2018年歳末に寄せて2
話し合いの結果、それぞれの自室は各自で行うとして、その他のキッチンと風呂場は瑞希、リビングはアーサー、薬草畑は子供たちが担当することに決まった。畜舎はアーサーとカイルとライラの三人で行い、仕事場でもある調剤室は貴重な薬材や怪我の原因になりかねない器具もあるため瑞希とルルで行う。その他は全員で手分けして行うことになった。
ちなみに、モチは薬草畑の摘みがら処理担当であるため、出番が来るまではリビングでのんびり日向ぼっこしながら待機である。
これはカイルがほとんど冗談で言い出したことだったのだが、モチ自身はまるで言葉を理解しているかのようにぴょんぴょんと跳ねて強くやる気を主張してくるものだから、そのまま決定となった。「食い意地張ってるわねぇ」とは言うまでもなくルルの言である。その後ライラが真面目な顔で「食べたら運動しなきゃだよ」と言い聞かせていた姿にはほっこりしたが。
そんなこんなで割り振りが決まったところで、五人は善は急げとそれぞれの担当場所に移動していった。上から下へという掃除の基本に則って、アーサーと双子はあまり使うことのない自室へ、瑞希はルルと調剤室へ、である。
調剤室は二階の一番奥にある。それぞれの自室も同じく二階にあるため、壁越しに家族たちの奮闘する音が聞こえてきて、瑞希とルルはついつい苦笑いを零した。
「この家も賑やかになったわねえ」
「本当に」
ルルに相槌を打ちながら、瑞希は幸せそうにはにかんだ。
健康であること。楽しく仕事をしていること。家族と笑い合えること。
それは瑞希がまだ学生だった頃、何かの授業の中で「幸せ」というものを考えた時に瑞希が出した条件だ。当時は「そんなあたり前のことだけでいいのか」と周りから言われたことを今でもよく覚えている。
けれど思わぬ形でこちらの世界に来てから、瑞稀はより強くそれこそが自分の幸せの条件であると思うようになった。
何も、当たり前のことなんてないのだ。人生、何が起こるかわからないのだから。
「ねぇルル、今年も幸せな一年だったわ」
「? なぁに、ミズキったら。まだ今年は終わってないわよ、せっかちねぇ」
「わかってるわよ。でも、言いたくなったの」
少し恥ずかしそうにしながらもまた幸せだと繰り返した瑞希に、「よかったじゃない」とルルがころころ笑う。ルルにとっての今年はどうなのかと聞いてみれば、ルルは勝気な笑みを浮かべて胸を反らした。
「まあ、私にとっても今年は良い年だったわよ。でも、来年はもっと良い年にしてみせるわ!」
まだまだ先は長いんだから!
意気揚々と宣言する小さな妖精に、瑞希は流石ルルと笑みを零した。初めて会った時から今まで、彼女の前向きの姿勢は少しも変わっていない。
「ほら、そのためにも早く大掃除、済ませちゃいましょ!」
言い出したのはミズキなんだからね。ぷっくり頰を膨らませるルルに頷いて応えた。
壁の向こうからは、今もなお家族たちの掃除の音が元気いっぱいに響いていた。




