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森の中

「こっちよ!」


 進路を指差してヒラヒラと飛ぶルルの後をついて森の中を進んでいく。道中、希少だからとか粘液でかぶれてしまうからだとかの理由で「その草は踏んじゃだめよ」などと時折注意を受けながらも、瑞希は順調に森を進んでいた。

 ルルが気遣って歩きやすい道を選んでくれているのか、服や体に傷はほとんど無い。しかし疲労というものはどうしても溜まってしまうもので、すっかり上がり切った息では歩くのも辛くなっていた。


「ルル、まだ着かないの?」

「あとちょっとよ。ほら、あそこの大きな木が見えるでしょ? あの木がアタシたちの家なの」


 そういってルルが指した木を見る。確かに大きいが、まだまだ先は長そうだ。うへぇ、とあからさまに瑞希が嫌そうに顔を(しか)めたのを見て、ルルがもうちょっとだからと繰り返す。

 しかし、瑞希は先ほどから飲まず食わずでずっと歩き続けているのだ。せめて休憩と、できれば水分補給もしたい。


「ルル、ごめんちょっとだけ休ませて。疲れたし、喉もカラカラなの」

「えぇ? んもぅ、しょうがないわね」


 あとちょっとだって言ってるのに、と頬を膨らませるルルにごめんねと謝るが、当分動きたくない。近くの木に体を(もた)れかけて本格的に休む体勢を取った瑞希にルルはまた文句を言ったが、仕方ないと渋々納得して瑞希の膝の上に腰を下ろした。


「人間って不便なのね。どうして(はね)が無いの?」

「私たちの祖先が猿だからじゃない?」

「猿! 人間は猿だったの!?」


 知らなかった! と驚くルルに、その言い方は誤解を生むよと(たしな)める。間違ってはいないが、あまり良い受け取られ方はしないだろう。ルルは素直に頷いた。


「アタシたちはね、植物から生まれるの。アタシは花から生まれたし、草や木から生まれる子もいるのよ」

「へぇ、じゃあルルたちは仲間がたくさんいるんだね」

「そうよ。みんなで集落を作って、そこで暮らすの」


 木の実と美味しい水が妖精の主食らしい。日中は木の実や花の蜜を集めたり、薬を作ったりしているのだと語られて、すごくファンシーだと瑞希は楽しくなって笑った。


 瑞希は可愛らしい物が好きだった。より自分を幼く見せてしまうとわかっていても、可愛いと気に入ったぬいぐるみを見つけたら躊躇(ためら)わずに買う。それを先輩教師に見つかった時は何とも言えない顔をされてしまった。


 くぅ、と小さく腹の虫が鳴く。瑞希は恥ずかしそうに腹に手を当てた。


「ルル、この辺りに果物はなってる?」

「あるけど、なんで?」

「喉渇いたし、お腹も減っちゃって」

「ああ、そういえば言ってたわね」


 思い出したらしいルルがやれやれと腰を上げる。


「どこ行くの?」

「果物が欲しいんでしょう? 採ってきてあげる」


 感謝しなさいよねと(のたま)って、ルルはさっさと何処かへ飛んでいった。

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