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川辺

 川に近づいていくほど、すれ違う馬車が増えていった。スティーブンが仕入れた情報通り、これから食事に向かうのだろうか。

 揺れが収まり、停車したことを確認して馬車から降りると、水面に反射した眩い光に一瞬目が眩んだ。

 思わず瞑った目を、少しずつ慣らしながら押し開く。


 「う、わぁ……!」


 眼前に広がる川に、思わず声が上がった。

 そこには、大小問わず幾つもの船が浮かんでいた。その奥の向こう岸には、芥子粒ほどの建物らしき影が見える。これは川ではなく湖ではないのかと疑ってしまうほど広大な水場だった。

 けれど、悠々と緩やかに流れる水とせせらぎの音が、それを川だと知らしめる。


 「先に船を借りてくるか」


 アーサーが指差した先では小型船の貸し出しをしている人たちがいた。目を凝らして看板を見てみると、漕ぎ手の有無や船の大きさで料金が変わるらしい。

 受付所の前にはそれなりの人数が並んでいて、時間がかかることは容易に想像がついた。

 

 「船は私たちで行ってくるから、三人は先に川で遊んでおいで」


 川岸近くの浅瀬では網を張り巡らせて、安全に水遊びできる場所が確保されている。すでに遊んでいる人をよく見れば、深くとも膝辺りまでの水位しかないようだから安心して遊ばせられるだろう。

 ルルに世話をお願いして背中を押してやれば、双子は待ちきれない様子で川に向かって駆け出した。

 かと思えば、川の一歩手前で急停止する。二人してその場にしゃがみ込んで、そろそろと水に手を伸ばした。


 「冷たい‼︎」


 叫んだのはカイルだった。続いてライラも川に手を伸ばし、同じようにはしゃいだ声を上げる。

 川に入るでもなくぱしゃぱしゃと水を跳ねさせて遊ぶ二人に、アーサーと瑞希は微笑ましいと笑い合った。


 「中に入ればいいのにね」

 「いずれは入るだろう。……ああ、ほら、早速声をかけられた」


 アーサーが言う通り、カイルとライラは近くて遊んでいた同じような年頃の子供たちに話しかけられていた。声は聞こえないが、どうやら遊びに誘われているらしい。カイルとライラは互いに頷き合って、恐る恐ると川に足をつけた。

 それからは、他の子供たちと混ざって水かけ合戦だ。きゃあきゃあと子供特有の高い笑い声が受付所にまで響いてくる。


 「やっぱり、子供が楽しそうにしてる姿っていいわね」


 瑞希は幸せそうに目を細めた。

 普段をつまらなさそうにしているわけではないが、街にはカイルたちくらいの歳の子供は多くない。それも、互いに家の手伝いなどがあって顔を会わせるようなことはほとんど無く、今日のように遊びまわる姿を見るのは初めてだった。


 「また少ししたら、今度は泊まりで別の場所に行ってみようか。俺たちにも子供たちにも良い刺激になる」

 「楽しみね。じゃあ、その時はまたたくさんお土産を買おうかな」


 冗談めかして笑う瑞希に、アーサーもおかしそうに笑った。

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