ではないでしょう?」


 諦めるか、続行か。シエルに委ねられたのは、そんな単純で重い二択だった。

 その重さに、シエルは声に冷静を保ちつつも冷たい汗を流す。


「いいや、シエル以外ありえないんだよ。俺たちは、元はこのまま天辺を目指すつもりで居た。でも、今はシエルがいる。言っちゃなんだが、今シエル一人で下まで戻るのは絶対無理だろ。でも俺たちなら、そのサポートが出来るし、身体を治療しながら歩いていける。一緒に行動するのは、絶対条件だ」


 悠に言われたことは、シエルだってわかっていた。

 自分一人で十分──とは口が裂けても言えない。それはここまでして見捨てろと言っているのと一緒だし、それは必死に自分を治療してくれたクララにつばを吐き捨てるような行為だからだ。

 息をつまらせるシエルに、悠は続ける。


「誰かの命を、自分達の都合で危険に晒すってのは、俺には正直ちっと重い。だからもしシエルが降りたいっていうなら、俺は喜んで撤退を選ぶよ。……だけど、もしもシエルが俺達を信頼してくれるっていうなら──それはもう、仲間だ」


 責任の重さに頭を垂れていたシエルが、悠の言葉にはっと顔を上げた。


「仲間が一緒に上に行きたいって言うなら、それが多少の無茶でも絶対に見捨てたりはしない。結果的に尻尾巻いて帰る事になるかもしれないけど、最後まで一緒だ。……シエルは、どうしたい?」


 仲間。

 手を差し出して、悠はそう言った。

 自分の身の上を知った時点でその言葉を使うとは、なんて軽々しい──と、前のシエルなら憤慨しただろう。

 しかし彼らは、自分達の身も顧みずに救ってくれた。

 極圏では、基本的に滞在時間が伸びるほど危険度は高まると言っていいだろう。少なくとも悠とカティアはそれを理解している。にもかかわらず、悠達は全力をもってシエルの保護にあたった。

 安全を確保するだけでも大変なのに、食事まで用意して──そもそも、確実に死んでいたはずの致命傷さえ塞いでくれている。

 この二日感で悠達が使ったリソースは、莫大なものと言えた。


 それを、彼らはひけらかすこともせずただ与えてくれたのだ。

 信頼が出来ないわけなど、ない。


「……一緒に、いきたい。上に、貴方達と共に」


 悠が言う通り、冒険者として『輝きの台地』の解明は悲願だ。

 頂上の輝きの正体は、そこから見える風景は、困難を踏破した名誉は。あらゆる冒険者が追い求めてやまないものだろう。

 だがそれよりも、今のシエルには──悠達の仲間になる、それが何よりも輝いて見えた。


「今までの非礼を、今ここで詫びるわ。……ごめんなさい。だから、私を貴方達の仲間にしてほしい」


 差し出された手を握って、シエルは悠の熱い眼差しを見返した。

 もう、俯かない。きっと前のようにはならない彼らだから、自分は彼らを信じる。

 迷いを捨てたシエルの手から伝わってくる力は、力強いものだった。

 悠は笑ったまま、右の口角を釣り上げる。


「一緒に行けるんだね! これからよろしく、シエル!」

「彼らと一緒だと苦労も多いぞ。……それもまた、楽しいけれど。よろしく頼む」

「アリシアです、よろしく。出会ったときのことは水にながしましょう」


 彼が認めるのなら、仲間達も認めない理由はない。

 口々に挨拶を返されたのが嬉しくて、込上がってくる熱いものを押さえつけるように、シエルは強く頷いた。


「よっしゃあ! それじゃ出発と行こうぜ! 頂上までは、後少しだ!」

「ええ──これから、よろしく」


 固く握った拳を解いてそう宣言すれば、シエルはもう元の調子に戻っているように見えた。

 少しだけ、シエルは離した手を名残惜しそうに見つめていたが──やがて、頭を振るって、前を向き直す。

 これからは、握手などしなくても、仲間であることを確かめられる。

 それは、もう後ろは見ないと言っているようだった。


 元のクールな表情を取り戻したように見えるシエル。

 だがその目には、確かに何か熱いものが宿っていた。





「それはロック・ジンよ。魔力で岩を繋ぐことで可動しているから、継ぎ目を切り放していって。断ち切られた魔力は、再接続に時間がかかるわ」

「あいよ! っても、細かい動きは苦手なんで、カティア頼む!」

「任された。援護は任せたぞ」


 ある日の正午前、悠達は『輝きの台地』攻略も残す所後一層という所まで来ていた。

 そこで、悠達は岩の身体を持つ魔物と対峙している。

 後方に残した三人──クララと、アリシア、そしてシエル。その内、シエルから伝達された情報を元に、悠とカティアは情報を組み立て、お互いの長所を活かして立ち回っていく。


 巨躯を持つ岩の魔物を前に、悠はゴーレムを連想した。

 が、シエルの言う通り、岩を雑につなげて人形を作ったような形の魔物は、魔力で岩ごとをつなぎ合わせて関節の動きを再現しているようだ。

 どちらかといえば、ゴーレムよりも『精霊』だな──などと思いつつ、悠は猛スピードで体の横を通り抜けていく岩の拳を通り抜けて、ロック・ジンの足元へと潜り込んだ。

 手のひらに魔力を集中し、叩きつけるように地面へ放り投げる──すると、岩の足の下から大きな棘が突き出してくる。

 『罠の芽』を足元に直接生成することで、直接棘を放ったのだ。


 『罠の芽』で生成された棘は岩の塊を刺し貫くには至らなかったが、その強烈な勢いによってロック・ジンは脚を持ち上げられ、転倒する。

 不揃いな石を束ねただけの存在だ、重量はあっても安定は悪いらしい。

 このレベルの戦闘に置いて、その転倒という隙は決定的である。


「素晴らしいぞユウ。──これならば、決められる」

 

 悠の背後から、カティアがその姿を現す。

 剣は既に抜き放たれていて──一から二へ。流れるように剣は軌道を変え、三と四。

 カティアの剣はそれぞれ右腕と右脚を、返す剣で左脚と左腕を岩の胴体から切り離した。


 すると、胴体だけになった岩の塊──今や石ころとさほど変わりがないそれから、土色の光が飛び出していく。ロック・ジンの本体である魔力そのものだ。


「流石にアレは食えそうにねーや……残念だな」

「はは、残念そうだな。キミらしくていい」


 ぱん、と一度ハイタッチを交わすと、悠はしゃがみこんで、ただの石塊を残念そうに突き始める。

 それを見ていたクララは歓声を上げて、抱きつかれたアリシアは鬱陶しそうに眉を顰めた。


「……なるほど、大したものね」


 一人、シエルは冷静に観察していた戦いの感想を漏らす。

 それに気がついたのか、悠はカティアを伴って仲間のもとに帰還する。


「よー、どうだった? 俺達も結構やるもんだろ?」


 シエルの視線への返答は、地球でいえばバク転を決めた友人が、ちょっとした自慢をするような──そんな気軽さで行われた。

 結構……どころではない。が、それをわかっているのはどうにもシエルを除けばカティアのみであるようで、シエルは握った拳を震わせた。

 端的に言って、理不尽であった。

 ロック・ジンは、危険度が高く認定されている極圏で見られる強敵だ。輝きの台地でもその発見例はあるが、先日のイグラパルドのようにたまたま降りてきたものが確認されているだけ。それだって、幾つかのパーティが協力しあってようやく逃げ切れたからこそ報告された目撃例だ。

 それを、情報を知っているとはいえたったの二人で軽々と撃破してのける──そんなのは、はっきりいって常識はずれもいいところだった。


 シエルはそのあっけらかんとした様子に怒りさえ感じていたが、すぐにそれも呆れに変わる。


「まったく、大したものだわ。食べることで魔物の能力を取り込むなんて。そういう特別な力を持つ人はたまにいるけれど、貴方のは規格外ね」

「そうらしいな。だから、あんま他の人には言わないでくれると助かる」


 『スキル』の存在はザオ教の機密の一つだが、それが人に根付く力ならば、表立たずともその存在は認知されるものだ。

 まことしやかに噂される与太話の一つとして、シエルはそれを知っていた。が、悠のそれは考えるのが馬鹿馬鹿しくなるくらいの常識はずれだ。


「それに、カティア。貴方の剣術も凄まじいわ。……貴方の力はわかりやすいし、すぐに『特級』認定されるでしょうね」

「私の取り柄はこれくらいだからな。しかしランクの方は縁がなさそうだ。私はまだザオ教の神殿騎士でいるつもりなのでね」

「……そう、残念だわ」


 加えて、カティア。彼女はまた『単純に強い』。ただしこれも、呆れるほどにだ。

 冒険者には、その実力を格付けする『等級』が存在する。これは実績や認定の手続きによって振り分けられる冒険者の実力の目安だ。この極圏に行くなら等級は幾つ以上が好ましい、といった判断材料などに用いられている他、なにか目的があるものが冒険者に代行を依頼する際に『但し冒険者は○級以上であること』などギルドからの斡旋の条件の一つとして設定したりする。

 これは五級から始まり一級が最も上の等級となるが、例外として『規格の外』に特級として振り分けられる者達もいる。

 卓越した剣術に、多くの戦いをくぐり抜けてきた故の目の良さ・戦闘勘。そして、膨大な魔力。カティアは問答無用で『特級』に振り分けられるだろう。

 シエルは冒険者として、何かを判断する時見た目に頼ることはない。しかし、自分は挑発のためとはいえ、初対面のカティアを子供扱いした。そればかりは、あの時の自分の愚かさを殴ってやりたいと思う。


「貴方、クララの治癒魔術も言うまでもなく論外だし……」

「へっ? わ、私はそんな、別に大したものじゃ……」

「怒るわよ。ある意味貴方が一番おかしいの。まったく、いったい貴方達はどれだけ規格外なのかしら」


 そして何よりも、クララだ。

 治癒魔術師自体は貴重なものの探せばそれなりにいる──が、致命傷を何の儀式もなしに治す魔術師など、聞いたことがなかった。

 彼女自身の負担も無視できないものとはいえ、一体彼女が入ればどれだけの冒険者が無駄に命を散らさずに済むのか、ある意味ではクララが一番とんでもない能力の持ち主と言える。


 ……こうして、仲間の一因になって、シエルは思った。

 なんと常識はずれなメンバーが集まっているのだろうか、と。

 魔物の力を使う悠に、文字通り右に出るものが居ないような剣術を使うカティア。そして『奇跡』そのものの存在であるクララ──

 今でこそ自分もその一員だが、先程の戦いを見て感じた怒りの正体に、シエルは気付く。

 一言でいえば、ズルかったのだ。これほどの存在、特級認定を受けている冒険者パーティを巡っても一人いるかいないかだ。それが三人。それはもう、資源の独占と言っていいほどに質が悪い。

 これほどの人材を一箇所に集めるのは横暴そのものだ。しかし厳密には彼らはまだ冒険者ではないのだから別にそれも悪くはなく、そもそも好きで集まった者達に独占も悪徳もなく──


 頭を抑えて、シエルはため息を吐き出す。とはいえこれからはそんな規格外に慣れていかなければならないのだ。常識はずれを常識にしていく必要がある。それを考えると気が重い。

 しかし、シエルはまだ一つ読み違えていた。


「ちょい。だれかをわすれてはいませんか」

「……貴方、確か私が面倒になっている間はほとんど寝ていたわよね。貴方もなにか出来るの?」


 それは、アリシアの存在である。

 彼女もまた、紛れもなく規格外の存在だ。

 シエルはそれを、身をもって体験することになる。


 何が出来るのか、と聞かれたアリシアは、頬を膨らませてシエルを指さした。

 小さく、すべすべした苦労を知らなさそうな少女の指──シエルは、そこまで考えて意識を落とす。


「おい、シエル、シエル」

「……はっ。え? ……えっ!?」


 数十秒ほど眠ってから、シエルは悠に身体をゆすられて、ようやく自分が眠っていた事に気がついた。

 事前の眠気はまったくない。にもかかわらず、シエルは熟睡していたのだ。

 時が飛んだような感覚に驚愕し、揺られて起きた現状に気づき──不敵に微笑むアリシアへ振り返る。


「みをもってたいけんしましたね。これがわたしの『まどろみ』です」


 勝ち誇り──控えめな──胸を反らしたアリシアに告げられて、シエルはぞっと背筋を冷え上がらされた。

 あまりにも異質。油断していたとはいえ、一瞬で眠りに落とされた。それが意味するところへ思い至り、戦慄する。


「アリシアがやらかしたみたいだから説明はそこそこにするけど、すげえだろ? この他自分を眠らせることも出来たり、自分が眠っている間にも起きている時と同じように周囲の状況を把握できるらしいぜ」


 説明を引き継いだのは悠だ。

 自分が説明したかったのに何をする──とアリシアが悠を小刻みに殴る。

 微笑ましい子供のようだが、シエルはそれを微笑ましくは思えなかった。……実際、悠は結構な力で叩かれていて、そりゃディミトリアスも痛がるわけだなどと思っていたわけだが。

 ぽかぽかとでも擬音がつけられそうな攻撃だが、あそこにナイフが握られていれば、眠っている者にはどうしようもないだろう。

 眠る。その無防備さを考えればアリシアの力もまた規格外といえた。


「ごめんなさい。言い方は悪いけど、その。見くびってたわ。でも、もう凄さはよくわかった」

「おお……? いがいにもすなおですね。そうおっしゃるのでしたら、わたしのほうはまあ」


 アリシアは最初の出会いを少しだけ引きずっていたのか、本当に意外そうに驚いてから、素直に謝罪の言葉を受け入れた。

 しかしこれでいよいよ、四人全員がとんでもない能力を持っていると知り、シエルは顔を落とす。

 今の自分は、完全に足手まといだ。傷はまだ塞がりきっておらず、激しい運動をしてしまえばすぐにでも生命の危機があるような状態──いや、完治してさえ力になれるかどうか。


 明らかに気分を落としているシエルに悠が気づいたのは、偶然だった。

 原因はわからないが、なにか落ち込んでいる。珍しく、悠だけがその事に気がついていて、悠はなにか声をかけるべきか迷った。

 声をかけるならばクララ達が居ない時にそれとなく聞くべきか? 不器用故に答えは出ないが、ふとそんな事を考える。


 しかしそれもつかの間。

 少し目を離してから戻すと、そこには落ち込んでいた少女のものではない、強い光が瞳に宿っている。


「私も、頑張らなきゃ」


 どうやら、心配はいらないようだ。

 もともと気が強そうな奴だと思っていたが、そのとおりだったようで。

 力不足ならば、力をつければいい。シエルは単純かつ最も選ぶのが難しい選択肢を、迷わず選び取っていた。


「よし、じゃあそろそろ午後の部と行きますか!」

「そうですね。ようやくおわりも見えてきたところですし」

「シエルはまだ無理しないでね。無理すると、もっと時間がかかっちゃうんだから」

「ええ、肝に銘じているわ」


 焦りを感じないわけではない──が、目標となる者達が手を差し伸べてくれている。

 それでもきっと立ち止まって待っていてくれるような目標ではなく、気を抜けばさっさと先に進んでいってしまうだろう。

 随分と甘い人達なのに、なんて厳しい。

 シエルは知らず笑みを作っていた。それは本当に久しぶりのことで──


「なんか、吹っ切れたか?」

「……そうでもないわよ」


 言いながらに、自覚はある。

 肩を叩く悠に笑みを返すと、その意図は伝わったようだ。

 腕を差し出すと、悠はシエルの腕を肩に回す。


 本当の意味で肩を並べられる仲間になってみせる。そう決意するシエルだったが──今はしばし、肩を借りようと思うのだった。


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