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お昼ご飯

 スティーブンの勧めで入った食事処は、観光地に相応しい景観のいい店だった。店の奥にはカウンターがあり、壁一つ分を窓にした奥にはつい先ほどまで舟遊びを楽しんでいた川が流れ、日の光を反射している。店内は食後の飲み物を楽しむ客で席が埋まっていたが、瑞希たちと入れ替わるようにテラス席のひとつが空いた。

 店員に誘導されながら席に着き、渡されたメニューをテーブルに広げて五人で覗き込んだ。


 「本当に魚料理が多いのね」


 ルルの言う通り、ラインナップのほとんどが魚料理だった。川エビや貝を使った料理もあるが、やはり魚の方が多い。ムニエルや塩焼き、スープや酒蒸しなどバリエーションも豊かだ。

 アーサーは来たことがあるからかすんなりと注文を決めていたが、瑞希たちはしばらく四人でメニューと睨めっこしてようやく注文を決められた。

 店員は伝票にそれらを書き付けて、サービススマイルのまま厨房の方へと消えていく。


 「川魚も川エビも、食べ慣れているだろう?」

 「そりゃあ、確かによく貰うけど……家とお店とでは、なんか違うじゃない」


 上手く言えないけど、と口をもごつかせた瑞希に、アーサーはそういうものなのかと小さく首を傾げたが、深く追求してくることはなかった。

 メニューを片付けてしばらくすると、別の店員がグラスとデキャンターを持って瑞希たちの席にやってきた。人数分のグラスに、輪切りのレモンが数枚沈められた水が注がれる。グラスは温度差から一分もしないうちに汗を滲ませた。


 「カイルたちは川遊びに行くとして、私たちはどうする?」

 「買い物でもいいけど……あんまり買うのも、ちょっとねぇ」


 馬車に積み込んだ土産物を思い出して、ルルが唸る。午前だけでも結構な量を買い込んでいるのだ。あまり大通りを見て回るのも憚られる。


 「なら、川釣りでもするか? 観光客向けに釣竿を貸し出している出店があったぞ」

 「じゃあそうしましょうか。やったことないから、ちょっと楽しみ」


 釣果に恵まれるかはわからないが、釣った魚は食べてもいいし、持ち帰るなら店に持ち込んで燻製にしてもらうこともできるらしい。

 スポーツかと思ったのに食道楽だったと瑞希は愉快そうに笑った。

 しばらくして、まずはスープが運ばれてきた。ほかほかと湯気を立てるそれは見るからに熱そうだが、鼻腔を擽る美味しそうな香りには抗えない。まずは一口と啜ってみれば、程よく効いた塩味の中に川魚独特の香りがあって、すぐにもう一口と手が動いた。


 「ん〜っ、美味しい!」

 「お魚が大きく切られてるのが贅沢ねぇ」


 一口大に切られた魚肉は、咀嚼するたびにじゅわりと旨味を出して解けていく。煮込み料理の類は量をたくさん作った方が美味しいというが、スープもその例に漏れなかったようだ。元は大きい魚なのか骨に煩わされることもなく、空腹も手伝って、食事する手は止まるということを忘れたかのように動き続けた。

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