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お仕事

「しっかし、アーサーも今度の仕事は随分と長いんだねぇ。いったい何処で何をしているのやら」

「王都ですよ。いろいろやることがあるらしいですけど、元気でやってるみたいです」

「そうなのかい? それならいいけど……顔を忘れる前に帰ってくるように言っといておくれよ」


 ひらりと手を振って双子を構いに背を向けたマリッサに、瑞希は苦笑しながら内心でアーサーにエールを送った。


 秋の暮れ、豊穣祭が終わった数日後に、アーサーは王都へと発った。やるべきことがあるから、と。話し合った末、合意の上で出立を見送ったのが、もう一ヶ月も前のこと。

 最初はもちろん寂しかったり、店での負担が増えたりと大変な思いもした。けれど、マリッサのように気にかけてくれる人もいてくれるから、なんとか毎日を過ごせている。


「母さん、そろそろハーブティーが無くなりそう。生姜とカモミールのやつ」

「了解。じゃあ……これ、お願いね」


 あっち、とカイルに指差されたのは陳列棚だったから、そのハーブティーを籠に詰めてカイルに渡す。

 と、ルルがぴんと指を弾いた。

 相応の重量はあるはずの籠だが、手にしたカイルはちっとも重さを感じず、ぱちくりと目を瞬かせる。


「こっちは大丈夫そうだし、補充手伝うわ」

「ん。ありがと」


 照れ臭そうに笑い合う似た者姉弟を微笑ましく思いながら、瑞希は空いた隙間を活用して在庫や発注の確認をこなしていく。


(ハーブティーはすぐに作れるからいいとして……問題は処方箋ね)


 汎用性の高い商品とは違い、処方箋は当然服用者が限定される上、調剤も段違いに手間暇がかかる。使用する薬材も多いのでその分単価は上がるのだが、時間経過による変質等も考慮して在庫は最低限しか作っていなかった。

 それでも、これまでは十分賄えていたのに、ここ最近はじわじわと需要が高くなっている。


(一番多いのは解熱剤……風邪薬と胃腸薬も多いわね……)


 定番といえば定番の薬だ。しかし、時期も時期だから、急増に備えての用意もしておいた方がいいだろう。


(予防系のハーブティーも需要が増えてるし……飽きがこないように、別の味も考えよう)


 美味しいものでも、続けていれば飽きはくる。似たり寄ったりな味にならないように、アクセントも考えなければ。

 ちらりと店内を見渡してみる。まだ会計ラッシュには余裕がありそうだ。

 瑞希は手元に紙をとり、まずはと思い当たるハーブを書き出していった。

 効能、相性の良いハーブや果物、相性の悪いハーブや果物。

 書き出せたらグループ分けしていって、できた組み合わせは三通り。あとは、実際に試飲してみて、味を見る。


(まだ少ないけど……大丈夫。何とかなる)


 言い聞かせるように、瑞希は一人頷いた。

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