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東方紅魔恋話  作者: 九重九十九
――――
7/7

お船のイベント終わったので、リハビリがてらに書きました。

 レミリア様についていくと、そこはレミリア様の部屋だった。

「さて、停止。今日お前に来てもらったのは他でもない」

 レミリア様は書斎机についており、両肘をついて腕を組んでいる。その後ろにはそこが所定の居場所といいたげに咲夜さんが控えている。

「昨日の吸血で、フランが『うっかり』お前を殺すなんてことがないとが分かった。そこでお前には、少し早いがフランお付の執事になってもらう」

「執事、ですか」

「そうだ。私には咲夜がいるように、フランにはお前を付ける。これはお前の人生をかけての任務となる」

「はあ……」

 執事って、どういう仕事だっけ?

「当然、フランにその気がなくてもつい殺してしまうかもしれない、だがそれは許されない。お前は自分の身を守らなければいけない。その理由は分かるな」

「はい、俺の血はフラン……様の生きるために必要ですから」

「そうだ。お前はフランのために生かされているとちゃんと理解しているみたいだな。ただの人間にしては物分かりがいいじゃないか」

 レミリア様は少しだけ機嫌がよくなる。

「アハハ……」

 とりあえず愛想笑いを浮かべておいた。こういう時は下手に何か言わない方がいい。折角上がった評価を下げかねないからだ。

「まあ、執事といっても、うちの使用人で一番偉いのは咲夜だ。あくまで執事というが名ばかりのものだということを理解しておけ」

(なるほど、つまり執事とは言ってもフランのお世話係みたいなものか)

「でも最低限紅茶の入れ方くらいは覚えなさい。咲夜か小悪魔にでも聞けば教えてくれるでしょう」

「はい、私ならいくらでも時間が作れますよ。停止さんのいい時間で教えてあげられます」

「ありがとうございます」

 咲夜さんにはお世話になりっぱなしだな。いつかお礼をしなくちゃいけない。

「では停止さん。さっそく妹様の所へ行きましょうか」

 いつの間にか、レミリア様の後ろから俺の隣に咲夜さんが移動していた。もうこの人瞬間移動が使えるって確信したよ。でももう慣れたので驚きはしない。

「え、今からですか?」

「ええ、停止さんはもう妹様の執事ですからね。ではお嬢様、停止さんを案内してきます」

「ああ、頼む」

 レミリア様も軽く手を振ってくれる。なんか「しっしっ」って縦に手を振られてるけど、早く出て行けじゃなくてあれが吸血鬼式の行ってらっしゃいなのだと強引に考えておく。

「では失礼して。さ、停止さん行きますよ」

「はい。ではレミリア様、失礼します」

咲夜さんが部屋のドアを開けてくれたので、遅れないように後を追う。

「ああ、フランを頼む」

「――え?」

 振り返った時には、もう咲夜さんが扉を閉めていた。

「お嬢様もアレで妹様の事を気にかけているのですよ。紅霧異変以降は妹様も幽閉が解かれましたが、長年のわだかまりというのはそう簡単に解けないモノですからね、あなたがお嬢様と妹様を繋ぐ架け橋となってくれないかと私も密かに期待してるんですよ」

 流し目をしながら咲夜さんは先に進む。

「いやいや、俺なんかが……」

 送れないように後を付いてゆく。

「そう謙遜することは無いですよ。事実、この間の家で以降、妹様は我々が驚くレベルで大人しくなっているんですから」

 そういえば、前にこぁがフランのことすごく危険だとかなんとか言ってたな。

「霊夢たちがきっかけとなって、そして停止さんが劇的に変えてくれたんです。少なくとも、我々はそう思っていますよ」

 そう言って咲夜さんはある部屋の前で立ち止まった。

「ここが妹様の部屋に通じる所のひとつです」

「――というと?」

「妹様は以前、地下に幽閉されていました。それこそ今は、幽閉は解除されているんですが、妹様が好んで地下の部屋にいるのですよ。それでは何かと不都合ということで、館には三か所地下に続く道があります。ここはそのひとつ」

「ちなみに、後のふたつは?」

「パチュリー様が占拠している図書館と、表の小屋にもですね。ちなみにここと小屋の道が新しく造られた道です」

「へぇ」

「では、そろそろ行きましょうか」

 咲夜さんがまた扉を開けてくれる。開けた先はなんというか、洞窟のようになっていた。それは斜め下――地下へと続くのだとわかる。ごつごつとした壁や天井は強引に地面をくりぬいて作ったものではないかと予想させられる。

「この先が妹様の部屋です」

「はい」

「――さて停止さん、以前私がプレゼントした時計は持ってますか?」

「え? はい、ここに持ってますけど、あ、返した方がいいですか?」

 内ポケットから懐中時計を取り出して咲夜さんに見せる。

「いえ、それはあなたの物なので、返す必要はないですよ」

「そうですか。でもまたなんで急に時計の話なんてしたんですか?」

「多分気が付いていると思うのですが、その時計、針が四本ありますよね」

「はい、時針、分針、秒針とあとひとつ動いてない針があります」

 確認のために時計に目を落とすと、動いていない針はずっと十二を刺している。

「その時計は、私の能力とパチュリー様の魔法を合わせて作った特注品なんです。時計を持って時間よ止まれと強く思うと、十秒だけあなた以外の時間が止まります」

「咲夜さんの能力って、瞬間移動じゃなかったんですか」

「いえ、全然違いますけど。私の能力は『時を操る程度の能力』です。瞬間移動に見えたのは時間を止めて移動してるからそう見えるんですよ」

「へぇ」

 時間を操るなんてほとんど無敵の能力じゃないか。幻想郷の中でもトップレベルの能力なんじゃないのか?

「話を戻しますけど、時計の時止めは一日に六回、つまり一分間分時間を止められることになります。ここまでの説明は分かりましたか?」

「はい、問題なく」

「いいですね。では急にこんな話をしたのかは分かりますか? お嬢様も私も、今の妹様なら大丈夫だと思っていますが、それでも普通の人間のあなたが妹様と一緒にいるためにはこれくらいの防衛手段は必要ですからね。絶対に、変なことに使ったりしてはいけませんからね」

「しませんよ!」

 変な事ってなんですかっ!

「しないんですか? そうですか」

 え、それはどういう意味ですか。

「では、そろそろ行きましょうか」

 困惑気味の俺を置いて咲夜さんは先に進む。

「あ、待ってくださいよ」

 道も階段なんて舗装されたものではなかった。それがぐにゃぐにゃと適当に曲がりくねった道なりになっている。薄暗く、少しだけ湿度が高い気がする。洞窟のようだと思っていたが、進むたびに肌寒くなっていくのであながち間違いではなかったのかもしれない。しばらく道なりに進んでいると、明りが見えてきた、洞窟道の終わりである。

 洞窟道が終わると、そこは広いホールのようになっていた。

 大理石の床と煌びやかなシャンデリア、無駄に天井が広いのはやっぱり飛ぶことを前提としているからなのだろうか。ホールの隅の所にはこれまた豪華そうなベッドがあった、天蓋付きベッドというやつだ、白いレースのカーテンが使われている。その近くに木製の洋服箪笥がひとつ置いてある、何度も縫い直しているクマの人形くらいが女の子らしさを演出していた。


「レディーの部屋はジロジロ見るものではないわよ、お兄様」


 ホールの光景を見ていたら上空から声が聞こえた。少し驚きながらも上を見上げるとやっぱりフランが飛んでいた。宝石のような七色の飾りが付いた羽をはばたかせているが、あの羽ではまともに飛べるわけがないと思うのだがどうなっているのだろう。

 下から見上げる形になるので、不可抗力でスカートの中を見てしまって、しまったと思ったが、スカートの中はドロワを穿いているみたいなので、まだセーフのラインだと思った。セーフだよね……? よね?

「突然の訪問、失礼します。妹様、停止さんが正式に妹様の執事になりましたので、連れてきたところです」

「あ! あの話通ったのね!」

 フランは嬉しそうに笑みを浮かべて俺と咲夜さんの前にスタッと着地する。

「さっすが、お姉さまは話が分かるー」

 ふわりとなるスカートに、中がドロワと分かっていてもドキリとする。

「ええ、よかったですね」

 咲夜さんはニコッと微笑む。

「うん!」

「では停止さん、後はお任せします。では妹様、失礼しました」

「え、あ、ちょっと咲夜さん!?」

 俺が声を上げた時にはもう姿が見えなくなっていた。やっぱりあの人は瞬間移動のイメージが強い。

「…………えっと、フラン……」

 昨日の吸血の手前、突然泣いてしまったこととか吸血鬼への本能的な恐怖だとかフランには嫌われたくないとプライドだけはあるくせに、いざこうして対面するとどうしてもどういう態度を取ればいいのか分からなくなる。

「あのね、お兄様!」

「は、はい!」

「昨日はごめんなさい!」

「え?」

「お姉さまから聞いたの。私、血の魅力に我を失っていたんでしょ? それで、お兄様にも迷惑かけちゃって……だから私、頑張るね! 血に負けたりなんかしないように頑張るからね!」

「フラン……」

「その、だからね、頑張ってみるけど、その前にね――――ちょっとだけ吸わせて」

 頬を少しだけ上気させて、上目遣いでフランは言った。

(ああ、これは血に抗えるようになるのには相当時間がかかりそうだな)

 内心で苦笑しながら、俺は首元のネクタイを緩めるのだった。

血の味には勝てなかったよ……

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