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風の章2『囚人』

目覚めると、そこは知らない天井だった。


じんじんと痛む全身に無理矢理力を入れて、了也は身体を起こした。そして、暫く目の前の白い壁を見つめ、その後辺りを見回した。

壁、鉄格子、低い天井、ベニヤ板のようなベッド、向こうが透けて見えそうなほど薄い布。そして、自分が纏う、白黒の服。


「捕まったのか、俺は」


これを幸か不幸かと問うのならば、了也の中には確実に「幸」の文字があった。


あの状況で、あれだけ殴られて、生きている。これは間違いなく「幸」だ。

そしてこの場所。捕らわれている、と言うことはまだ生かされていると言うこと。まだ生き残れる可能性があると言うこと。これも間違いなく「幸」だ。

さらに、ここが炎谷家の地下。昔貯蔵庫として使われていたところを牢獄として改造したことが見て取れる。炎谷家の一人娘、炎谷守羽とは幼馴染だ。だから、ここには良く潜り込んだ。場所の把握もできている現状。これも「幸」だろう。


「でも、囚人って立場は確実に『不幸』だよなあ……」


現状を整理したところで、自分が確実に不幸であると悟った了也はベッドらしき板から身体を降ろし、ゆっくりと伸びをした。痛む箇所はあるものの、身体の機能としては失われている部分はないようだ。


「『不幸』ならば諦めるのか?」


その声は、後ろから聞こえた。先程まで座っていた、壁に直接打ち付けられていた板の方から、確実に聞こえた。

汗を垂らしながら、了也はその方へゆっくりと振り返る。


そこには、この場に相応しくない、深緑の衣を纏った男が座っていた。

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