幸せランチタイム
テーブルに並べられた自分たちの好物に、当然子供たちは大歓喜した。モチにも、寂しい思いをさせてしまったからとお詫びの気持ちも込めてフルーツたっぷりのサラダボウルを出すと、普段は大人しいくせに思わず目を疑ってしまうほど俊敏な動きで飛びついたので、ルルが呆れた顔をしていた。
そして始まったのは、子供たちによる冒険譚だ。街で見聞きしたことを身振り手振りも合わせて話す双子と、それをフォローするようにルルが言葉少なに説明を付け足す。
アーサーと瑞希はそのどれもに丁寧に相槌を打ち、時折話を掘り下げてみたりもして、気がつくとテーブルにあった料理は全て平らげてしまっていた。
一度我に返ってしまうと、パンパンに膨らんだ腹が少し苦しい。
「お腹いっぱぁい……」
「もう食べられない……」
ううん、と苦しげな声を上げながらも実に幸せそうな子供たちに、ふふふ、と瑞希は柔らかく笑った。
「あらぁ。じゃあ、今日のデザートはやめておく?」
ちょっぴり意地悪な問いかけに、「食べる!」と三人は食いついた。
一人早く食後のコーヒータイムに入っていたアーサーが苦笑を零す。
「アーサーはどうする?」
「あー……少し後で頂こう」
見かけによらず甘いものを好むアーサーでも、さすがに今はデザートは入らないらしい。困ったような微笑を浮かべていた。
今日のデザートはパンナコッタだ。つるりとした白い生地の上に冷凍保存しておいたベリーを飾り、フルーツソースもとろりとかける。
コントラストの美しいそれに、子供たちから感嘆の声が上がった。
待ちきれないとスプーンを構えていた三人が、いざパンナコッタを前にするとごくりと喉を鳴らす。
スプーンで掬えばぷるぷる震え、口に含むと一瞬のうちに蕩けて濃厚な生クリームの風味と爽やかなフルーツの甘酸っぱさがいっぱいに広がった。
恍惚として頰に手を添えた子供たちに、えへんと瑞稀が自慢げに胸を張る。その内心では、大急ぎで混ぜて冷やしただけのお手軽スイーツだとは、誰も気づいていないようだと安堵していた。
「幸せの味がする……毎日でも食べたい……」
口内のパンナコッタのように蕩けた表情で言うルルに、本気ではないだろうと理解しながらも「それはダメ」と瑞希はあっさり切り捨てる。
なにせパンナコッタは作るのは簡単だが、生クリームをふんだんに使っているため、意外とカロリーが高いのだ。ベリーでの飾りつけは見た目のためだけでなく、少量でも満足感を損なわないようにするためでもあった。
けれど美味しいものにはやはり敵わず、あれほど満腹と言っていたのに子供たちはぺろりと器を空にして、むしろ物足りなさそうにさえしていた。
こんな小さな体のどこにそれだけ入るのか、とアーサーが呆れ半分興味半分で子供たちを見ている。口に出さなかったのは、きっと昨日ルルに唐変木と非難されたばかりだからだろう。その予想を裏付けるように何事か言いたげに口をもごつかせているアーサーに、男親も大変だと瑞希はこっそり笑った。




