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発注

 しばらく談笑しながら時間を過ごした。

依然として日は高いが、暑さはピークを過ぎたのか日陰も少しだけ大きさを増している。街道を行き交う人次第に増えてきたので、あまり長居するのも申し訳ないからと五人は店を後にすることにした。

 子供たちはしっかり瑞希とアーサーと手を繋ぐ。ルルは瑞希の肩に止まって、ひょいひょい指を振って微風を吹かせた。

 瑞希たちがまず向かうのはガラス瓶の工房だ。大通りを道形に進んだところにある。発注するだけだからとアーサーたちには休んでいてもらい、瑞希はドアベルを鳴らしながら中に入った。

 ガラスの工房らしく、棚やテーブルに並べられているのはグラスやステンドグラスのコースターだ。それらの間を過ぎてカウンターに向かうが、しかし誰かが出てくる様子はない。


 「すみませーん! 注文をお願いしたいのですがー!」


 瑞希が声を張ると、ようやく奥の方から音がした。トントンと下がってくる音は、階段を降りてくる足音だろう。


 「おお、すまんな。お待ち遠さん」


 白髪交じりの頭を掻いて現れた初老の老人に、瑞希は改めて挨拶し直した。瓶を大量購入したいと言えば、老人ははいよと一つ頷いて発注書を取り出した。

 まずは大きさと数を決める。今回はストック用も含めた百本だ。そんなに何に使うのかと驚かれたが、新商品用だと答えれば深く聞かれることもなく受け入れられた。

 納入日の話し合いで早めに欲しいとお願いすると少量ずつなら納入できると言われたので、その通りお願いした。代金は商品と引き換えなので、あとは発注者の控えを貰えば終了だ。

 出がけにも「よろしくお願いします」と会釈して、瑞希は家族のもとに戻った。

 ドアを開ければすぐに目があって、双子が馬の上から手を振ってくる。モチを構っていたらしい。椅子代わりになっている馬は大人しいが、アーサーは念のためと(くつわ)をとったまま瑞希を出迎えた。


 「おかえり」

 「ただいま。待たせちゃってごめんね」


 瑞希が詫びれば、アーサーは大して待っていないと緩く首を振った。


 「もういいのか?」

 「ええ。あとは馬車の予約に行ってから、ディックのところでいい?」


 視界の隅でライラが反応したのは、親心として見なかったことにする。アーサーには気づかれなかったようで、特に何を言うでもなく頷いた。


 「二人とも、乗ったままいくか?」

 「んーん、降りるー」


 ふるりと首を振ったライラをアーサーが抱いて地面に下ろす。カイルは少し迷ってから、自分もと降ろしてもらっていた。


 「疲れたらすぐに言うんだぞ」

 「大丈夫だよー。ね、それよりも早く行こ」


 くいくいとカイルが手を引っ張る。アーサーがはいはいと微笑を零して、行くかと馬の手綱を取った。

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