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好奇心

 色鮮やかな冷製パスタに、子供たちはキラキラと目を輝かせた。モチの食事はフルーツ多めの盛り合わせだ。

 たくさん働いて、たくさん食べて、しっかり休む。当たり前のようでなかなか実現できないサイクルだが、回していけば不思議と夏バテとは疎遠になった。

 食事を済ませてからは、薬草畑の世話はアーサーと双子に任せて、ミズキはルルと消費の激しかったスポーツドリンクの追加に取り掛かることにした。

 柑橘類を絞っては、調味料を加えて水を足す。作業自体は簡単だが、量を作るとなるとなかなか骨が折れるのだ。


 「ルルから見ても、やっぱり今日は暑い?」

 「そりゃあね。でも、これからもっと暑くなるんじゃないかしら」


 ルルの推測に、なるほどと一人頷く。窓から見える空には雲ひとつなく、陽射しが和らぐような気配もない。天気が良すぎるのも考えもののようだ。

 そうなると、昼一番は少なめで夕方頃から増えるだろうか。

 おおよその見通しを立てながらも、作る手は止まらない。


 「雨でも降ったら少しはマシなのにねぇ」

 「ほんとに。ああ、でもやっぱりもうしばらくは晴れの方が良いわ。せっかくの旅行が雨だと船に乗れなくなりそう」


 まるで遠足前の子供のようなことを言うルルに、「そうだねぇ」と応じつつ瑞希は肩を震わせた。


 「ねぇ、ミズキは旅行って行ったことあるの?」

 「あるよ。船も乗ったけど、飛行機にも乗ったかな」

 「ヒコーキ? なぁに、それ?」

 「人間が空を飛んで何処かに行く時の乗り物よ。船よりも早く移動できるし、揺れも少ないの」

 「へえー!」


 面白そう! と目を輝かせて話を強請るルルに、瑞希は微笑ましく思いながらも昔の記憶を手繰り寄せる。瑞希にとっては他愛ないようなことでも、ルルは楽しそうに話を聞いていた。双子の手前は姉らしく振舞っていても、やはりまだまだ子供なのだ。自分の知らない物事への好奇心は弱まることを知らない。


 「ミズキの世界には、不思議なものがいっぱいあるのねぇ」

 「こっちの世界にも、きっといろんな物があるわよ。世界は広いもの」


 のんびりと微笑む瑞希に、そっかとルルが屈託のない笑みを浮かべる。


 「船の他に、どんなものがあるのかしら? 美味しいお菓子とか、可愛い物とかもあるといいなぁ……」

 「それを見て回るのも、楽しそうよね」

 「楽しみねぇ」


 旅行の日はまだ先だが、待ち時間も楽しく過ごせるなら、思いつきも悪くない。

 ころころと楽しげな笑い声をキッチンに響かせながら、二人は作業に勤しむのだっだ。

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