合流
「カイルーっ、ライラーっ」
不意に聞き慣れた声に呼ばれて、カイルたちは三人で「あれ?」と思いながら振り返った。名前こそ呼ばれていないが、ルルも含めて呼びかけられていることは分かりきっていた。
動かした視線の先には、脳裏に思い描いていた通りの両親の姿。二人は別れた時には持っていなかった釣竿と小箱を持って、川岸から手を振っていた。
「ジャック、オレたちちょっと抜けるね。母さんたちが来てるんだ」
「お? あ、ほんとだ。わかった、行ってこいよ」
近くにいた友達に声をかけて、ばしゃばしゃと足で水を掻き分けて移動する。川岸までは大した距離はないのに、流れに足を取られるのか一歩一歩が重く、遅い。ルルはひらひらと翅を動かしながら、弟妹の速度に合わせて宙を飛んだ。
「母さんたち、どうしたの? この辺りでお魚釣るの?」
ことりと首を傾げたカイルに、まさかと瑞希がころころ笑う。
じゃあどうしてだろうとまた首を傾げると、離れた場所で釣りをするから伝えに来たのだと教えられた。人が多いところだと魚も人に慣れて、なかなか餌に食いついてくれないらしい。
「じゃあ、オレたちも一緒に行くの?」
「ううん、遊んでていいよ。離れちゃうから、危ないことはしないでねって言いに来たの」
ルルも双子もそんなことはしないとわかっているが、こうも人がごった返す中では変なことに巻き込まれないとも限らない。だから念押しにきただけだと言えば、カイルとライラはそっかと安心したような笑みを見せた。
そこに、ふと別の声が入る。
「カイルたちのお母さんたち、釣り場を探してるの?」
話しかけてきたのはジャックだった。
随分長い呼び方に笑いを誘われながら、ええと瑞希が柔らかい声で肯定する。
「じゃあさ、案内しようか? オレたちがよく行く穴場があるんだ」
「え、いいの? みんなで楽しく遊んでたんでしょう?」
「いーよ。オレたち釣りも好きだし。あ、カイルたちは釣り、嫌?」
急に話を振られて、カイルとライラは慌てて首を振った。ぶるぶると水気を払う仔犬のような二人に、「じゃあ決まりな」とジャックはにかりと笑んだ。
「おーいみんなー、釣り行こうぜー!」
ジャックが声を張り上げた。
すると今の今まで夢中で水を掛け合っていた子供たちが「行くー!」と声を揃えて叫びながらわらわらと集い来る。
人見知りしない子供たちに囲まれて、僅かに体を強張らせるアーサーとは対照的に、瑞希は楽しそうで嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「あ、釣り行くなら道具持ってこなきゃ」
「だね。じゃあすぐに取ってくるから、カイルくんたちのママたち、待っててくれる?」
「もちろん。急いでないから、みんなも急がずに安全第一でお願いね」
分かりましたか? なんて昔の癖で聞いてみれば、元気な良いお返事が返ってくる。それがまた懐かしくて笑いを零しながら、「じゃあ行ってらっしゃい」と子供たちを送り出した。




