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暗中模索

 ――そう、決意を固めたまでは良かったのだが。


 「実際これって、かなりの難問よねぇ……」


 ルルが疲れを滲ませながら溜息を吐く。その傍では、瑞希もさすがに笑顔を引き攣らせていた。


 かつて通年と聞いたロバートの鼻炎は思っていたよりも根が深く、二人の頭を悩ませている。彼にも説明した通り薬の配合を変えて試用してもらったのだが、残念ながらなかなか進展が得られていなかった。

 悪くはなっていないから、とは言われるものの、それが気を遣っての感想であるとわからない瑞希ではない。本当に実感があった時の彼の興奮具合を知っているからこそ、瑞希も現状の結果に満足できていなかった。


 「単価は上がっちゃうけど、別の薬材を取り寄せてみる?」

 「それも視野に入れなきゃよね……。精製過程を増やしてみるのは?」

 「うーん……どこで増やせるかしら……」


 あれこれと話し合ってみるが妙案は浮かばず、結局今日も二人して頭を抱える。揃って溜息が零れ出た。


 「お疲れ様」

 「アーサー……ありがとう」



 労わりの言葉とともに差し出されたマグカップは、ミルクティーがなみなみと注がれていた。温かな湯気とともに立ち上る香りは甘く、糖分が疲れた頭にやさしく浸透する。

 あっという間もなく飲み干して空になったマグカップに、アーサーが何も言わずおかわりを注いでくれた。それにはすぐに口を付けず、瑞希がテーブルに頬を押し付ける。ルルは四肢を投げ出して大の字に寝そべった。

 低くなった目線の先には、心配そうに顔を覗かせるカイルとライラ。きっと足元にはモチがいるのだろう。瑞希は思わず口元を緩ませた。


 「母さんもルル姉も大丈夫? モチもふもふする?」

 「温かいし、気持ちいいよ?」


 きゅうっと情けなく眉の下がった双子に、瑞希とルルから小さな笑い声が上がる。なんとも可愛らしい気の遣い方に不思議と疲れが和らいだ気がして、二人が柔らかな金髪に手を伸ばした。

 撫でるように髪を梳いてやると、双子の表情が少しだけ明るさを取り戻す。すり、と頬を摺り寄せられて、ほっこりと胸の奥が温かくなった。


 「二人とも、髪伸びてきたね。今度のお休みにでも切る?」

 「んーん、まだ平気。ママとルルちゃんのお休みの方が大事だよ」


 無理はダメなんだよ、と頷き合うカイルとライラに、無理はしていないと言うけれども信じてはもらえない。視界の端に、これは仕方がないと納得顔で頷くアーサーがいた。


 「アーサーの裏切り者ぉ」

 「酷い言い草だな。ルルは二人に反論できるのか」

 「…………」


 苦し紛れの沈黙に、アーサーはやはりと一人頷いた。

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