質問と関係
「ねえアーサー。貴方、ここにいていいの?」
真っ直ぐな目で投げられた直球の問いかけに、アーサーは回答に窮した。
ぴきりと音を立てて硬直した彼に、左右から懐いていたカイルとライラは不思議そうに首を傾げて父を見上げる。
ふすふすと鼻を鳴らすモチだけがいつも通りだ。
アーサーは、今自分がひどく嫌な汗をかいていることを自覚していた。ルルに悪気はないと頭では理解しているが、何というか、とにかく心臓に悪い。
ばくばくと忙しなく脈打ち出した自分の心臓を気にかけながら、アーサーはなんとか声を絞り出した。
「質問の……意図が、わからないのだが」
「? 別に難しいことは聞いてないでしょう。ミズキとディックを二人っきりにしておいていいのか、って聞いてるのよ」
察しが悪いわねぇ、とぷりぷり頬を膨らませるルルに、アーサーはこの上ない安堵を覚える。額に滲んだ汗を力任せに拭い、その動作の流れでキッチンの方へと顔を向ける。
角度のせいか二人の姿は見えなかったが、食欲をそそる匂いがふんわりとそれぞれの鼻腔を擽った。ますます空腹を煽られたような気がして、アーサーの手が自然と胃のあたりを緩く撫でた。
「二人とも料理達者だ、心配する必要はないだろう」
あっけらかんと言い放つアーサーに、ルルはそうじゃないでしょう! と叫びたい気持ちを、弟妹の前だからと愛と気力と根性で押さえつけた。
何もわかっていない鈍感義父を一瞥して、吐きかけた溜息を無理やり飲み込む。
二人っきり、とまで言ったのにどうして料理の腕の話になるのか、ルルにはさっぱり理解できない。理解しようとも思えなかった。
「…………なら、質問を変えるわ。貴方とミズキの関係って、何?」
「家族だろう」
即答だった。それ以外に何がある? と質問に質問で返されて、ルルは自分で聞いておきながら質問したことを後悔した。
利発だけど幼い弟妹は言葉をそのまま素直に受け止めて、「家族だよねー」とにこにこ可愛らしく笑っている。
自分一人が変に気を回してやきもきしているのかと思うと貧乏くじを引いているような気さえしてきて、ルルは溜息と共にそれ以上の追求を断念した。
「ルル姉?」
大きな目で心配そうに自分を見てくるカイルに、なんでもないと首を振る。
「さっさと気づかないと、手遅れになっても知らないんだからねっ」
いーっ! と八重歯まで剥き出しにしたルルは、そのまま溺愛する弟妹の間にひゅっとその身を投げ入れた。全身で飛び込まれた双子は驚いた声を上げたものの、嬉しそうに顔を綻ばせている。
「自覚がないわけではないんだがな……」
微苦笑で独り言ちたアーサーの呟きは、子供たちの笑い声の中に溶けて消えた。




