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瑞希とライラ2

 夕食も終えた後。

 今度は瑞希とライラが風呂に入る番だ。洗い物はやっておくと申し出てくれたアーサー達に甘えて、瑞希とライラ、それにルルは着替えを抱えて風呂、もとい温泉へとやって来た。

 アーサーとカイルが驚いていた温泉も、瑞希とルルにとっては見慣れたもので、動じることもなく、体が冷えてしまう前にと浴室に入る。それを見ていたからか、ライラもこれが普通なのだろうかと考えているのだが、残念ながらそれについて正しい知識を与えてくれる人はこの場にはいなかった。

 もうもうと湯気の立ち籠める浴室は、温泉独特の硫黄の匂いがした。湿度が高く、湯に浸かる前から温かい。


「ライラー?」


 そんなところに立ち止まってどうしたの?と瑞希が不思議そうにするので、ライラは慌てて瑞希の傍に寄った。

 走ろうときた途端つるつるのタイルに足を取られそうになって、転びこそしなかったものの驚く。どうしてなのかわからずきょとんとしているライラに瑞希達はつい笑った。


「お風呂場で走っちゃダメよ。転んだら怪我しちゃうから」


 急がなくていいから、と(たしな)められて、そういうものなのかとライラは頷いた。

 今度は走らないで、滑らないように慎重に一歩一歩を踏みしめる。そうしてようやく瑞希の許まで辿り着いて、頑張ったと瑞希を見上げた。

 瑞希はクスクスと細く笑って、ライラの頭を撫でてやった。


「さて、全身ぴっかぴかにしましょうか!」


 腕が鳴るわ、と意気込む瑞希に、ライラがわからないと首を傾げる。張り切っているということはわかるのだが、これからいったい何をするつもりだろう。


「ライラ、お手伝いする?」


 瑞希に尋ねてみる。瑞希は一瞬だけ目を瞠って、それからまたふふ、と笑った。


「大丈夫よ。ライラは、バスチェアに座っててくれればいいの」


 かこん、と浴室に音が反響する。

 ライラはまだ首を傾げていたが、大人しく示されたところに腰を下ろした。

 ルルがもしゃもしゃと魔法でしっかり泡立てた泡を山と用意する。


「じゃあ、目を瞑ってじっとしててね」


 掛けられた優しいはずの声には、言葉にはできないがどこか不穏な空気が漂っている。

 ライラにとっては、これからが正念場だった。

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