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ライラと

 「ねえねえライラちゃん、後でモチちゃん抱っこしてもいい?」


 少し恥ずかしがるような口調で話しかけたのはアンネだ。ライラやカイルとはまた違う金の髪と濃い緑の猫目をした彼女は、先ほど撫でたふわふわの毛並みが忘れられないと言わんばかりに白い頬を上気させている。

 自分たちよりちょっとだけお姉さんであるはずの彼女に「お願い」と言われて、ライラはほにゃりと相好を崩した。


 「モチがイヤってしなかったらいいよ」

 「やったぁ! 抱っこ、させてくれるといいなぁ」


 嬉しそうにほわほわとした笑みを浮かべるアンネに、ライラもそうだねとはにかむ。ライラには、アンネの心配が杞憂に終わることがわかっていた。

 アンネの関心を引いてやまないモチは、もう水遊びに飽きたのか近くの草むらでもひもひと草を食んでいる。その背にはルルが寝そべって、「あっちの草も美味しいわよ」なんて教えていた。

 そこからさらに視線を動かすと、片割れのカイルが沈まない浮きを見つめながら拗ねたように口先を尖らせている。

 カイルの方では、周りの友人たちが少しずつ小魚を釣りだしたから、そのせいもあるのだろう。

 そんなことを思っていると、隣で「あっ」と小さな声が上がった。見れば、アンネの針に魚が掛かったらしい。けれど彼女の奮闘も虚しく、餌だけを取られて魚は逃げてしまった。


 「結構大きそうだったのになぁ」

 「お魚掛かっただけでもすごいよ。ライラは全然だもん」


 しゅんとするライラに、アンネが大丈夫だよと頭を撫でる。それから、ひっそりと声を落として囁いた。


 「あそこに大きめの岩があるでしょう? あの近くを浮きが流れるようにやってみて」


 ライラは言われた通り、岩をめがけて竿を振った。…………が。


 「あれ? ちょっと遠い……」

 「待って、もう少しそのままでいて」


 浮きは岩から少し離れた所に落ちてしまった。引き戻そうとするライラをアンネが止めた。

 浮きは川の流れに従って、ゆらゆらと揺れながら岩を通り過ぎようとしている。川岸からは見えないが何かに阻まれるような動きを見せた後、それは力強く水の中に引き込まれた。


 「ひゃっ⁉︎」

 「ライラちゃん、引いて引いて!」


 びっくりして飛び跳ねたライラに、アンネがすぐさま指示を出す。

 ライラは言われた通りに釣り竿を引こうとするけれど、掛かった魚の力が強くて徐々に川の方へと動かされていく。

 アンネはすぐさま自分の竿を石で固定させて、ライラを抱き込むようにして竿の柄を握った。


 「せーので引くよ、いい?」

 「うんっ」

 「いくよ、--せーのっ‼︎」


 二人は全力で釣り竿を振り上げた。

 水色と濃緑の瞳が、勢い余って空を見上げる。視界に入らないところから、ばしゃん! と大きな水音がするのを聞いた。

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