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アーサーの勘

「ミズキはもしかして、俺には見えない何かが見えているのか?」

「えっ?」


 唐突に切り出された鋭い指摘に瑞希は息を飲んだ。ルルも驚いて、まさか自分が見えるのかと落ち着かないでいる。アーサーにそんなルルの様子は見えていないようで、ただじっと目を逸らさないで瑞希の答えを待っていた。

 瑞希はアーサーも見えるのかと期待しただけに残念に思ったが、それもそうかとすぐに自分に言い聞かせた。

 

 妖精が見えるということは言わなければならないことだと瑞希も理解していた。

 一緒に暮らすことになったからには、いつまでもルルのことを隠し通すなど無理なことだ。瑞希自身もそんなことをするつもりは毛頭ない。しかし所構わず話せる内容でもないため、瑞希は人目を(はばか)って頷きだけでアーサーに答えた。


「ここじゃなんだから……家でもいい?」


 声を潜めて伺う瑞希に、今度はアーサーが頷く番だった。


「ミズキ、いいの? 黙ってても大丈夫なのよ?」

「いいんだよ。ルルだって大事な家族なんだから」


 ね? と優しく笑いかける瑞希に、ルルはまだ何か言いたそうにしていたけれど嬉しいとはにかんでそれ以上は言わなかった。

 見えないながらも瑞希を見ていたアーサーは、ほうと知らず感嘆の息を漏らした。何の根拠もない発言だったのだが、どうやら自分の勘は外れていなかったらしい。


「本当に見えるんだな…」


 ぽつりと呟いたアーサーを肯定して、瑞希はぎこちなく笑った。

 信じてもらえるといいな。緊張して顔を強張らせる瑞希の頭をアーサーは励ますように撫でた。突然のことに驚いて、瑞希は自分よりも幾分高い位置にあるアーサーの顔を見上げた。アーサーは仏頂面を柔らかく崩して微笑んでいた。


「大丈夫だ。疑ったりはしない」

「……うん。ありがとう」


 ぽすぽすと動かされる手に、子供じゃないのにと恥ずかしくなって少し俯く。家までの道が何時もよりも長く感じた。

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