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グラリオート

 大きな川があるというだけあって、グラリオートは水産業が盛んらしい。大きな遊覧船では釣ったばかりの魚を調理して貰えるし、そうでなくとも街のどの食事処でも新鮮な川魚が食べられると聞いて、今日の昼食が決定した。

 アーサーの助言をもとに少し長めの休憩を入れてから、一行は再度馬車に乗り込んだ。揺れる場所と揺れない場所とでは、ただ座っているだけでも大分違う。それでも見慣れない風景への好奇心の方が勝って、ずっと気分が高揚したまま目的地に到着した。


 「うわぁ、すごい人……」


 街に入ると、避暑地なだけあって人の行き来がかなりあった。まだ朝と言える時間だからか、立ち並ぶ様々な露天の出店には人が列を成している。中には川遊びの後なのか、水に濡れたままの状態でいる人もいた。

 歩道と馬車道は縁石で区切られているのだが、万が一も無いようにと馬車の速度が遅くなる。


 「もし気になる店があったら言っとくれよ」


 小窓からの声に感謝を込めて返事をしながら通りを眺めていれば、自分たちの他にも同じように速度を落としている馬車が何台もいた。


 「飲食店ばっかり見てるみたいね。ちょっと遅いけど、朝ご飯かしら?」

 「かもね。みんなはお腹空いてる?」


 瑞希が問うと、四つの顔が横に振られる。ミズキたちは家で朝食を済ませていて、今は昼食にも早すぎる時間なのだ。

 それならこれからどうするかと話し合うと、先に幾つか土産物を見て回ってから川遊びに向かおうと話が纏まる。船酔いの心配もあるので、食事は後回しすることになった。

 その旨をスティーブンに伝えると、ミズキたちの馬車が広場に特設された駐車場に停められた。広場の中央には噴水があり、馬たちが水分補給できるようになっている。

 アーサーが旅行鞄を抱え、みんなで馬車を降りた。途端、街の賑わいが一際強くなったように感じる。

 鞄の中身を知らないスティーブンは預かると申し出てくれたが、声を忍ばせてモチが入っていることを伝えれば納得顔で見送られた。


 「お土産屋さん、いっぱいあるね。喫茶店とかにも、ちょっとだけど置かれてるみたい」


 アーサーと手を繋いだカイルがキョロキョロと辺りを見回す。ライラは瑞希と手を繋いでいるが、様子は片割れと同じだ。時折躓いて、一時は気を引き締めるがすぐに気を取られてしまっている。


 「大人組には地酒は外せないとして……後は何がいいかしら?」

 「干物もあるが、川魚の塩漬けは絶品だ」

 「じゃあそれも追加ね」


 テンポよく会話しながら、実際見て気を惹かれた物も手に取ってみた。川の流れで研磨された曇りガラスのアクセサリーは土産物の定番らしい。郷土菓子は試食もさせてもらえて、素朴ながらも温かみのある美味しさに幾つか購入を決める。

 それを何度も繰り返していれば、重くはなくとも紙袋が嵩張るようになってきた。


 「一度馬車に戻るか」


 困ったように苦笑するアーサーに、瑞希も空笑いしながら同意した。さすがに、最初から買い込みすぎた。

 馬車を停めた広場に戻ると、たくさんの土産物を抱えて帰ってきたミズキたちに、スティーブンが目を丸くする。


 「楽しんでいるようでなによりだ!」


 声を上げて笑われて、恥ずかしがりながらもみんなで笑った。

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