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ルル=イーラ

 あれ、おかしいな。さっきの光で頭やられちゃったの?  それともまだ目がおかしいのかしら?


 ごしごしと服の袖で強く目を擦って、もう一度石を見る。何度見直しても妖精は変わらずそこにいた。しかもちょっと怯えている。


「ひっ……! な、なによ! なんであんたアタシが見えるのっ?」

「しゃ、喋った……?」


 勝気な目で睨むように見上げる妖精。瑞希はへなへなと体の力が抜けてその場に座り込んだ。

 嘘だ。そんな、あり得ない。ぶつぶつと繰り返す瑞希に何かを感じたらしい妖精はヒラヒラと薄い(はね)で瑞希の元まで飛び、どうしたのとその小さな手のひらを伸ばした。頭を撫でるように動かされる小さな手が瑞希の栗色の髪を揺らす。


「あんた、ここらじゃ見ない顔ね。しかもアタシが見えるなんて、どうして?」

「そんなの私が知りたいわよ……。部屋に居たはずなのに、気がついたらここに居たんだもの。あなたのことにしたって、私はレーカンなんてもの、これっぽっちもないはずなのに……」


 そうだ、三十年間の人生の中で、こんな非現実的な体験は一度としてしたことがない。だというのに一体なんなのだ、この状況は。この存在は。

 もうわけわかんない。吐きだした瑞希の声は震えていた。

 そんな瑞希を不憫(ふびん)に思ってか、よしよしと小さな手が慰めるように撫でる。

 ありがとう、と手の先で撫で返したら、その妖精はくすぐったそうにクスクスと笑った。


「アタシはね、ルルっていうの。ルル=イーラ。あんたの名前は?」

「私は秋山瑞希。瑞希が名前よ」

「ふぅん、変わってるのね。ねぇミズキ、あんた行くところ無いんでしょ?  じゃあ、アタシたちのところに来ない?」

「ルルたちのところ?」


 きょとんとして繰り返す瑞希に、そうよとルルは陽気に笑った。


「だって、アタシたちが見える人間なんて聞いたことないもの。それに、なんだかこことは違う匂いがするわ。アタシたちのところに住まわせてあげるから、ミズキはアタシたちに人間のことを教えてよ」

「違う匂い?  ……よくわかんないけど、私を助けてくれるの?」

「まっ、そういうことになるわね!」


 えっへんと腰に手を当てて胸を張るルルに、瑞希はそっかと小さく笑った。


「じゃあルル、私をあなたたちのところに連れてってくれる?」

「もっちろん!」


 元気な声で応えたルルはまた(はね)を動かして空を飛んだ。

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