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【コミックス第1巻発売記念】とある家族の休みの日

※現代パラレル? パロディ? です。

※本編とはまったく関係ありません。

※キャラクターは同じなので一本にまとめています。


 ──PiPiPiPiPiPiPiPiPiPi……


「ん、ん〜……っ」


 目覚ましの音に起こされて、瑞希は重だるい体を動かした。

 なんだか、不思議な夢を見ていた気がする。

 けれどそれがどんな内容だったかまでは覚えておらず、まぁいいかと叫び続ける目覚ましを眠らせた。


 誰もいないリビングを通り抜け、一人キッチンに立つ。

 細かく刻んだ野菜をふんだんに取り入れたスパニッシュオムレツをパンで挟み、食べやすいように半分に切る。ウインナーは皮がパリッとするまで焼いて、スープは粒たっぷりのコーンスープ。サラダは千切ったレタスと、彩りにプチトマトを添えた。

 美味しい朝ご飯のにおいがリビングにまで広がった頃、腹ペコ家族たちが起きてくる。


「おはよう、ミズキ」

「おっはよー」

「おはよう、アーサー、ルル」


 静かに、あるいは元気いっぱいの挨拶に、瑞希の顔もにっこりと微笑む。

 二人はそのままキッチンに入ってきて、アーサーは紅茶を淹れだし、ルルは瑞希の隣に並んだ。


「手伝うことある?」

「んー……じゃあ、フルーツ切ってもらえる?」

「オッケー! 今日はぁ……ああ、パイナップルとキウイが食べ頃ね。ヨーグルトかけていい?」

「もちろん」


 目利きのルルが言うなら間違いない。瑞希は笑顔で頷いて、スープをくるりとかき混ぜた。


 そして、少し遅れてまたリビングのドアが開く。テーブル越しに目を向けると、まだ半分夢の中らしいカイルがライラに手を引かれていた。もふもふと足にすり寄るモチが踏まれないかが心配だ。


「おはよう、ライラ。カイルはまた寝坊助さん?」

「おはよう、ママ。いつものことだから大丈夫だよ」

「ん〜……」


 邪気のないライラに、そうねえと瑞希とルルがコロコロ笑う。アーサーは仕方のない子だと口では言うけれど、その目尻は少し下がっていた。


「ほら、ちゃんと起きて。ご飯喉に詰まらせちゃうわよ」


 むにむにとルルに頬を揉まれて、いやいやとカイルが首を振ってぐずる。まだ寝たいと訴える眉間のシワが、ルルのツボをくすぐったらしい。「可愛い!」と全力で抱き締めていた。けれどそれでもカイルはまだうつらうつらとしているから、今日は余程睡魔がしつこいようである。

 ぎゅうぎゅうとカイルを抱きしめるルルに、ふとライラが控えめに服の裾を引いた。


「ライラ? どうかした?」


 カイルを抱きしめたまま顔だけを向けたルルに、ライラの唇が少しだけ尖る。ぷくん、と頬も膨らんでいた。

 いつにない様子のライラに、どうしたのだろうとルルが小首を傾げる。と、ライラが言いづらそうに目を逸らした。


「…………カイルだけ、するい」




「〜〜っ!! アタシの! 弟妹が! こんなにも可愛いっ!!」


 全身全霊の叫びに、知っているとアーサーが無言でーーけれど深々とーー頷いた。


 そんな毎朝の恒例を経て、ようやくすっきり目を覚ましたカイルも交えて朝食を囲む。

 今日は日曜日、子供たちの学校は当然休みで、瑞希も休み。アーサーも仕事の予定は無いそうで、みんなでどこかへ出かけようと話していた日だ。

 窓の外は清々しく空が晴れ渡り、天気予報を確認しても一日快晴と絶好の外出日和。


「どこに行こうか」

「せっかくいい天気だから、屋外がいいわよね」

「あ、学校でふれあいパーク? なんかポスター見たよ。今月いっぱいやってるんだって」

「ライラも見たよ。いろんな動物に触れるんだって」

「アタシの学校にもあったわね。ペット連れ込み可だったはずよ」

「あら。じゃあモチも連れて、今日はそこに行く?」


 呼ばれたモチがぴくんと耳を動かす。

 元気いっぱいに手をあげた双子の、良い子のお返事がリビングに響いた。





「ヒヨコっ」

「モルモット……!」


「ねえ瑞希、天国って本当にあったのね……」

「ルル、あなたなんだか……」


 言いかけて、やはり口を閉ざす。言わない方がお互いの為のような気がした。

 もう一度視線を双子に戻すと、カイルとライラは満面の笑みを浮かべてモルモットやヒヨコを膝に乗せている。二人の間には、やきもちを妬いているのかモチが挟まり、心なしか仏頂面をしていた。

 モチで見慣れていたとはいえ、小動物と戯れる双子は親の欲目を抜きにしても確かに可愛らしい。

 これは是非とも写真を、と使命感に駆られると、瑞希の隣でパシャリとシャッターの音がした。


「……アーサー。それ、いつ、どこで買ったの?」

「先々週あたりに届いた」


 答えながら、アーサーがまたシャッターを切る。構えるカメラは素人目に見ても立派で本格的な、おそらくは一眼レフと呼ばれるようなカメラ。

 送り主はアーサーの父、ジェラルドだそうだ。


「枚数ももちろんだが写真の質に拘れ、だそうだ」

「アーサー、アタシのスマホにも送ってね!」

「わかっている」


 最早、何も言うまい。

 瑞希ははしゃぐ双子に目を向けた。そちらではとうとう我慢の限界を迎えたらしいモチが構ってとばかりにライラの膝に乗り上がろうと試みている。最終的にはライラに抱えられ、背中にヒヨコを乗せた姿には、可愛いけれどそれでいいのかと聞いてみたくなった。


「しかし、意外とたくさんいるな。ヤギに、羊に、馬に……」

「ハリネズミとかフェレットとかもいるんですって」


 パンフレットによれば、それぞれブースがあるらしい。飲食店は動物カフェになっており、広場にはドッグランもあるようだ。


「あ、お昼にピッグレースですって。行ってみる?」

「観戦前に食事だな」


 食べられなくなりそうだ、と肩を竦めたアーサーに、瑞希も確かにと小さく笑う。

 と、不意に子供たちに呼ばれた。モチをルルが抱き、双子がぱたぱた走ってくる。

 パシャッ。またすかさずアーサーが写真に収めた。


「すっかりカメラマンね」

「アルバム作成は任せろ」


 自信たっぷりに言い切ったアーサーに、吹っ切れた瑞希は「お願いします」と笑いまじりの相槌を返した。






 ジェラルドと、彼から話を聞いたダグラス老やシモン爺からも羨みコールが来るのは、また後日のことである。

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