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試作品

 子供たちの反応はどうだろうかと目を向けると、三人の口の周りに食べかすが付いていることに気がついた。子供の口には大きかったようだ。

 拭おうと手を伸ばすと、恥ずかしそうに口元を手で隠されてしまう。

 それに残念と肩を竦め、気を取り直して感想を聞くと、やはり第一に指摘されたのは大きいということだった。


 「お得感があるのはいいけど、今みたいに口の端に着いちゃうのは気になるわ」


 ルルの言葉に双子が頷く。


 「形、いつもの丸い形くらいがいいと思う。大きいと、一個食べられないかも」


 それは、食が細めのライラならではの指摘だった。そこから、それならとカイルも自分の意見を口にし、それを受けてまたルルやライラも思いついたことを口にする。三人寄れば文殊の知恵、とはよく言ったもので、他者の意見にも耳を傾けているからこそ連鎖して展開されていくアイディアの数々に、瑞希は内心舌を巻きながらしっかりメモに書き付けた。

 そして、一頻り意見を出し終えた三人は、たくさん話したと満足げにアイスティーで喉を潤している。

 聡い子たちだとは知っていたが、ここまでくると大人顔負けだ。そう思うのは親故の贔屓目ではないだろう。

 メモが一段落つき、強張った掌を揉み解しながらアーサーを横目に見遣る。彼もまた、子供たちの発想の豊かさに目を丸くし、喜ばしげに口元を和らげていた。


 「たくさんありがとう。じゃあ、次の試作品も持ってくるね」


 そう言って立ち上がった瑞希に、また何か作るのかと思ったのも束の間のこと。彼女は数分と待たせずにリビングに戻ってきた。

 今度持ってきたのはチップスのようなものだ。塩と思しき白い粉がチップス全体をコーティングしている。

 これでは塩分を取りすぎてしまうのでは、と訝りながら一枚を取ってみると、ふわりとスパイシーな香りが鼻腔を擽った。


 「生姜?」

 「正解、よくわかったね。生姜糖っていうの」


 ふぅん、と手に取った生姜糖をまじまじ見つめていたカイルが、それをぱくりと口に入れる。それから数度口を動かして、驚いたように口を押えた。


 「ん、甘……っ辛い!?」


 カイルは慌てて水を煽った。そのあまりの必死さに、ルルとライラが警戒するように生姜糖を凝視する。

 瑞希は困ったように苦笑いして、子供たちの前から生姜糖の皿を引き下げた。カイルでも駄目なら、より甘い物を好む二人にはさらに辛く感じるだろう。

 ぷはっ、とようやくコップから口を離したカイルの口に、生姜糖の副産物を入れてやる。すると、ぎゅっと皺を寄せていた眉間がゆっくりと柔らかさを取り戻した。


 「やっぱり大人向けみたいね。ごめんね、カイル」

 「……んーん、こっちは美味しいから、いいよ」


 カイルは満更でもない様子で口の中の物を転がした。からころ、と軽い音がしている。

 ルルとライラにも、と一つずつ渡したそれは、琥珀色をした小さな玉だった。

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