6.創造と過去
(みっ、見つかる!)
ヒュウ・・・
『バタン』
「・・・え?」
ドアが閉まった音がした。
まさか、気づかれなかった?
「おい、宗太。」
「ん?なんだよ、死にそうか?」
「いや、そうじゃねぇよ、行ったかもしれない。」
「まじか、そりゃあ助かった。で、それ、本当か?」
「多分。入った時にドア閉まってたから、多分次は出てった。」
「そか、じゃあ大丈夫か。」
「出てみるか?」
「ああ。」
そして、静かに机の外に出てきた。
思った通り、そこには誰もいなかった。
「よし、ひとまず安心だな。で、健二、まず片っ端からいろんな部屋に入るのはやめよう。この部屋から探すんだ、何か脱出の手掛かりがあるかもしれない。」
「そ、そうだな。そうするか。」
こうして、俺らは探し始めた。
何かに役立つような手掛かりを。
しかし、何も見つからないまま10分が経過してしまった。
(やっぱ2階いったほうがよかったんじゃあ・・・)
そうな風に思いながら、あきらめかけていた。そのときだった。
「あった!なんだこれ?北と南があって、鍵のマークと番号と・・・」
宗太が言い出した。
どうやら本棚で見つけた紙のようだった。
「それ、見せて!見せて!!」
健二はそこに飛び掛かった。
その紙は、地図と、鍵の絵と、何かの番号が書いてあるものだった。
正直、今のところ言って使えるものは、この地図しかない。
まあ、この地図もこれと言った使い道が見当たらないのだが。
地図というだけで、なんらかの理由があって、どこかに迷った人に希望を与えるようなイメージがある。だがこの状況では、地図など必要ない。
そもそもこの廃墟自体、あまり広くないし、広さや大きさに関連する特徴な一つもなかった。
この数々の情報は、すべてここに行くと決まってから、地域の人や、ネットで調べて得た情報である。
何も無理して調べることではなかったのだが、過去に健二は友達に「準備が良くないな」と言われ、傷ついた。ということから、細かく情報や、時間などを調べるようになったのだ。
最近では、もういいというぐらい細かく調べすぎている。
当の本人はいまだ気づいていないようだが。
「番号書いてある、金庫かなんかか?」
「そうかもね。」
ここで探偵のような口調で、宗太が話し始めた。
「このフロアに金庫はなかった。ということは、おそらく2階にあるだろう。」
「まだ1階も完璧に調べてないよ。あるかもしれないよ、ちゃんと調べよう。」
健二はいつでも冷静だ。
化け物に追いかけられているときは別として。
「理屈でいう」ことが、悪くない、むしろ、そのほうがいいと思っているようだ。
一度止まった宗太は、それでも、続けた。
「だとしたらこの鍵の絵は何か、もちろん、脱出するために通らなくてはならないドアの鍵さ!」
「その脱出するために通るドアの鍵がある部屋の鍵かもしれないね、フロアによってそれは変わるし。」
「だとしたら、この地図をうまく利用して、すべてのフロアの構造を理解して・・・」
「この建物、2階までしかないよ、それに、さっき逃げたとき、2階にあるドアの数は、3つだって分かった。覚える必要なんてないよ、そうでしょう?」
「その奥に通路があるかも・・・」
「だとしてもその通路、地図に書いてないから意味ないよ、もしくは、無いよ。」
「健二、やっぱり理屈攻め、クゥーー!敵わねぇわ!!」
理屈攻めを好んでやっているわけではない健二は、少しかおをしかめた。
どうやら宗太には気づかれてなかったようだ。
「じゃあ、健二、次、どうすんだ?」
「とりあえず無事を第一優先だよ。その紙もって。1階をしっかり探索する。」
「おお!わかった!よし、行こう!」
そういってまた走り始めた。
少し前までは全力で走っていたので、まだ、足は傷んでいた。
来る前の体の状態は、完璧なわけではなかったから。
でもそれに比べて宗太は、たったかたったかとよく走るもんだ。
その割には、学校でのスポーツテストの順位は真ん中より下だ。
こいつも意外なところがあるもんだ。
多分このことを本人に聞いたら、「緊張かな。」というだろう。
いや、「だろう」じゃない、必ず。
そしてもう一度、食堂に戻った。
「なんっ・・・で!?」
その瞬間、二人は仰天した。
なぜだろう、先ほどの化け物が食堂に来て、暴れでもしたのか、割れている皿が、一枚、二枚、三枚。
すごい数ある。
下手すれば50枚ほどにも行く。
「さっきの・・・化けモンか?」
さっきまで探偵気取りだった宗太の目が・・・
止まったのだ、やはりおかしい。
この現状を作ってからあまり時間がたっていないのなら、奴は・・・
(近くにっ!)
考えすぎとはこのことか。
頭が痛んだ。