9.視界
「宗・・・太?」
「健二っ!開けてくれ!奴がっ!」
「奴?」
「途中であったんだ!美紀にっ!それでっ!!」
『工藤美紀』。
こいつは、違うクラスだが、俺が小学校に入学する頃、宗太と遊んでいたら、声をかけてきて、そこから仲良くなったというやつだ。
影が薄い俺にとっては、これが初めての女友達ってやつだった・・・だろう。
声をかけられて。とは言ったが、はじめは俺もこのありさまだから、上手くはいかなかった。
でも、6年間もいれば――――――――――。
「美紀がいんのか?」
「そうだよっ・・・でもさっきどっかに・・・とりあえず開けてくれ!」
「化けモン、いんのか!?」
「ったりめぇよ!階段の下に!」
「先に言えよ!」
健二は、とっさに鍵を開け、急いで宗太を入れた。
『バタン。』
「はぁ、はぁ。」
「で、宗太、なんで美紀がここに?」
「知るかよ、突然会ったんだもん。」
「勇太も来たっていうし。なんだよ、ここ。」
「知るかっての。まず、美紀探さなくちゃ。」
よく考えると、ここにきてる人は、みんな健二の友達だった。
(今そんなこと考えてられっかよ!)
立ち上がると、宗太が言った。
「まて、あいつがどっかに・・・」
『ドンドンドンドンドンドン』
「来たっ!!!」
今度は奴か、いや、そうだ。かすかに唸り声が聞こえる。
「どうする?」
「んなこといったって、この先、ドアなんてないぞ!」
「どうすんだよ、じゃあ!」
『バンバンバン!』
「クッソ!ドアにひびが!」
何とかして!
そこのっ!タンス!!
「おい宗太!そこのタンスに!」
『ガンガンガン!』
「でも、一人しか入れねぇよ!」
そうだった。そこにあったのは小さいタンスで、一人しか入れない大きさだった。
「じゃあ宗太入って・・」
「いや!健二が入れ!俺は、あいつの相手してやる!」
「そんな!」
『バンバンバン!!ガチャガチャ』
なんだよ、ここで宗太を身代わりにすんのか?
負けてられっか!
そのとき。
ドアの向こうだった。
「うわぁっ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「なんだっ?誰だ?」
「助けて・・・キャアアアア!宗太ァァァァァ!」
「宗太、この声!」
「美紀だ。」
「ヤバいじゃねぇか!俺行くよ!」
そういって健二は走りだした。
『バァァン!』
「どこだ!化け物!・・・あぁっ・・・」
すぐにわかった。
目の前だ。
「くそっ!」
【ギッシァァァァ!】
化け物が叫ぶ。
「美紀!美紀!!」
「こっちよ!」
「おう、宗太はや…くっ!!」
『ガッッ!』
そうして化け物を殴った。
(当たるっ!当たるぞ!)
【ギィァァァァ!!】
「怒らせてどうすんだ、健二!」
「いいから、逃げろ!」
「わーてる!」
そして、1階に降りる。
そしたら、急に。
グラグラと建物が揺れだした。
「なんだコレ!」
おそらく・・・建物の中ではあるが、爆発音が聞こえる。
「崩れる!?」
『グラッ・・・ドーン!』
視界が・・・
「見えないっ!」
薄くなっていく・・・
「宗太!どこだ?」
なにも無い・・・
「美紀!みんな!!」
声も・・・
「みんなっ・・・・」
消エタ、何モカモ。




