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新しい居場所

 街道の脇の荒屋は、本当に荒屋だった。

 荒屋というにはずいぶんと広いそれは、しかし屋根に穴は空いているし、窓ガラスは割れている。倒壊していないのが不思議なほどに荒れ果てていて、これは一日二日ではどうにかなるレベルではないと瑞希は頬を引き()らせた。

 しかしさすがというのか、魔法を使える妖精たちは逞しかった。集落のみんなでやって来たから人手が十分だったこともあるだろう。掃除どころか修繕(しゅうぜん)すらもあっという間だった。


 そして今、瑞希の目の前には二階建ての綺麗なログハウスが建っている。

 家の裏側には倉庫と、動物を飼えるように小屋も併設されている。街道から数段伸びる階段の先にはベランダも兼ねた通路と玄関。窓は当然ガラスなんて割れていないし、雨戸まで付いている。

 これがあの荒屋だったとは、修繕過程を目の当たりにしていた瑞希でも信じられないほど綺麗だった。


「どーお? 素敵でしょ?」

「素敵なんてもんじゃないわ……もう本当に、最っ高!」


 すごい! ありがとう! と本当に嬉しそうにはしゃいで喜ぶ瑞希に、妖精たちまで嬉しくなる。自分たちにとってはちょっとのことなのに、ここまで喜んで貰えるのが嬉しかった。


「どうじゃ、やっていけそうか?」

「それは……まだ、わからないけど。でも、みんながここまでしてくれたんだから、精一杯頑張るわ」


 何から何まで、本当にありがとう!と前を向く瑞希に、長老は笑顔で頷いた。


「何かあれば……いや、何も無くとも、いつでもおいで。いつでも歓迎するからの」

「はい! 長老、みんなも、本当にありがとう」


 瑞希は最敬礼で感謝を示した。深く下げられた頭に慌てたが、拒むことはしなかった。


「ねえ、ここに遊びに来てもいい?」

「もっちろん! 大歓迎よ!」


 聞かれたことに満面の笑みで返す。

 新しい瑞希の家は一人暮らしにはとても広い。ぜひ来て欲しいと言えば妖精たちは喜んだ。舞うようにヒラヒラと飛び回る彼らの翅に月の光が反射しているのがとても綺麗だった。


「まだわからないことばっかりだけど、頑張るわ」

「お前さんがお前さんのまま、頑張るなら。ワシらはお前さんに力を貸そう」


 瑞希の決意にも受け取れる言葉。それに長老は、力になろうとその肩で休まり約束した。

 妖精たちの舞は続く。月が南天に差し掛かるまで続けられた宴に、瑞希はさらに決意を固くした。


(できる限りのことをしよう。この世界で生きていこう。今日からここが、私の世界なんだから)

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