1.軽はずみ
チャイムが鳴った。
今日も学校が終わった。
いつもどおりだった。
でも今考えてみると、この日は・・・
普通じゃなかった。
俺は〔島田 健二〕、中学一年生だ。
趣味とかは無く、友達は・・・
「おぉす!早く帰ろぜ!」
この陽気な声で話しかけてきたのは、俺の友達(多分)の、〔宮木 宗太〕だ。
今は、夏休みも終わり、2学期に突入している。
もう暑いという陽気もなくなりかけ、体育着では寒いぐらいだ。
そろそろ2学期初めの中間テストがある。
細かい勉強の計画や、部活との両立面も考えていかなくてはならない時期だ。
だが俺と宗太は、そんなことよりも深刻であり且つ重大である計画を立てていた。
『ピーンポーン』
〔宮木〕と書いてある表札の隣にあるインターホンを押し、チャイムの音が家の中に響いたと思ったとき、ちょうど宗太がドアを開けた。
「なんだ、ちょっと早かったじゃンか。部屋、散らかってる。」
「いいよ、全然。」
どうぞ入ってと言われ、それにあわせてお邪魔しますと家の中に入っていった。
宗太の部屋は、あまり広くなく、ところどころに学校のプリントが散らばっている。
初めてこの家に入った時もそうだったが、その時俺は
(これで散らかってるだ?よく言うわ。)
と思ってしまった。
島田家の常識を覆す光景だった。
というか、常識に遅れていたのは島田家だったようだ。
「飲み物、持ってくんね。ちょっとまってて。」
そう言って、部屋から出て行った。
机の上には、『「西堂館廃墟化にあたり捜索の予定」』と書かれている2,3枚の紙が置いてある。
今回の案件はこれだ。
テストと部活の両立より大事とは言ったが、この案件は、軽い思い付きで始めたものだ。
たまたま自転車で20程度の『美土里町』近くのところに、俺の住んでいる地域では珍しい『廃墟』があったのだ。
珍しかったのもあり、周りにはビルのような都会の風景も見えなく、パッと見田舎と思えるほど自然に囲まれていた。
そしてそこに、入ってみようというのだ。
(廃墟言うと化けモンみたいなの出てくるし、なんか暗そうで危ないとか母さんに言われそうだな。)
そんなことを長々と考えていたら、宗太が部屋にコップをトレーに二つ乗せ、戻ってきた。
「わりぃ、遅くなった。お茶でいい?」
「うん、いいよ。」
そして二人座ったところで、専門家みたいに宗太が話し始めた。
「でさ、西堂館の件なんだけどさ、どうすンの?時間とか、持ち物とか。」
「どうしよう、やっぱり夜かなぁ。」
「夜…ねぇ。」
「しょうがないだろ、お化けは夜出んだから。」
そして、宗太はニヤリとしまた話し始めた。
「そうかもな、じゃあ9時か。」
「帰るまでの時間も考えろ。」
「そうだな、じゃあ・・・」
そうしているうちに、大まかなことは決まっていったが、唯一考えていないことがあった。
死んだらどうするか。
もちろん二人ともそんなこと考えていない。
計画や注意の欄のどこにも書いていない。
油断していた。
軽はずみな挑戦ばかりに。