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教えてくれる?

 さて、夕飯の席で早速豊穣祭の話を振ってみると、どうやらアーサーも双子も行くのが当然という認識だったらしく、行かない選択肢があったのかと却って驚かれる結果になった。

 五穀豊穣を祈願するというだけあってどこの領、どこの集落でも行われるというこの祭事は三人も参加経験があるらしく、話題は自然と豊穣祭が主となる。

 豊穣祭では大人にはアルコール類も振舞われるらしく、今年の出来はどうかとアーサーがゆるりと目を細めて思いを馳せていた。

 楽しみだと態度でも言葉でも表す家族たちに、瑞希もルルも驚き、しかしそれ以上に好奇心が刺激された。


 「ルルは参加したことある?」

 「ううん。行ったことはあるけど、見てるだけだから」


 妖精は人間の目には映らない。見えない存在が飲食しては怖がらせてしまうからという彼女たちの配慮はとても優しく、けれど寂しかった。

 不用意なことを聞いてしまったと申し訳なさそうな顔をした瑞希に、ルルは「でも、」と殊更に明るい声で言葉を繋げた。


 「今度はアタシも食べれるから、すっごく楽しみよ!」


 うふふ、と今にも歌い出しそうな上機嫌でルルが笑う。どんな料理があるのかしら、とはしゃいだ声に、楽しみねと瑞希も優しく微笑んだ。

 それから、ふと気がついたようにカイルとライラに目を向ける。


 「豊穣祭って、どんなものなの?」


 尋ねてみれば、二人はくりくりした目を丸くして瑞希を見た。きょとんとそっくりの顔をする双子に「教えてくれる?」と柔らかな声でお願いすれば、二人は頰を上気させて何度も繰り返し頷いた。

 子供のうちは、どうしても知らないことの方が多く、教わるばかりになりがちだ。だからこそ教えるということは滅多にない機会で、二人は我先にと口を開いた。

 豊穣祭は、ミサが行われるというだけあって宗教的な側面もあるらしい。教会に集まって恵みに感謝の祈りを捧げ、綺麗な音色の楽器に合わせて歌を歌う。

 どんな歌かと聞けば、双子は子供らしい高い声で軽やかに口遊んだ。歌詞は古めかしい言い回しだが、数度聞けば耳に馴染みそうな簡素な曲調だ。


 「意外と短いのね」

 「子供でも歌えるようにと簡略化されているんだ」


 アーサーの付け足しに、ルルはなるほどと頷いた。

 そして、歌が終わった後に料理が運ばれてくる。


 「日によって違うのよね? どんな物をお祈りするの?」

 「えっとね、麦と、(きび)と、(あわ)!」

 「お豆もあるんだよ! あとね、それから……それから……?」


 あれ、何だっけ?

 麦から始まって指折り数え始めた二人だが、小指がなかなか折ることができない。名前を忘れてしまったようだ。

 困った、と勢いをなくしてしまったカイルとライラに、アーサーが仕方がないと淡く苦笑した。


 「米、だ」

 「そう、それっ!」


 お米っ! とすっきりした様子で繰り返したカイルとライラ。

 一方で、瑞希は思いもよらない名詞を聞いてどきりとした。


 「お米って……水田で育てる? こっちにもお米ってあったの?」

 「あるにはあるぞ。この国では主流ではないから作っても個人で楽しむ程度だが、イリスティアでは主食だ」


 またも登場したイリスティアとの文化交流に瑞希は驚かされたが、陸続きでいろんな国と隣接しているためか、他にも他国の文化や風習が流入しているらしい。

 その中で特に国交が多いのがイリスティアのようだ。商売上手な国のためか、彼の国の影響を受けている国は多く、海を越えた別大陸の国とも貿易しているらしい。

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