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 この国には幾つかの領がある。その領と領、あるいは他国とを繋げるための主要な道路は真っ白な石畳で舗装されており、その他の道でも白砂で整地がなされている。夜になると道が月明かりを反射して、行き交う人々の行き先を照らしてくれるのだそうだ。

 ひとたび人里を出てしまえば周りには民家も何もないのだが、道の近くには果木が多く植えられているので一日二日の野宿なら大した苦ではないのだとアーサーは語った。

 春や秋など過ごしやすい時期であれば休むことなくグラリオートまで走らせられたのだが、夏というこの時期にそれは厳しいものがある。そのため、道程の半分ほどを進んだ所で一度進路を逸れ近くにある村に立ち寄ることになった。

 小さな村ではあるが、今の時期はグラリオートを目指す旅行客が多く立ち寄るのでそれなりに活気があるらしい。

 馬車か道の端の方に止まると、双子の頭上にある小窓がノックされる。モチに鞄に戻ってもらってから窓を開ければ、御者席のスティーブンが顔を覗かせた。


 「喫茶店があったから、その前に止めたよ。オレは馬に水をやってるから、ミズキたちも一息ついておいで」


 慣れない馬車旅で疲れただろうという労りに、言われてみればそんな気がしてきて有難く甘えさせてもらうことにする。

 そうして出入り口を潜り入った喫茶店には、昼には大分早い時間帯にも関わらずちらほらと客の姿が見えた。


 「いらっしゃいませ四名様ですか?」


 人数の確認に頷くと、ウエイトレスがボックス席に案内してくれた。

 それぞれ飲みたいものを頼み、馬車にいるスティーブンにも注文を取ってくれと頼む。代金は瑞希たちが支払うと伝えれば、彼女は店の外を確認して納得したように頷いた。


 「お客さんたち、家族旅行ですか?」

 「ええ、日帰りでグラリオートに」


 髪色も顔立ちも似ていないのに躊躇い無く家族と認識してくれた彼女に、肯定しながら瑞希が顔を綻ばせる。

 それをどう受け取ったのか、彼女は「楽しんできてくださいね」と微笑ましげに言い置いて、スティーブンの方へ注文を聞きに向かった。


 「座席が柔らかくても、ずっと座り続けるっていうのは結構疲れるわね」


 揺れていない筈なのに揺れているような感覚がして、なんだか落ち着かない。それはアーサーや双子も同じようだ。


 「今回は楽な方だ。普通はもっと揺れるから、酷い時は痣ができる」

 「えぇっ、そんなに?」


 座ってるだけなのに、と驚いた声が上がるが、アーサーはいたって真面目に頷いた。冗談を言っている風には到底思えず、瑞希と子供たちはぽかんと口を開けたまま顔を見合わせる。


 「馬車組合の皆さんにも、何かお土産を買って行こうか」


 もともと集落の妖精たち用にいろいろと買い込む予定だったのだ。多少増えた所で困ることはない。菓子折りや特産物ならお礼にもちょうどいいだろう。

 瑞希の提案に、こっくりと頷く顔が四つ。

 楽しいはずの旅行で真面目な顔をして頷きあう瑞希たちに、ドリンクを持ってきたウエイトレスは不思議そうに首を傾げた。

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