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特別功労賞

 「……は? ……え? 特別功労賞?」


 何のことだかさっぱりわからない瑞希とルルがおろおろと戸惑う。

 しかし周囲で聞き耳を立てていた者たちは暫しの無言ののち、盛大な歓声を響かせた。その中にはディックも混じっていたらしく、背後に庇っていた双子を両腕に抱きしめて溢れんばかりの笑みを浮かべていた。どうやら双子も瑞希たちと同じ理解できてはいない様子だったが、周囲に感化されてか微かな笑みを浮かべてディックを抱きしめ返している。

 抱き合って喜びを表現する彼らに、当事者であるはずの瑞希たちは置いてきぼりを食らったような心境になっていた。

 呆然とする瑞希たちに、ベンジャミンがにこやかな表情で説明する。


 「特別功労賞というのは、各領地で大きく貢献した個人や団体に与えられる栄誉ある賞です。今回は先ほど申し上げた通り、貴女が世に送り出したスポーツドリンクが人々の健康維持に大きく貢献した、ということで行賞が決まりました。よって、貴女には賞状と飾り盾、報奨金が与えられます」


 改めて聞いてみても、やはり瑞希には実感が湧かない。ルルはどうだろうかと目を向けてみるが、彼女も理解しているとは言い難い様子だった。

 とりあえず、また拘束されるわけではないらしいとだけ認識したところで、アーサーがカウンターから出てきて瑞希たちの許へやってきた。彼は珍しくも満面の笑みを浮かべていて、興奮冷めやらぬ勢いまま、力強く瑞希を抱きしめる。

 勢い余って肩から転げ落ちたルルを寸手のところで受け止めた瑞希は、困惑顔でアーサーを見上げた。


 「アーサー、これってどういうことなの?」

 「ミズキの努力が認められたということだ。凄いことだぞ!」


 さすがミズキだ! という飾らないアーサーの称賛に、瑞希はぱちくりと目を瞬かせながらもそうなのかと曖昧に理解する。すると、よくわかっていないのに現金だと思うが少しずつ嬉しさが込み上げてきた。


 (そっか、みんなの役に立てたんだ……)


 よかった、と困惑ばかりだった瑞希の表情がゆるゆると綻ぶ。それはルルも同じようで、彼女は「やったじゃない!」と喜んで瑞希に飛びついた。

 遠慮なく抱いてくるアーサーとルルの温もりに挟まれながら瑞希はしばらく嬉しさを噛み締めていたが、しかしふとベンジャミンの言葉に引っ掛かりを覚えて顔を上げた。


 「…………あら? でも、待って、おかしいわ。ベンジャミンさん、さっき、私に(・・)特別功労賞が贈られる、と仰いませんでしたか?」

 「ええ、そう申しましたね」

 「でも、この特別功労賞というのは、個人だけじゃなく団体にも送られるものなんですよね?」

 「はい、その通りです」

 「そして、私が受賞?」

 「はい。正確には薬屋 《フェアリー・ファーマシー》が、ですが」


 一つずつ順を追って確認していく瑞希に、ベンジャミンは笑顔を保ったまま頷いて答える。

 瑞希はまた困惑を顔に浮かべた。

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