2.行方不明
話し合いから少し経った日のことだった。
二人で意見を出し合い決めた予定の割には何か納得いかない、というような考えを持ち、モヤモヤしていた俺たちに、非常の事態が起こった。
いつもどおり学校に登校し、朝の掃除をし、1時間目を始めようとしたとき、先生が
「あれ?そういえば今日は勇太が休みだな。」といった。
〔清水 勇太〕。
これも俺の友達である。
普段はあまり会話しないのだが、班や係で同じになることが多々ある。
そんな勇太が、今日は学校を休んでいた。
でも、休みなんて、しょっちゅうあることだから、みんな「ふーん」で終わりにしてしまう。
その人の知名度や人気度は別として。
でも、この日はおかしかった。
いつもの空気ではない。
そんなとき、放送が入った。
[今日休みの、1-2の清水勇太君ですが、美土里町の廃墟と呼ばれる建物に行ったらしく、その後、行方が分かっていないそうで、建物の中にも入れないそうです。今、警察も手配し、捜索中なので、この件についてはもうしばらく待ってください。]
「は?」
思わず声が出た時には、やはり宗太も同じ気持ちだったのか、「え?」と言っていた。
『行方不明』、『廃墟』、『建物の中に入れない』。
この三つから、少なくとも一つはその後が想像できた。
瞬間にして恐怖が体中を駆け巡った。
でも同時に、頭の隅に、こんな考えも浮かんだ。
(だからこそ行ってやるんじゃねぇか・・・!)
多分ではあるが、宗太も、同じ考えだったろう。
帰りの会が終わった後、すぐに宗太が寄ってきた。
「どうすんだ、アレ、ヤベェぞ。」
「そうだよ、やべぇよ。だから行くんだろ。」
「だから行くって、お前・・・」
「そうだろ、行方不明があったから、行くんだ。」
そして、宗太はしばらくの間考えるように黙ってから
「ほんとに化けモンで死んだのかね・・・。」
「そうだろ。」
そして、とうとう宗太が言った。
想像もしていなかった非現実的な結末を。
「死んだらどうすんだ?」
「死んっ・・・!?」
「そうだよ。死んだら。化けモンだろ?アブないじゃん。」
それから黙ってしまった。
今までの勢いがどこへ行ってしまったのか。
勇太はどこに行った。
次の日、朝の会は急遽体育館で行うことになり、1年の先生全員と、校長先生が集まった。
もう、考えるまでもなかった。
勇太が死んでいた。
やっと建物に入れたと思ったら入り口付近で血を流し倒れているのが見つかったらしい。
だがこの事件を目の当たりにしても、俺たちの決意は変わらなかった。
行かないなんて選択肢はない。
でも、決意と恐怖は、未だ高まるばかりだった。
(死ヌノカ、俺タチ、死ヌノカ。
ソレモワカンナイ、コレ、行方不明ナノカ?)