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それから

 そうと決まってからは早かった。アーサーは本当に荷物を纏めてあったようで、世話になったと大家に頭を下げてから十分もしないうちに大きなトランクを両腕に下げて出てきた。それを馬に背負わせて、ついでに子供達の物も買っていこうと二人並んで街を巡った。


 アーサーが頻繁(ひんぱん)に旅へ出ているのは商団の護衛か、お尋ね者を捕まえて荒稼ぎをしているからのようだ。あれもこれもと買い漁るアーサーに驚いた瑞希に金ならあると金貨がぎっしり詰まった袋を目の前にぶら下げて、瑞希は驚き過ぎてもう何も言えなくなってしまった。


「人は見た目に拠らないって、こういう事を言うのね」


 呆れたルルの声に瑞希は無言で頷いた。




 子供部屋に当てることにしたのは瑞希の隣の部屋と、その向かいの部屋だ。アーサーには瑞希の向かいの部屋を用意した。どの部屋も客室に使えるようにベッドを備え付けてあったから、簡単な掃除をするだけですぐに使える。


 アーサーは子供たちにと本を多く見て回った。童話だけでなく大人が読むような政治だとかの難しい本まで選び出して、そんなのまだ読める歳頃じゃないと慌てて袖を引っ張って止めた。

 アーサーはずいぶんな読書家らしい。瑞希が止めるのを不満そうにしていたが、何事にも段階があると説けば納得して仕方ないと諦めた。

 アーサーには子煩悩の素質があったらしい。長くは一緒にいられなくても精一杯のことをしようとするアーサーに、あの子たちは絶対に幸せになると瑞希は確信した。


 対して、瑞希が子供たちにと選んだのはお菓子作りの本だった。もちろん子供たちにそのまま与えるわけではない。子供たちのおやつを作れるようにと買い揃えたのだ。

 瑞希も簡単な物なら作れるが、それにしてもレパートリーは少ない。料理はさすがにできるがお菓子作りは経験自体が無いに等しい。子供たちが菓子を食べられるようになるまでの間に練習しようと決めて、アタシも食べたい! と言うルルにもちゃんと用意するよと約束した。


 ルルはぬいぐるみをと瑞希に勧めた。勉強も食事も確かに大切だけれど、遊べる物も必要だと主張した。ルルはすっかり二人のお姉さん気分で、二人がこれを持っていたら絶対可愛いとハートを飛ばす勢いではしゃいでいた。それには瑞希も大いに同意したが、瑞希にしか見えていないとはいえルルのはしゃぎ様は凄まじかった。

 ぎゅうっと自分より何倍も大きなぬいぐるみに抱きつくルルが可愛くて、これに子供たちもプラスされるのかと考えただけでテンションが上がった。

 何もないところを見つめて身悶えする瑞希を、アーサーは不思議そうに見ていた。


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