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まったりお話し

 「お待たせー。アーサーにはチャイ、ライラとカイルはフルーツジュースよ」


 ひょっこりと顔を出して、ぱたぱたスリッパを鳴らしながらリビングに入る。リビングでは何故か気まずい緊張が漂っていた。

 大方アーサーが鉄面皮の下でパニクって、子供達もどうしていいかわからなかったと、そういうことだろう。ざっくりとした瑞希の予想は案外的を射たものだった。

 ひとまずトレーをテーブルの上に置く。それから一つ一つ配ろうとしたら、手を伸ばした先のカップがふわりと宙に浮いた。それだけではない。グラスも自ずから浮かび上がって、ふわふわと子供達の前に進み出て行った。

 目の前の出来事に、子供達の目は点になっていた。もう少しはしゃいで驚くかと思ってたのに、と瑞希は理不尽な物足りなさを感じた。


 「ありがとう、ルル」

 「(かたじけな)い」


 ルルはアーサーの堅苦しい言葉遣いに腹を抱えて笑った。瑞希も、いつの時代の武士よと笑いを押し殺せずにいる。アーサーは妖精は見えないがどんな反応をされているのか察しはついたようで、ごほんとわざとらしい咳払いをしてから言葉と一緒にチャイを一口分嚥下した。ほっこりと思わず漏れた笑みにお気に召したらしいとホッとした。


 「ママ、いまのなぁに?」

 「今のはね、一緒に暮らしてる妖精のルルの魔法なの。妖精は魔法が使えるのよ」

 「……………まじ?」

 「大まじです」


 神妙な顔つきで頷けば、まじか…とふたりは何とも形容し難い反応を見せた。 まじかまじかと何度も繰り返してトレーとグラスを見比べていた。


 「ほら二人とも、ルルに ありがとう は?」


 あ、ちなみにここね。ぱたぱた宙を飛んでいたルルの足元に手のひらを皿のようにして出す。ルルがそれに腰掛けて、こっちだよーとぴこぴこ手を振った。

 双子はなんとなく、瑞希の手のひらの上に何かがいるらしいことを感じたらしい。見えない相手にぎこちなくお礼の言葉を紡いでいた。


 「今度ね、妖精が見えるようになる指輪を貰えるってお約束をしてるから、その時にまた挨拶しましょうね」


 はーい、と良い子のお返事をしたカイルとライラの頭をかいぐり撫で回して、じゃあのんびりしましょうかという瑞希の音頭で緩やかなおやつ時が幕を開けた。

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