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新しく家族が増えました!

 とたとたとライラとカイルがやって来て、瑞希やアーサーの腰にぎゅっと抱きつく。小さな頭を撫でてやると、子猫のようにすり寄ってきた。

 そんな二人を見て自分も混ざりたいと思ったのだろうか、ルルを頭 (かもしれないところ)に乗せた不思議な生き物が、もにゅもにゅとやって来た。

 近くで見れば見るほど雪うさぎっぽい。小さな鼻をふすふすと動かしているところがなおさらだ。

 瑞希はそっと手を伸ばしてみた。


 「…………なんだか、クッションみたい……」


 毛並みはふかふか、でも見た目通り(?)脂肪を蓄えているのかもっちりとしていた。ちょっと、クセになりそうだ。


 「この子、なんていうの?」


 そもそも本当に動物なのだろうか。

 困ったようにアーサーを見上げると、彼もまた判断しかねる困った顔をしていた。


 「いいんじゃないか、動物で。……動くし」

 「…………まあ、そうね」


 とりあえず動物と認識された不思議な生き物は、まだ遊んでほしいとばかりに子供達にすり寄ってじゃれついている。平和だ。


 「えーっと……ルル?  この子、なぁに?」

 「さぁ?  アタシたちはモチって呼んでるわ」


 ぴったりな名前だ。思わず二人は感心した。現実逃避である。

 しかし逃避ばかりもしてはいられず、経緯を聞いてみると、モチが腹を空かせて弱っていたところを見つけて、三人でお世話していたらしい。

 主食はレタスなどの植物、好物はりんご。……やっぱりうさぎだ。

 食べ過ぎて太ったのだろうか。

 心の声を聞き取ったかのようにルルがそれを否定する。


 「見つけた時からあの見た目よ」

 「…………そうか」


 応えたアーサーの声は、どこか黄昏ていた。

 大人達が話し合っている間も、子供達はモチと戯れていた。いくら小型犬サイズとはいえ体の小さな子供達に持ち上げることはできないが、二人でならと思ったのか頑張っていた。腹部(?)が少しだけ持ち上がると、短いが手足が覗いた。

 気になったのか、アーサーが持ち上げる。

 てろーんと伸びる胴体(らしき部位)。ぷらんと揺れる前足をとって見てみると、ふかふかの毛並みの裏側に、ぷにぷにとした肉球があった。…………うさぎ、か?

 うさぎに肉球はあっただろうかと思いながらもしばらく無心で肉球をぷにぷにしていると、双子が両側からそっと服を掴んできた。不安そうな目で、瑞希を見つめている。

 言われることは容易に予想がついた。だからこそ、瑞希は思案を巡らせる。

 ルルが何も言わなかったということは、子供達に危険はないということ。主食が植物ということは草食。せいぜいが雑食か。

 ちらりとアーサーに目を向けると、彼は無言で頷いた。思うところは同じらしい。


 「母さん、あの……」


 カイルが意を決したように口を開く。

 瑞希は言葉を待った。自分達から言い出すのは簡単だ。しかし子供達に自己主張させなければ、子供達の為にはならない。


 「ちゃんと、お世話するから。牛とか、馬とかも。だから……っ」

 「うん、だから?」

 「モチとも、一緒に暮らしたい……っ」


 カイルが言い切った瞬間、アーサーがその頭をくしゃくしゃと撫でた。

 カイルがきょとんと見上げている。

 ちょん、とライラが瑞希の服を引っ張った。


 「一緒、だめ?  一緒がいい……」


 しゅん、と眉尻を下げるライラに、瑞希はにっこりと笑う。


 「いいわよ。モチも連れて、みんなで一緒に帰りましょう」


 よく言えたね、と優しく頭を撫でると、ライラはへにょりと笑った。

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