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応用

 食卓を囲んで、まずするのは報告だ。炭酸ジュースが街の特産物として売り出されることになったと告げれば、アーサーがほう、と感心するような声を漏らした。それを聞いて、良い結果になったらしいと双子もにこにこ笑顔になる。

 本来ならここで終わるはずだったのだが、新しい知識を仕入れた瑞希はやりたいことができたと話を続けた。


 「スポーツドリンクを、この街以外でも売れるようにしたいの」


 レシピを売買できる。それならスポーツドリンクも、各所にレシピを伝えて大々的に売り出せないかというのが瑞希の考えだ。


 「この街以外で、とは、国中でということか?」

 「うん。もし可能なら国外にも出したいけど、まずは国内への普及が目標かな」


 瑞希の回答に、アーサーは驚き目を瞠る。どうしてそこまで、と怪訝そうな顔をされて、瑞希は困ったような笑みを浮かべた。


 「スポーツドリンクって、一年中売れるのよ。夏はもちろん、冬なら風邪を引いた時も水分補給は必要だから」


 炭酸ジュースはダイエットにも効果的とされているが、ほとんどは嗜好品とされることが多い。しかしスポーツドリンクは味わうためというよりは、健康の為に飲まれることの方が多い物だ。


 「暑いとか風邪とかは、この国に限ったことじゃないでしょう? だから誰にでも手に入れられるようにした方がいいと思うのよ」


 特産物として売り出せば、宣伝は街がしてくれるがレシピは部外秘にされる。ひとつの街だけで生産し販売するには、この国も世界も広すぎるのだ。

 必要な時に必要な分をすぐに手に入れられるようにしたい。

 そう願う瑞希に、アーサーとルルが顔を見合わせる。どうしようかと眉を下げる二人の表情には、優しさと愛しさが滲んでいた。


 「アタシはいいと思うわ。誰かのためになることだし、もともとミズキの考えた物なんだから、ミズキのしたいようにすればいいのよ」

 「俺も賛成だ。……が、手を打つなら本格的に夏に入る前にやらないと。何か策はあるのか?」

 「えっと……近隣の街や村の薬屋さんに声をかけてみるつもり」


 体調を崩した時、ちょっとした風邪程度では医者にかかることは少ない。けれど必ず行くのが薬屋だ。なら、薬屋で販売すれば、必要な人の手に渡りやすいだろう。

 幸いこの街の薬屋とは友好的な関係を築けているから、この街で売り出すのは問題ないと瑞希は踏んでいる。そこに、近隣の薬屋にも協力をお願いすれば、少しずつでも広められるだろうというのが今のところの考えだった。


 「今のうちにしたいのは、レシピ料と契約書の作成かな」

 「忙しくなりそうだな」


 笑いを含んだ声で言ったアーサーに、瑞希も笑いを誘われながら頷いて返す。


 「カイルとライラにもお手伝いしてもらうかもしれないけど、お願いできる?」

 「うん!」


 ぴったりと双子の声が重なった。あれ? と顔を見合わせた二人に、楽しげな笑い声がリビングに響く。

 恥ずかしそうに頰を赤らめてはにかむ双子が可愛くて、ルルが突撃したのは言うまでもないことだった。

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