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下は温か、上はひんやり

 ディックを見送ってから、瑞希は子供たちを連れて薬草畑に来ていた。アーサーは水浴びしてもまだ汗が気になるらしく、風呂に入るからと別行動だ。

 薬草畑の一角の、もっさりと伸びた草に手を伸ばす。葉の形が違うそれは、ペパーミントとスペアミントだ。

 薬草、ハーブとは言ってももともと野草のそれらは生命力が強く、毎日刈っても一晩明けるとすぐににょきにょき背を伸ばしてしまう。ストックを多めに作ってもなお余りあったのだが、思いがけず新しい使い道を思いついた。


 「とりあえず、今伸びてるのは全部刈っちゃおう」

 「りょーかーい」


 まず採集するのはミントだ。ペパーミントとスペアミントの花壇の前で瑞希は小型の鎌、カイルとライラは園芸バサミを使って、もさもさ生えるそれらを刈り取る。それをルルが水洗いしてから鍋に詰めた。

 それを何度も繰り返していると、昼食後間もないというのにモチがふんふんと鼻をひくつかせた。


 「まったく、食いしん坊ねぇ」


 呆れたようにルルが腰に手を当てる。カイルがモチをぷらんと抱き抱えて、えっちらおっちらと家の中に運んだ。

 畑には必要分しか植えていなかったのだが、夏の日差しで繁殖力を存分に発揮したミントは大きめの籠を満杯にした。


 「結構たっぷりあるけど……ミズキ、こんなに使えるの?」

 「あればあるほど好都合なのよ」


 悪戯っぽく笑う瑞希に、子供たちは揃って顔を見合わせる。

 今度こそ薬屋で売れる新商品が作れると言っていたのだが、こんなにたくさんのミントでいったい何を作るつもりなのだろう。


 「母さん、何作るの?」

 「化粧水だよ」

 「化粧水?」

 「お風呂上がりにぺちぺちしてるでしょう、あれよ」


 双子はようやくああ! と手を打った。それから、そういえばあれは、薬屋の棚には並んでいなかった。作っているところも見たことがないそれを作ると聞いて、双子は興味津々で鍋を見つめた。

 キッチンに移動して、鍋にミントが浸るくらいの水を注ぎ、金属製のザルを被せてその上にボウルをセットする。そこに、鍋蓋をひっくり返して閉じれば準備完了。

 不思議な仕掛けを施した鍋を火にかけて、鍋の中からかたかた小さな音が聞こえてきたところで鍋蓋の上に氷を盛った。


 「母さん、これじゃ冷えちゃうんじゃない?」

 「そうよー。んー……よし、ここで問題です。お水を温めたら何になる?」

 「お湯!」


 ライラが答える。

 瑞希は正解と頭を撫でて、もう一問出題した。


 「じゃあ、お湯と一緒にゆらゆら出てるのは?」

 「湯気、だよね」

 「カイルも正解。これは下から温めて湯気を作って、上の氷で冷やして水に戻すのよ」

 「ハーブティーとは違うんだよね?」

 「ええ。ハーブティーは煮出せばいいけど、これで大切なのは蒸すこと。蒸すと湯気に植物の持つ油分が少しだけ溶け込むんだよ」


 カイルの頭も撫でて作り方を説明すると、わかっているのかいないのか、二人は「へえぇ〜」となんとも判別し難い反応を示した。

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