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4.どこだ

「よしっ、行くか。」

「おう。」

そういって、自転車をこぎ始めた。

そして、20分もかけずに、西堂館に着いてしまった。

そびえたつぼろぼろの廃墟が、いつも以上に謎めき、そして恐怖を感じる。

自転車を建物の横に置き、いざ、入口へと向かった。

「懐中電灯。」

「ん。」

宗太がバッグから懐中電灯を出す。

普通のよりも一段階大きいもので、まだ光るようだ。

「ありがとう。」

「おう、行くぞ。」

夜だし、周りには、誰もいない。

何の動物の鳴き声も聞こえない。

もちろん人の声も。

そして健二は、ドアノブへと手を伸ばす。

鉄のもので、かなりさびている。

細かいところがボロボロでも、建物自体はしっかりしていた。

(これで廃墟っていう扱いになんのか。厳しいな。)

そう考えながら、ノブを掴み、開いた。

ギィィィィ…、と古い建物の音がする、そのまま、古いのだけれど。

中はもちろん真っ暗だった。

すぐに懐中電灯をつける。

目の前には階段があった。

二階へと続き、その二階は、暗くて、懐中電灯を使ってでも見えない程遠かった。

とりあえずその辺を見渡し、建物の大まかな構造を想像する。

そのときだった。

『ギィッ、バタン!』

「はっ!?」

すぐ後ろを見る。

ドアが閉まったのだった。

「ちっ、ビビらしてくれるじゃんか。」

宗太はニヤッとしながら言った。

まだまだ始まったばかりだ。

これから、いろいろと探していかなくては。

そう思い、まずは一階から探索をすることにした。

右と左、対照的にあるドアの、どちらから行こうか迷っていたら、さっと宗太が右のドアに向かって歩き出した。

「そっち、行くのか。」

「どっち行ったって、同じ。」

「どういう意味だよ。」

「結局いろいろ調べなきゃなんねぇんだ、どっから行ったって。」

「そうかよ。」

そして、ドアを開けた。

特にカギがかかっているとか、そういうのはない。

すんなりと開く。

ドアの先は、食堂のようだった。

10個ほどテーブルがあり、それに合わせた数のいすが置いてある。

特にこれといった廃墟といえるものは、見当たらなかった。

「なるほどな、ここは食堂で、こっちが調理室・・・」

と言いながら宗太は、食堂の奥、すなわち調理室に向かて勝手に歩き始めた。

「おい、待てよ、誰かいたらどうすんだよ。」

「いねぇだろ、こんな廃墟。万が一取材班だったとしても、カメラマンのフラッシュでわかるわ、声もしない、音もしない、誰もいねぇよ。」

「それだって・・・」

「いいから、行こぜ。」

「・・・うん。」

自分たちの足音だけした聞こえない、確かに。

そして調理室も同様に、ドアに鍵はかかっていなかった。

「お、開いたぞ、健二、ここ、調理室らしい。」

「知ってる。」

「ん?包丁が出しっぱなし・・・」

『パリン。』

「なっ!?」

「おい、健二、脅かすなよ。」

「なんもしてねぇぞ。」

「皿、割れたぞ。ぶつかって落としたんじゃねぇのか?」

「いや、オレ、ぶつかってなんか・・・」

確かに音はした!

でも、近くじゃない、少し遠く、そう。

(食堂!?)

「健二!なんだよこれ!!」

「知らねぇって!」

「食堂、行ってみようぜ!」

宗太は走り始めた。

おそらく、頭に一つ浮かんだんだろう。

(逃ゲヨウ、外二出ヨウ)

「待て、宗太!」

「は?」

「今の音、多分、食堂からじゃ・・・」

「でもここ、行き止まりじゃんか!」

「・・・そうだけどっ!」

けどおかしい。

足音はないのだ。

というかさっき、食堂に皿なんてあったか?

(何カガイルヨ)

「っ・・・!そうだっ、包丁っ!」

そういって宗太は包丁を手に、走り始めた。

「まだ入って10分もたってねぇぞ!こんなんで死んでたまるかよ!!」

食堂に向かって。

「ついてこいよ、健二!お前も、そうだろ!?」

「・・・!」

きずいたら走ってた。

『バゴン!』

ドアを開け、食堂に戻ってきた。

「ど・・・どこにいる!?」

震えた声で、宗太がそう言う。

「こっ・・・答えろ、さっさと出てこい!」

あたりはシーンとしている。

「とりあえずはダイジョブだな、いったん、出口に行ってみよう。」

「お、うん。」

そしてまた、出口に向かって歩き出した。

出口の大きなドア。

ガチャガチャと引っ張り、押し、開いたりした。

「開かねぇ。」

「なんだこれ、まさか!」

「閉じ込められた。」

「こうなっちまったら逃げるよりも、てががり見つけて脱出すんのが先だな。宗太、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。」

俺たちが練った計画。

敵を見つけたら、まず逃げろ、全ては、それからだ。と。

だがこれはまだ素人の意見であり、何の役にも立たずに・・・

「こうなったら、あえて見つかったほうが楽かもな。」

「バカ、おれ、走れねぇよ。」

「奴のスピードによる。」

『ドスン、ドスン、ドスン。』

「おい、足音か?」

「いや、聞こえねぇぞ、そんなの。」

『ドスン、ドスン、ドスンドスン』

「聞こえるじゃんか、ほら。」

「マジだ、こんどこそ・・・か?」

『ドスドスドスドス。』

(死ヌカモヨ)

ギィィィィ・・・

「っ!」

左側のドアが、今、開いた。


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