泣いた後には
「……ごめんなさい、みっともないところ、見せちゃって」
すっかり赤くなってしまった目元を誤魔化すように力無く笑う瑞希を痛々しいと思いながら、いいやとシモン長老は首を振った。それ以上を言うことはなかった。何を言っても慰めにならないことは分かり切っていた。
「ねえミズキ、これからどうするの?」
「どうしよっか……。そうね、まずは住むところを探さなきゃ」
生きていく上で、まずは家が無くては何も始まらない。衣食住は生活の基本だ。
お金なんてものは持っていないから一から稼ぐことになる。当面の食事は果物で凌ぐとしても、その間寝起きするところは探さなければならない。
「あら、住むところならここでいいじゃない」
「うーん、そうしたいのは山々だけど、私とみんなとじゃサイズが全然違うからねぇ……」
ちょっと無理があるよね、と苦笑いする瑞希に、それもそうだとルルはしょんぼり沈んだ。気持ちだけ受け取るね、ありがとう、と優しい女の子の頭を撫でている。すると今度は長老が閃いたようだ。
「人間の街からは離れておるが、ここから少し行ったところににある街道の脇に荒屋が建っておる。そこを寝床にしてはどうじゃ?」
もう何年も放置されているから誰かが所有している可能性は限りなく低い。当然あちこち老朽しているが、手を入れれば住むのに問題は無いだろう。
どうじゃ? と尋ねてくるシモン長老に、瑞希は一も二もなく頷いた。渡りに船とはこの事だ。野宿を免れるなら荒屋だろうが構わない。
「よかったわね、住むところ見つかって」
「おめでと~」
次々と妖精たちがよかったよかったと瑞希に群がる。ずいぶん心配をかけたらしいと申し訳なく思う一方で、心配してもらえたことが瑞希は嬉しかった。
「そうと決まれば、早速行こうか。人間にこの森の夜は、ちと寒いからの」
「どうせならみんなで行きましょうよ。魔法を使えばお掃除もあっと言う間だわ」
長老に続けて提案するルルに、それはいいと妖精たちは頷いた。
見ず知らずの自分にここまで良くしてくれる彼らにはどれだけ感謝しても全然足りない。
妖精たちに囲まれて、瑞希は今度は違う涙を滲ませた。彼らの優しさが嬉しくて仕方がなかった。
「もう、ミズキは泣き虫ね」
ルルが腰に手を当てて瑞希の前にやって来る。憎まれ口を言いながらも、ルルは優しく瑞希の目尻を拭った。