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2018年歳末に寄せて3

 それからも、五人は精力的に掃除に取り組んだ。自室が終わればアーサーはリビングの掃除を開始し、子供たちはモチを連れて薬草畑へ。そして外から聞こえてくるきゃあきゃあと高い子供特有の声をBGMに、瑞希もキッチンを掃除した。

 キッチンが終われば、瑞希は今度は地下の風呂場に行く。子供たちの笑い声が聞こえなくなるのは少し残念だったが、それなら早く終わらせてしまえばいいことだと後ろ髪を引かれる思いで地下への階段を下りた。

 温泉は一度湯の流れを止めてデッキブラシで(ぬめ)りをしっかり落とし、洗い流してから湯を流し入れる。水量は決して多くはないが、一、二時間もすればまたたっぷりと溜まっていることだろう。その間に床の部分もデッキブラシでこすり上げて、桶やバスチェアも洗い上げる。

 そしてピカピカに磨き上げた空間を改めて見直した瑞希が満足げに頷いたところで、不意に背後の扉が開いた。

 振り返れば、ひょこっとライラとカイルが顔を覗かせていた。カイルの髪には畜舎のものだろう干し草が付いていて、とってやればカイルは恥ずかしそうに頰を掻いた。


 「ママ、お風呂のお掃除終わった?」

 「ええ。どうかしたの?」

 「あのね、ライラたちも終わったから」

 「父さんが、母さんがまだだったら手伝ってきて、って」


 代わる代わる答える双子になるほどと納得して、その優しさを有り難く頂く。ありがとう、と感謝の気持ちを伝えると、二人は「手伝ってないよ」と困ったような、けれど嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

 三人で上へと戻る道すがら、瑞希は二人に聞いてみる。


 「畜舎の掃除はどうだった?」


 投げかけた質問は漠然としたもの。けれど二人は思い思いに畜舎でのことを教えてくれる。


 「ん〜……広いから大変だったけど、みんなでやったからちゃんと綺麗にできたよ」

 「ヤギがね、ブラッシングの時よりも気持ちよさそうにしてた」

 「いつもよりたくさん鳴いてたよね」

 「そういえば、父さん、馬連れてく時、なんか変じゃなかった?」

 「うん。なんか……困ってた?」

 「うん、困ってた。でも笑ってた」


 なんでだろうね? と双子が首を傾げたところで階段を登り終わる。リビングにはちょうど話題に上がっていたアーサーがいた。膝にモチを乗せて、その上に座るルルと何やら話している。アーサーは思いの外妖精への興味が強いから、きっとまたその話だろう。実際少し近づいてみると集落についての話が耳に届いた。


 「二人とも、お疲れ様」

 「あ、ミズキ。ミズキもお疲れ様ー」


 声をかけると、ルルはあっさりと話を切り上げてミズキの許へと飛んでくる。それを苦笑しつつ受け止めてアーサーを見遣れば、彼は仕方ないとばかりに肩を竦めた。


 「あとは停留所の近くだけよ。すぐにやっちゃう?」

 「うーん、それもいいけど。でもその前にちょっと、ね」


 ふふふ、と悪戯っぽく笑う瑞希に、楽しそうな気配を感じ取ったルルが興味津々になる。それを「終わってからのお楽しみ」と流して、外に出るようにと促した。

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