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噂をすれば

「相変わらず()せないわね、あの人も」

「こらルル、失礼なこと言っちゃだめでしょ」


 呆れたように言ったルルを見過ごさずに(たしな)める。ルルは本当のことなのに、とぷっくり頬を膨らませた。

 ルルはロバートを嫌っているわけではないが、あの丸いフォルムの体型を見るとどうしても意地悪を言いたくなるらしい。あんなに太ってたら体に悪いわ、と会う度に言っている。それについては瑞希としても否定できなかった。


 のんびりと話しているうちにも客はやってくる。見慣れた常連客にもそうでない客にも柔らかい笑顔で接しながら、瑞希は在庫を次々と減らしていった。

 ゼリーは今日はないの? と聞いてくる人もいたが、今日の気候では悪くなってしまうかもしれないからと説明すればすんなりと納得してもらえた。またお店に行くと言ってくれる人もいて、順調だと瑞希はふくふく笑った。


「ルル、残りはどのくらい?」

「えーと……ああ、傷薬が二つよ」


 思ったより早く減った商品に今日はゆっくり買い物できそうだ。二つくらいなら持ち帰っても大した荷物にはならないと、瑞希とルルは少しずつ片付けを始めた。


「ねぇ、そういえばアーサー、最近見ないわね」


 思い出したようにルルが言った。ルルが客を気にかけることは珍しいが、それは瑞希も気になって心配していたことだった。


 半月と言っていた期間は既に過ぎているのに、アーサーは店にはおろか、今日の露天商でも見かけることはなかった。もとより足繁く通う人ではなかったとはいえ、こうも顔を見ない日が続くと心配になる。旅に出ていると知っているからなおさらだ。


「何事も無ければいいんだけど……」

「何がだ?」


 何気なく呟いた言葉にルル以外の声がして、瑞希は飛び上がって勢い良く振り返った。あっ、とルルも驚いた声を上げた。


「アーサー!」

「ああ。久しぶりだなミズキ、元気そうで何よりだ」


 噂をすれば影。瑞希に話しかけた声の主はアーサー本人だった。

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