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計画案

 計画にあたり、瑞希がまず考えたのは水分の補給の仕方を改めることだった。温暖な気候のこの国の人々は、水分を取らなければならないということは理解していても、塩分の補給については何も知らなかった。

 しかし、汗を舐めればしょっぱいように、塩分もまた体外に排出されるのだから補給する必要がある。

 そこで、説明会までの間にロバートにも協力を仰ぐことにした。ロバートはカイルとライラのかかりつけの医者で、栄養失調から回復した後も定期検診などで度々世話になっている街医者だ。

 非営利目的で診療所を開く彼は街の住民たちの信望も厚く多忙なのだが、瑞希の計画に賛同し、二つ返事で了承してくれた。

 そうして計画の地盤を固めてから瑞希は街の薬屋たちに声をかけ、隣の街や村の薬屋には手紙を書き、馬に乗れるアーサーにそれを託した。

 思いつく限りに連絡を入れ終わった今は、返答を待ちながら説明会の準備を進めている状況だ。


 「みんな、手伝ってくれるかしら……」


 少しの不安を滲ませて瑞希が呟く。

 その不安をもっともだと思いながら、ルルは敢えて大丈夫だと強気に言い切った。


 「こんな大掛かりなこと、今を逃せばそうそう無いってみんなわかってるはずよ。それに、みんなの人の良さはミズキだって知っているでしょう?」

 「うん…………うん、そうよね」


 発案者が協力者を信じられなくては、計画の成功は成し得ない。瑞希は強く頷き、手元の紙面に目を向け直した。

 伝えるべきこと、間違えやすい注意事項、説明に伴い予想される質問とその回答。思いつく限りを書き出し、その上で説明をどう進行するかを練りに練る。

 何としても成功させたいこの計画、時間の許す限りの見直しを瑞希はしていた。

 あまりに綿密なスケジュールに、凄い気合の入れようだとアーサーとルルは舌を巻いたほどだ。


 「ここまで先読みしておいて、不安になるものか?」


 コーヒーを啜っていたアーサーが紙面を覗く。

 瑞希がまだ地球にいた頃、何度も作っては直した授業指導案。その要領で作り上げた計画案には日々書き込みが増えていく。

 それはまるで未来を予知しているようだとアーサーは不思議そうに首を傾げた。


 「これに書いてあるのは、あくまで私が想定したものなのよ。この通りに進まないことだってあるし、聞く人たちが何を思うかはその人たちにしかわからないから」


 だから毎日見直して、足りないことはないか、余分なことはないかを見直すのだと語る瑞希に、アーサーは「ほぅ……」感心とも生返事ともつかない反応を返した。

 おそらく、明日の朝からは続々と返答が雪崩れ込むだろうとアーサーは予想している。

 瑞希の立てたこの計画が、果たしてどうなるのか。


 (----考えるまでもないな)


 アーサーは手元のコーヒーを一息に飲み干した。

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