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売れ行き

 午前の営業最後の馬車が来て、ミズキは客の見送りがてら運転手に声をかけた。ガラス瓶の工房に追加発注の手紙を届けて貰うためだ。手紙の配達は本来運転手たちの仕事ではないのだが、定期便や商品などで世話になっているからと言って、何かと気にかけてくれるのだ。


 「工房に、ガラス瓶を追加で百五十ね。確かに預かったよ」

 「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」


 丁寧に頭を下げる瑞希に、運転手はこれくらいと闊達に笑った。

 ミントの化粧水は順調に売れていった。今日は特に涼を求める客が多かったこともあり、午前のうちに完売という好評を博したのだ。

 売り切れてからは予約の受け付けに切り替えたのだが、リストにはすでにずらりと名前が並んでいる。午後の営業でさらに増えるだろうことは想像に難くなかった。

 快く引き受けてくれた運転手とその馬車を見送って店に戻ると、片付け中の家族にお帰りと迎え入れられて瑞希はほっと糸が緩むのを感じた。特別気負いしているわけではないのだが、プライベートに戻ったようなこの瞬間に心が安らぐ。


 「ただいま、遅くなってごめんね。私は何をすればいい?」

 「後は補充だけよ。アーサーと上の方をお願い」


 ルルが魔法で浮かせたストックを、みんなで手分けして棚に並べていく。

 先にあったものは前に出し、補充分は奥へ。地球では当たり前だったこの補充の仕方が、此方では馴染みがないのだと知ったのは最近だ。生物は少ないとはいえ薬は使用期限を意識する。最初は手間だと思うこの作業は、きちんと積み重ねていけば管理もでき、廃棄も少なくなるので効率がいいのだ。

 がらんと空いてしまった化粧水の陳列スペースに予約受付中と張り紙をすれば、午前の業務は終了だ。


 「みんな、いつもお手伝いありがとう。すぐにご飯作るからね」


 ふにゃりと気の抜けた笑顔を見せれば、子供たちからは嬉しそうな微笑を返された。アーサーは変化は薄いながらも、微笑ましそうに目尻を下げている。

 五人連れ立って廊下に入り家に帰れば、留守番のモチが飛びついて出迎えてくれた。ただいまとふわふわの頭を撫でてやって、瑞希とルルはキッチンに入る。


 「今日は何作るの?」

 「かなり暑いみたいだから、夏野菜で冷製パスタかな」


 夏野菜はカリウムが豊富で体を冷やしてくれるので、暑気払いにはぴったりだろう。

 いつも通り手を洗い、エプロンをかければ準備完了。

 カボチャを薄めに切って素揚げして、他の野菜は一口大に切り油で炒める。しんなりしてきたら塩胡椒やトマトソースを加えて煮込んだら火を消す。冷めるのを待つ間にパスタを湯がき、冷水でしっかり冷やして水気を切ってからソースや具材とよく絡めて、カボチャの素揚げを飾れば完成だ。


 「野菜なのに、こうしてみるとカラフルね」


 美味しそう、とルルが頬を綻ばせる。それに瑞希もはにかんで、緩くならないうちにとテーブルに運んだ。

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