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お茶会準備

 ふつりふつりと不規則に湧き上がる笑いを堪えつつ、さて!と一度拍子を打つ。するとどこからともなくきゅるりと可愛らしい音が聞こえてきた。誰かと思えば、カイルが恥ずかしそうに顔を赤く染めている。


 「恥ずかしく思うことはない。生きているなら腹が空くのは当然だ」


 アーサーはカイルの頭に手を置いたまま、腹は減っているかとライラにも尋ねた。ライラは自分のへそのあたりに手を置いて少しの間首を傾げたが、やがて多分と曖昧に答えた。もしかしたら空腹の実感が無いのかもしれない。

 アーサーはそれでも素直に答えた二人を褒めるように頭を撫でた。くしゃくしゃと頭を掻き回されて猫のように目を細める子供達を温かい目で見守って、瑞希はおやつにしようとにっこり笑った。


 「ルル、果物を()いできてくれる?栄養価高めのやつ」

 「まっかせて!」


 ぽんと胸を叩いたルルに、じゃあお願い、と食材調達を頼んで、瑞希は自分達用に飲み物を淹れようとキッチンへ続く扉に手をかけた。


 「アーサー、コーヒーと紅茶どっちがいい?」

 「紅茶」

 「了解。ミルクたっぷり?」


 最後の問いにアーサーがこっくり頷いたのを確認して、瑞希は今度こそキッチンへ足を踏み入れた。

 アーサーは厳しい性格に反して甘党だった。紅茶には必ず角砂糖を三つは入れるし、コーヒーはミルク多めのカフェオレを好む。それでいて舌は肥えているらしく、コーヒー豆の煎り具合や紅茶の蒸らし加減だとかにはよく気がつく。ピンポイントで評価の欲しい所を褒めてくれるから、手間はかかるが作り手としてこれほど遣り甲斐のあることもない。


(ミルクたっぷりって言ってたから、今日はチャイにしようかしらね)


 毎日搾る新鮮なミルクと、良質な茶葉。美味しい物ができるに違いない。


 ミルクパンにミルクをなみなみと注ぎ、焦がしたり膜が張ったりしないように手を加える。ふつふつと熱されてきたタイミングを見計らって茶葉を直接投入して、弱火で茶葉の色が出るまで煮立たせて、火を止める。そして砂糖と、シナモンやカルダモンなどのスパイスを加えてからもう一煮立ちさせて、沸騰する直前でまた火を止めた。

 これを茶漉しで濾してカップに注げばマサラチャイの完成だ。


 ほかほかと湯気を立ち上らせるそれをトレーに乗せてリビングへ運ぼうとしたところで、息を切らしたルルがたくさんの果物と一緒に帰ってきた。


 「ただいまー!さくらんぼがちょうど食べ頃だったのと、ブラックベリーも摘んで来たわよ!」

 「おかえりなさい、ルル。ありがとうね、すごく美味しそう」


 さくらんぼもブラックベリーもつやつやと瑞々しくて、まるで宝石のようだ。

 幾つかをお茶請けにと拝借して、瑞希はジューサーに洗った果物を次々と投入していった。ぐっと力を加えれば、ぐちゅりと特有の音を響かせながら果汁が絞られていく。出来上がった物を濾して、こちらは氷を二つ浮かべたグラスに注いだ。


 「ルル、チャイとフルーツジュースどっちがいい?」


 どっちもルルの分あるわよ、と添えると、ルルは悩んだ末にチャイを選んだ。

 余ったフルーツジュースは寒天を加えてデザートにしようと別容器に保存して、瑞希は五つの器が乗ったトレーを持ち上げた。

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